Contract
工事請負契約における設計変更ガイドライン
平成30年4月木 x x 市建 設 部
目 次
1 設計変更ガイドライン策定の背景
(1) 土木・営繕工事の特徴
(2) 適切な設計変更の必要性
(3) ガイドライン策定の目的
2 発注者・受注者の留意事項
3 設計変更が不可能なケース
4 設計変更が可能なケース
(1) 工事請負契約書(以下「契約書」という。)、京都府土木工事共通仕様書(案)(以下「共通仕様書」という。)又は公共建築工事標準仕様書(公共建築改修工事標準仕様書、建築物解体工事共通仕様書を含む。)(以下「標準仕様書等」という。)に定められている所定の手続きを経て(契約書第 18 条、共通仕様書 1-1-1-17、1-1-1
-18、標準仕様書等 1.1.8)、発注者が設計図書を訂正又は変更する必要があると認めた場合
(2) 発注者が変更の必要を認め、設計図書の変更に係る指示を行う場合(契約書第 19 条)
(3) 発注者が工事を中止させた場合(契約書第 20 条)
(4) 受注者から工期の延長の請求があり、発注者が妥当と認めた場合(契約書第 21条)
(5) 発注者から工期の短縮を請求した場合(契約書第 22 条)
(6)「設計図書の照査」の範囲をこえる作業を発注者が指示した場合
5 設計変更手続きフロー
(1)契約書第 18 条(条件変更等)関連
(2)契約書第 19 条(設計図書の変更)関連
6 設計変更に関わる資料の作成についての具体的対応方法
(1) 設計照査に必要な資料作成
(2) 設計変更に必要な資料作成
7 条件明示について
(1) 明示方法
(2) 留意事項
(3) 明示項目及び明示事項(案)
8 指定・任意の使い分け
(1) 基本事項
(2) 留意事項
(3) 発注者の指定事項以外は任意事項として受注者の裁量の範囲
(4) 指定と任意の考え方
9 工事打合簿への概算額の記載方法
(1) 発注者からの先行指示の場合
(2) 受発注者間の協議により変更する工事打合簿の場合
10 工事打合簿の記載例
(1)「指示」の記載例
(2)「協議」の記載例
(3)「承諾」の記載例
※ 参考資料
◎公共工事の品質確保の促進に関する法律抜粋(第 3 条第 10 項、第 7 条第 1 項第 5 号)
◎発注関係事務の運用に関する指針抜粋(Ⅱ-1-(2)、(4))
◎工事請負契約書抜粋(第 1 条第 3 項、第 18 条~第 24 条)
◎土木工事共通仕様書抜粋(1-1-1-3、1-1-1-16、1-1-1-17、1-1-1-18)
◎公共建築工事標準仕様書(建築工事編)抜粋(1.1.8、1.1.9、1.1.10)
1 設計変更ガイドライン策定の背景
(1) 土木・営繕工事の特徴
土木工事は、個別に設計された極めて多岐にわたる目的物を、営繕工事は、不特定多数の利用者や施設管理者等の様々な要望等を総合的に勘案し設計された一品受注生産である目的物を、それぞれ多種多様な自然条件・環境条件の下で生産するという特殊性を有している。
当初積算時に予見できない施工条件や環境の変化に備え、その前提条件を明示して設計変更の円滑化を工夫する必要がある。
(2)適切な設計変更の必要性
公共工事の品質確保の促進に関する法律(平成 17 年法律第 18 号)の基本理
念(第 3 条第 10 項)に「請負契約の当事者が各々の対等な立場における合意に基づいてxxな契約を適正な額の請負代金で締結」が示されている。
設計変更についても、発注者の責務(第 7 条第 1 項第 5 号)として「設計図書に適切に施工条件を明示するとともに、必要があると認められるときは、適切に設計図書の変更及びこれに伴い必要となる請負代金の額又は工期の変更を行うこと」が規定されている。
また、変更見込額が請負代金額の30%を超える場合においても、一体施工の必要性から分離発注できないものについては、適切に設計図書の変更及びこれに伴い必要となる請負代金の額又は工期の変更を行うこととする。この場合において、特に、指示等で実施が決定し、施工が進められているにも関わらず、変更見込金額が請負代金額の30%を超えたことのみをもって設計変更に応じない、もしくは、設計変更に伴って必要と認められる請負代金の額や工期の変更を行わないことはあってはならない。
(3)ガイドライン策定の目的
