Contract
財産法の基礎2 第7回 売買(1)[ 瑕疵担保責任以外]・講義資料
01 売買契約は、歴史的にも理論的にも契約類型の中核を担う典型であるから、売買契約に関する民法の規定は、契約の一般法理としても妥当するものが多く、原則として、贈与契約にも適用される。[超基本]
02 将来において売買契約を締結する旨の合意が行われた場合、この合意は、売買契約そのものではないが、法的には契約の一種であり、無名契約に分類される。これに対して、将来生じる財産権の移転と代金の支払いを約する現在の合意は、売買契約そのものであり、目的とする財産権の発生により効力を生じる。
03 大学生Aは、家庭教師先の高校3年生Bに対して、Bが志望校に合格したら、有名選手のサインのあるA所有のテニスラケットを2万円で売ってあげると言い、Bは2万円なら貯めている小遣いの範囲だと思い、売って欲しいと答えた。Bが志望校に合格した後でラケットの引渡しを求めたところ、Aは惜しくなって拒絶した。この場合、BはAに2万円と引き換えにラケットの引渡しを求めることができる。[やや難]
04 民法が売買の予約として規定しているのは、一方当事者のみが売買契約を締結するか否かの選択権(=予約完結権)を有する片務予約である。これに対して、当事者双方が予約完結権を持つのは、双務予約である。
05 民法は、解約手付の推定をしているが、解約手付は、解除権を留保して契約の拘束力を緩め、契約の解消を認めて契約責任を否定するものであるから、契約の拘束力を強める機能を有する違約手付とは論理的に両立しない。したがって、1つの手付が、解約手付と違約手付の性格を兼ねることはない。[超基本]
06 法科大学院への入学を辞退すれば、授業料は支払う必要がないが、入学金は手付として没収されるので、返還を請求することはできない。[難]
07 解約手付が交付された場合において、一方の契約当事者が履行行為の一部を行ったときには、もはやいずれの当事者も、手付放棄や手付倍戻しによって契約を解除することはできない。
08 不動産の売買契約において、売主は、買主に対して、目的たる財産権の移転義務と引渡義務を負うが、特約がなければ、当然に移転登記申請に協力する義務を負うものではない。[超基本]
09 売買契約に要した費用は、特別の合意や慣習がなければ、両当事者が半分ずつ負担する。これに対して、債務の履行に要する費用は債務者の負担となるから、不動産売買契約における移転登記手続にかかる登録免許税や司法書士への報酬は、売主の負担となる。[やや難]
10 売買契約の履行の際に、売主の行為によって買主がケガをした場合には、売主は債務不履行責任を負い、不法行為責任に関する規定の適用・類推適用はない。[超基本]
11 他人が所有する物を売買する契約は、その物の所有者が売買契約締結時点で、「自分は、絶対にその物を処分しない」と公言していたときには、原始的不能の給付を目的とするから、無効である。
12 売主が他人の所有物を他人の所有物と知りつつ売却した場合は、横領に該当する犯罪行為であって民法上も公序良俗に反し無効であるから、民法561条の適用対象外である。
13 他人物の売買がされた場合において、売主が所有者から所有権を取得して買主に移転することができない場合は、売主の債務は社会通念上不能となるが、このことを理由に売主が買主に対して負担する責任は、債務不履行責任の性質を帯び、法定責任とは言えないとするのが通説である。
14 他人物売買において、売主が所有者から所有権を取得して買主に移転することができない場合、買主は、売買契約締結時に他人物売買であることを知っていたとしても、売買契約を解除することができ、この解除には、催告を要しない。売主の損害賠償責任は、無過失責任であるが、賠償範囲は履行利益に及ぶ。[やや難]
15 他人物売買において、売主が所有者から所有権を取得して買主に移転することができない場合、他人物売買であることを売買契約締結時に知っていた買主が、売主に対して損害賠償を請求できる余地はない。[難]
16 他人物売買において、売主が所有者から所有権を取得して買主に移転することができない場合、買主は、売主に対して、代金の減額を請求することもできる。
17 成人の一人息子Aが父親Bの所有する土地の登記名義をBに無断で自己名義としてXに売却した後、その履行前にBが死亡した場合、AがBを単独で相続したのであれば、AはXに対して売買契約の履行を拒絶で
