適用肯定説. (1-1)直接取引と解する見解 取締役による保険金受取人変更の利益相反性を肯定する見解のうち、これを直接取引に当たるとするものがある。直接取引であるとする見 解をみると、前述の肯定事例である≪事例6≫に関連させて直接取引 であるとするものがみられる。≪事例6≫は、代表取締役が、保険金受取人を会社から妻に変更したものであるが、本決定に関して、夫婦は社会的経済的に同一の生活実態を有していることから、妻への受取人変更は、夫である取締役自身の取引すなわち直接取引と同視して、この類推適用を認めたものと理解される37)。同様の理由により、保険金受取人の変更を取締役の妻のみならず親族に変更する場合も直接取引に該当すると解するものもある38)。さらに、保険金受取人の指定変更行為を対価関係上の法律関係ととらえ、保険金請求権を会社から取締役に直接移転する行為であって直接取引にあたると解するものがある39)。