設計変更に係る業務の円滑化を図るためには、発注者と受注者がともに、設計変更が可能なケース・不可能なケース、手続きの流れ等について十分理解しておく必要がある。
「工事請負契約における設計変更ガイドライン」の策定
2 発注者・受注者の留意事項
(1)発注者は・・・
設計積算にあたり、各工事において必要となってくる条件明示については、
「7 条件明示について」を参考に条件明示するよう努めること。
工事に必要な関係機関との調整、住民合意、用地確保、法定手続などの進捗状況を踏まえ、現場の実態に即した施工条件(自然条件を含む。)の明示等により、適切に設計図書を作成し、積算内容との整合を図るように努める。
(発注関係事務の運用に関する指針Ⅱ-1-(2)抜粋)
契約書の内容を理解の上、契約後は「契約書第 18 条から第 24 条」に基づき、施工前及び施工途中に、必要に応じて設計変更を行う。また、設計変更を行う場合には、必要な指示、協議等を書面で行う。
設計変更に伴う契約変更の手続きは、その必要が生じた都度、遅滞なく行うものとする。ただし、軽微な設計変更に伴うものは、工期の末に行うことをもって足りるものとする。
※「設計変更」とは、契約書第 18 条又は第 19 条の規定により図面又は仕様書を変更することとなる場合において、契約変更の手続きの前に当該変更の内容をあらかじめ発注者が受注者に指示することをいう。
※「契約変更」とは、契約書第 23 条又は第 24 条の規定により協議し、工期又は請負代金額の変更の契約を締結することをいう。
※「軽微な設計変更」とは、次に掲げるもの以外のものをいう。
・構造、工法、位置、断面等の変更で重要なもの
・変更見込額が請負代金額の 20%又は 1,500 万円を超えるもの
(2)受注者は・・・
共通仕様書を適用する工事にあっては、契約書の内容を理解の上、契約後は
「共通仕様書 1-1-1-3 設計図書の照査等」により施工前及び施工途中において、自らの負担により設計図書の照査を行う。
標準仕様書等を適用する工事にあっては、標準仕様書等「1.1.8 疑義に対する協議等」により、設計図書に定められた内容に疑義が生じた場合又は現場の納まり,取合い等の関係で,設計図書によることが困難若しくは不都合が生じた場合(契約書第 18 条第 1 項に該当する事項等を発見した場合)は,監督職員と協議する。
設計図書に疑義が生じた場合には、発注者と「協議」し進めることが重要である。
照査の結果等により、「契約書第 18 条第 1 項第 1 号~第 5 号(条件変更等)」に該当する事実がある場合は、監督職員にその事実が確認できる資料(現地地形図、設計図との対比図、取り合い図、施工図等)を「工事打合簿」等の書面により提出し、確認を求めなければならない。
3 設計変更が不可能なケース
契約書・共通仕様書・標準仕様書等に定められている所定の手続きを経ていない場合(契約書第 18 条~第 24 条、共通仕様書 1-1-1-16 から 1-1-1-18、標準仕様書等 1.1.8 から 1.1.10)等は、設計変更できない。
※契約書第 26 条(臨機の措置)については別途考慮する。
(設計変更が不可能なケースの具体例)
1)「工事打合簿」等の正式な書面によらない場合(口頭のみの指示、協議等の場合)
2)設計図書に条件明示のない事項において、発注者と「協議」を行わず受注者が独自に判断して施工(工法・材料等)を実施した場合
3)発注者と「協議」をしているが、協議の回答がない時点で施工(工法・材料等)を実施した場合
4)任意事項において、施工方法及び施工期間を変更する場合(ただし、設計図書に特別の定めがある場合や現地条件が一致しない場合を除く。)
例1)根固めブロックの据付におけるクレーン規格を変更した場合例2)護岸工事における仮締切工の範囲を拡大した場合
5)「承諾」で施工した場合
例1)基礎工において、砕石の代わりにコンクリートで施工することを承諾した場合
例2)コンクリート強度 18KN/mm2 の基準に対して、21KN/mm2 を使用することを承諾した場合
承諾:受注者自らの都合により施工方法等について監督職員に同意を得るもの
⇒設計変更不可
協議:発注者と書面により対等な立場で合意して発注者の「指示」によるもの
⇒設計変更可能
任意事項:仮設、施工方法その他工事目的物を完成するために必要な一切の手段については、この契約書及び設計図書に特別の定めがある場合を除き、受注者がその責任において定める。(契約書第 1 条第 3 項)