1
2011/10/21
財産法の基礎2 第7回 売買(1)[ 瑕疵担保責任以外]・講義資料
きないが、Aの母親でBの妻YがAと共同相続した場合には、Yは売買契約の履行を拒絶でき、一切責任を負わない。
18 父親Xが成人の一人息子Aの所有する土地の登記名義をAに無断で自己名義としてXに売却した後、その履行前に死亡した場合、AがBを単独で相続したのであれば、AはXに対して売買契約の履行を拒絶できる。 Bに続いてAも死亡し、Aの母親でBの妻YがBとAをxx相続した場合にも、Yは売買契約の履行を拒絶できる。
19 売主から買った土地の一部が他人の所有地に属する場合において、売主が所有者からその土地の所有権を取得して買主に移転することができないときは、買主は、売買契約の対象に一部他人物が含まれていることを売買契約締結時に知っていたとしても、代金の減額は請求できる。[超基本]
20 一部他人物の売買や数量指示売買における買主の救済方法である解除権・代金減額請求権・損害賠償請求権は、いずれも1年の除斥期間に服するが、裁判上行使する必要はなく、その行使によって保全された請求権は、その保全時から一般の消滅時効期間に服する。
21 土地の売買において登記簿上の面積が契約上表示された場合に、引き渡された土地の面積が不足すれば、買主は、民法565条に規定する救済を求めることができる。
22 民法565条は、売買目的物の一部が契約締結後に滅失した場合にも適用される。[超基本]
23 土地売買契約が数量指示売買に当たる場合において、土地の面積が契約で表示されたよりも超過したとしても、売主が代金の増額を求めることは、特約がない限り、認められない。[やや難]
24 数量指示売買で数量が不足する売買目的物が引き渡された場合の売主の損害賠償責任は、判例によれば、この数量不足の担保責任の性質が法定責任であることから、信頼利益の賠償にとどまり、履行利益相当分についてまで請求できる余地はない。[やや難]
25 100グラムあたり1500円と表示された珈琲豆を500グラム買って帰って計りなおしたら、実際には450グラムしかなかった場合であっても、買主は、当然には750円の返金を売主に求めることができない。この場合は、一般の債務不履行責任の問題であって、民法565条が類推適用もされないことには異論がない。[難]
26 土地を購入したところ、その土地に、他人のための通行地役権が設定されていたことが判明した場合、売買契約時にそのことを知らなかった買主は、通行地役権が存在していてもその土地の利用計画に支障が生じないときであっても、売主に対して、代金の減額や、これに代えまたはこれに加えて、損害賠償を請求することができる。[やや難]
27 広大な1筆の土地を購入したところ、その土地の上に建物が建っていて、その建物について借地権者である建物所有者名義の登記がされており、借地権が土地の全部にわたることが判明した場合、売買契約時にそのことを知らなかった買主は、その土地の売買契約を解除することができる。[超基本]
28 抵当権が設定された土地を、被担保債権額を控除することなく代金を決めて買い受けた買主は、抵当権消滅請求を行うことができ、その手続が終わるまでは、売主からの代金請求を拒絶できる。抵当権消滅請求が不成功に終わり、抵当権が実行されて土地の所有権を失ってしまった場合、抵当権の負担を覚悟して買い受けたのであるから、買主は、その土地の売買契約を解除できるにとどまり、売主に対して損害賠償を請求することはできない。[超基本]
29 500万円の売掛代金債権を400万円で譲り受けたところ、弁済期になってこの債権の債務者が倒産し50万円程度しか回収の見込がないと判明した場合、債権譲受人は、特段の合意がなくても、譲渡人に対して、債権の名目額と実回収額との差額450万円の支払いを求めることができる。[超基本]
30 民法575条は、売買契約当事者間における果実と利息の帰属を決める規定であり、果実と利息及び管理・保管費用がほぼ対応することから、目的物引渡し前には果実の引渡しや利息等の支払いを要しないとする簡易な清算を規定する。買主は、代金支払債務を遅滞していても、目的物の引渡しを受けるまでは、利息の支払いを要しない。[やや難]
2
xx xx( xxxxxxxx@xxx.xxxxx-x.xx.xx)