4 設計変更が可能なケース
(1)契約書・共通仕様書・標準仕様書等に定められている所定の手続きを経て(契約書第 18 条、共通仕様書 1-1-1-17、1-1-1-18、標準仕様書等 1.1.8)、発注者が設計図書を訂正又は変更する必要があると認めた場合、設計変更を行う。
≪留意事項≫
設計変更にあたっては下記の事項に留意し受注者へ指示する。
① 当初設計の考え方や設計条件を再確認して、設計変更「協議」にあたる。
② 当該工事での変更の必要性(規格の妥当性、変更対応の妥当性(別途発注ではないか。))を明確にし、設計変更は契約書第 19 条に基づき書面で行う。
③ 設計変更に伴う契約変更の手続きは、その必要が生じた都度、遅滞なく行うものとする。
④ 工事打合簿へ概算金額の記載を行う。ただし、以下の事項を条件とする。
a 受注者からの協議における変更の場合は、受注者が見積書を提出した場合に、その見積書を参考にして工事打合簿に記載する。 b 受注者からの協議によらず発注者の指示による場合は、概算金額を工事打合簿に記載することとし、記載できない場合にはその
理由を記載することとする。
c 記載する概算金額は「参考値」であり、契約変更額を拘束するものではない。
※「9 工事打合簿への概算額の記載方法」参照
1)設計図書が互いに一致しない場合(契約書第 18 条第 1 項第 1 号)
図面、共通仕様書、標準仕様書等、特記仕様書等設計図書の構成文書の優先順位が定められていない場合に、もし、図面と仕様書が一致しないときには、受注者としては、どちらに従って施工すべきかわからないことになる。この場合、発注者に確認して、設計図書を訂正してもらうべきである。
具体例)
・図面と仕様書の材料寸法、数量等の記載が一致しない場合
2)設計図書に誤謬又は脱漏がある場合(契約書第 18 条第 1 項第 2 号)
受注者は、xxxx、設計図書が誤っていると思われる点を発注者に確認すべきであり、発注者は、それが本当に誤っている場合には設計図書を訂正する必要がある。また、設計図書に脱漏がある場合には、受注者としては、自分で勝手に補って施工をつづけるのではなく、発注者に確認して、脱漏部分を訂正してもらうべきである。
具体例)
設計図書に誤謬(誤りが)ある場合
・図面により同一部分の舗装構成が異なる場合
・設計図書に示されているxxの打設方法では、条件明示されている土質で施工できない場合
・施工上必要な材料名について、図面ごとに異なる場合
・建築、電気設備及び機械設備の各分野の設計内容が互いに整合していない場合
設計図書に脱漏(記載漏れ)がある場合
・条件明示する必要がある場合にも係わらず、土質に関する一切の条件明示がない場合
・条件明示する必要がある場合にも係わらず、地下水位に関する一切の条件明示がない場合
・条件明示する必要がある場合にも係わらず、交通誘導警備員についての条件明示がない場合
・建築意匠図に記載されている電気(機械)設備が当該設備図面に記載されていない、又はその逆の場合
3)設計図書の表示が明確でない場合(契約書第 18 条第 1 項第 3 号)
設計図書の表示が明確でないことは、表示が不十分、不正確、不明確で実際の工事施工にあたってどのように施工してよいか判断がつかない場合などのことである。この場合においても、受注者が勝手に判断して、施工することは不適当である。
具体例)
・土質柱状図は明示されているが、地下水位が不明確な場合
・水替工実施の記載はあるが、作業時もしくは常時排水などの運転条件等の明示がない場合
4)設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しない場合(契約書第 18 条第 1 項第 4 号)
自然的条件とは、例えば、掘削する地山の高さ、埋め立てるべき水面の深さ等の地表面の凹凸等の形状、地質、湧水の有無又は量、地下水の水位、xxxの除去すべき物の有無。
また、人為的な施工条件の例としては、地下埋設物、地下工作物、xx
(捨)場、工事用道路、通行道路、工事に関係する法令等が挙げられる。
具体例)
・設計図書に明示された土質が現地条件と一致しない場合
・設計図書に明示された地下水位が現地条件と一致しない場合
・設計図書に明示された交通誘導警備員の人数等が規制図と一致しない場合
・前号の手続きにより行った設計図書の訂正・変更で、現地条件と一致しない場合
・設計図書に明示された想定支持地盤が現地条件と一致しない場合
・設計図書に明示された配管・配線等が現地条件と一致しない場合
・その他、新たな制約等が発生した場合
5)予期することのできない特別な状態が生じた場合(契約書第 18 条第 1 項第 5 号)
当初は予期することができなかったために設計図書に施工条件として定められていなかったが、事後的に特別な状態が生じた場合が該当する。(設計図書に明示された施工条件が実際の工事現場の状況と異なる場合については、第 4 号とする。)
具体例)
・埋蔵文化財を発見し、調査が必要になった場合
・工事範囲の一部に軟弱な地盤があり、地盤改良が必要になった場合
・地中障害物を発見し、撤去が必要となった場合
・解体作業中にアスベスト含有建材を発見し、調査及び撤去が必要となった場合
(2)発注者が変更を必要と認め、設計図書の変更に係る指示を行う場合(契約書第 19 条)具体例)
・地元調整等の結果、施工範囲、施工内容、施工期間等の変更が必要になった場合
・同時に施工する必要がある工種が判明し、その工種を追加する場合
・警察、道路・河川・鉄道等の管理者、電力・ガス等の事業者、消防署等の協議等により、施工内容の変更、工事の追加をする場合
・関連する工事の影響により施工条件が変わったため、施工内容を変更する場合
・工事現場の安全管理上、フェンス等の防護施設(共通仮設費に含まれるものを除く。)が必要と判断し、追加する場合
・当初設計で指定していた建設副産物(残土等)の処分先を変更する場合
・使用材料を変更する場合
・隣接工事との調整で、交通誘導警備員の員数を変更する場合
(3)発注者が工事を中止させた場合(契約書第 20 条)
受注者の責に帰することができないものにより工事目的物等に損害を生じ、もしくは工事現場の状態が変動したため、受注者が工事を施工できないと認められる場合。
具体例)
・設計図書に工事着工時期が定められた場合、その期日までに受注者の責によらず施工できない場合
・警察、道路・河川・鉄道管理者等の管理者間協議が未了の場合
・管理者間協議の結果、施工できない期間が設定された場合
・受注者の責によらない何らかのトラブル(地元調整等)が生じた場合
・設計図書に定められた期日までに詳細設計が未了のため、施工できない場合
・予見できない事態が発生した(地中障害物の発見等)場合
・工事用地の確保ができない等のため工事を施工できない場合
・設計図書と実際の施工条件の相違又は設計図書の不備が発見されたため施工を続けることが困難な場合
・埋蔵文化財の発掘又は調査、その他の事由により工事を施工できない場合
(4)受注者から工期の延長の請求があり、発注者が妥当と認めた場合(契約書第 21 条)
受注者は、天候の不良、関連工事の調整協力、その他受注者の責めに帰することができない事由により工期内に工事を完成することができない場合は、発注者へその理由を明示した書面により工期延長変更を請求することができる。
具体例)
・天候不良の日が例年に比べ多いと判断でき、工期の延長が生じた場合
・設計図書に明示された関連工事との調整に変更があり、工期の延長が生じた場合
・その他受注者の責めに帰することが出来ない事由により工期の延長が生じた場合
(5)発注者から工期の短縮を請求した場合(契約書第 22 条)
発注者は、特別な理由により工期を短縮する必要があるときは、工期の短縮変更を受注者に書面にて請求することができる。
具体例)
・工事一時中止にともない工期延長が予想され、工期短縮が必要な場合
・関連工事等の影響により、工期短縮が必要な場合
・その他の事由(地元調整、関係機関調整など)により工期の短縮が必要な場合
(6)「設計図書の照査」の範囲をこえる作業を発注者が指示した場合具体例)
・現地測量の結果、横断図を新たに作成する必要があるものや縦断図計画の見直しを伴う横断図の再作成が必要となるもの
・施工の段階で判明した推定岩盤線の変更に伴う横断図の再作成が必要となるもの
(ただし、当初横断図の推定岩盤線の変更は「設計図書の照査」に含まれる)
・現地測量の結果、排水路計画を新たに作成する必要があるもの
・構造物の位置や計画高さ、延長が変更となり構造計算の再計算が必要となるもの
・構造物の載荷高さが変更となり、構造計算の再計算が必要となるもの
・現地測量の結果、構造物のタイプが変更となるが標準設計で修正可能なもの
・構造物の構造計算書の計算結果が設計図と違う場合の構造計算の再計算及び図面作成が必要となるもの
・基礎杭が試験杭等により変更となる場合の構造計算及び図面作成
・土留め等の構造計算において現地条件や施工条件が異なる場合の構造計算及び図面作成
・「設計要領」、「各種示方書」等との対比設計
・構造物の応力計算書の計算入力条件の確認や構造物の応力計算を伴う照査
・設計根拠まで遡る見直し、必要とする工費の算出
・舗装維持、修繕工事の縦横断設計(当初の設計図書において縦横断図が示されており、その修正を行う場合とする。なお、設計図書で縦横断図が示されておらず共通仕様書「10-14-4-3 路面切削工」「10-14-4-5 切削オーバーレイ工」「10-14-4-6オーバーレイ工」等に該当し縦横断設計を行うものは設計照査に含まれる)
・新たな工種追加や設計変更による構造計算及び図面作成
・概算(数量)発注工事における構造計算及び図面作成
・「設計便覧」、「各種示方書」等の変更に伴う構造計算及び図面作成
・照査の結果、必要となった追加調査の実施具体例)・ボーリング調査
・杭打、大型重機による施工を行う際の近隣の家屋調査
・トンネル漏水補修工(裏込め注入工)の施工に際し、周辺地域への影響調査
(注)なお、適正な設計図書に基づく数量の算出及び完成図については、受注者の費用負担によるものとする。
5 設計変更手続きフロー
必要があると認められるときは設計図書の訂正又は変更<発注者が行う>
・設計図書の訂正(第 18 条第 4 項第 1 号)
・工事目的物の変更を伴う設計図書の変更(第 18 条第 4 項第 2 号)
調査終了後 14 日以内にその結果を通知
(とるべき措置がある場合、当該指示を含む)(第 18 条第 3 項)
調査結果のとりまとめ(第 18 条第 3 項)
受理
意見(第 18 条第 3 項)
受注者:立会い 発注者:直ちに調査の実施(第 18 条第 2 項)
通知し確認を請求 (第 18 条第 1 項)
(1)契約書第 18 条(条件変更等)関連
(1)図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書が一致しないこと。 (2)設計図書に誤謬又は脱漏があること。
(3)設計図書の表示が明確でないこと。
(4)工事現場の形状、地質、湧水等の状態、施工上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しないこと。
(5)設計図書で明示されていない施工条件について予期することのできない特別な状態が生じたこと。
受 注 者 | 発 注 者 |
契約書第 18 条第 1 項第 1 号~第 5 号に該当する事実を発見 |
必要があると認められるときは設計図書の訂正又は変更<発注者と受注者とが協議して発注者が行う>
・工事目的物の変更を伴わない設計図書の変更(第 18 条第 4 項第 3 号)
変更内容・変更根拠の明確化、変更図面、変更数量計算書等の変更設計図書の作成
必要があると認められるときは工期もしくは請負代金額を変更(第 18 条第 5 項)
協議 ①工期の変更(第 23 条) ②請負代金額の変更(第 24 条)
(2)契約書第 19 条(設計図書の変更)関連
受 注 者
発 注 者
受理
「契約書第 19 条」に基づき、設計図書の変更が必要と判断し通知(とるべき措置がある場合、当該指示を含む)
協議 ①工期の変更(第 23 条) ②請負代金額の変更(第 24 条)
(ただし、発注者が必要であると認めた場合)
6 設計変更に関わる資料の作成についての具体的対応方法
(1)設計照査に必要な資料作成
受注者は、当初設計等に対して契約書第 18 条第 1 項に該当する事実が発見された場合、監督職員にその事実が確認できる資料を書面により提出し、確認を求めなければならない。なお、これらの資料作成に必要な費用については契約変更の対象としない。
(2)設計変更に必要な資料作成
契約書第 18 条第1項に基づき設計変更するために必要な資料の作成については、同条
第 4 項に基づき発注者が行うものであるが、受注者に行わせる場合は、以下の手続きによるものとする。
① 設計照査に基づき設計変更が必要な内容については、受発注者間で確認する。
② 設計変更するために必要な資料の作成について書面により協議し、合意を図った後、発注者が具体的な指示を行うものとする。
③ 発注者は、書面による指示に基づき受注者が設計変更に関わり作成した資料を確認する。
④ 書面による指示に基づいた設計変更に関わる資料の作成業務については、契約変更の対象とする。
⑤ 増加費用の算定は、設計業務等標準積算基準書を基本とする。
7 条件明示について
(1)明示方法
施工条件は、契約条件となるものであることから、設計図書の中で明示するものとする。また、明示された条件に変更が生じた場合は、契約書の関連する条項に基づき、適切に対応するものとする。
なお、記載にあたっては、「条件明示について」(平成 14 年 3 月 28 日国官技第 369 号)を参考に、記載漏れがないよう十分注意すること。
(2)留意事項
① 明示されない施工条件、明示事項が不明確な施工条件についても、契約書の関連する条項に基づき、発注者と受注者とが協議できるものであること。
② 質疑回答のうち、施工条件に関するものは、質疑回答書により、文書化すること。
③ 施工条件の明示は、工事規模、内容に応じて適切に対応すること。なお、施工方法、機械施設等の仮設については、施工者の創意工夫を損なわないよう表現上留意すること。
(3)明示項目及び明示事項(案)
明示項目 | 明示事項 |
工程関係 | 1.他の工事の開始又は完了の時期により、当該工事の施工時期、全体工事等に影響がある場合は、影響箇所及び他の工事の内容、開始又は完了の時期。 2.施工時期、施工時間及び施工方法が制限される場合は、制限される施工内容、施工時期、施工時間及び施工方法。 3.当該工事の関係機関等との協議に未成立のものがある場合は、制約を受ける内容及びその協議内容、成立見込み時期。 4.関係機関、自治体等との協議の結果、特定された条件が付され当該工事の工程に影響がある場合は、その項目及び影響範囲。 5.余裕工期を設定して発注する工事については、工事の着手時期。 6.工事着手前に地下埋設物及び埋蔵文化財等の事前調査を必要とする場合は、その項目及び調査期間。又、地下埋設物等の移設が予定されている場合は、その移設期間。 7.設計工程上見込んでいる休日日数等作業不能日数。 |
用地関係 | 1.工事用地等に未処理部分がある場合は、その場所、範囲及び処理の見込み時期。 2.工事用地等の使用終了後における復旧内容。 3.工事用仮設道路・資機材置き場用の借地をさせる場合、その場所、範囲、時期、期間、使用条件、復旧方法等。 4.施工者に、消波ブロック、桁製作等の仮設ヤードとして官有地等及び発注者が借り上げた土地を使用させる場合は、その場所、範囲、時期、期間、使用条件、復旧方法 等。 |
公害関係 | 1.工事に伴う公害防止(騒音、振動、粉塵、排出ガス等)のため、施工方法、建設機械・設備、作業時間等を指定する必要がある場合は、その内容。 2.水替・流入防止施設が必要な場合は、その内容、期間。 3.濁水、湧水等の処理で特別の対策を必要とする場合は、その内容(処理施設、処理条件等)。 4.工事の施工に伴って発生する騒音、振動、地盤沈下、地下水の枯渇等、電波障害等 に起因する事業損失が懸念される場合は、事前・事後調査の区分とその調査時期、未然に防止するために必要な調査方法、範囲等。 |
安全対策関係 | 1.交通安全施設等を指定する場合は、その内容、期間。 2.鉄道、ガス、電気、電話、水道等の施設と近接する工事での施工方法、作業時間等に制限がある場合は、その内容。 3.落石、雪崩、土砂崩落等に対する防護施設が必要な場合は、その内容。 4.交通誘導員(※)、警戒船及び発破作業等の保全設備、保安要員の配置を指定する場合又は発破作業等に制限がある場合は、その内容。 5.有害ガス及び酸素欠乏等の対策として、換気設備等が必要な場合は、その内容。 |
工事用道路関係 | 1.一般道路を搬入路として使用する場合 (1)工事用資機材等の搬入経路、使用期間、使用時間帯等に制限がある場合は、その経路、期間、時間帯等。 (2)搬入路の使用中及び使用後の処置が必要である場合は、その処置内容。 2.仮道路を設置する場合 (1)仮道路に関する安全施設等が必要である場合は,その内容、期間。 (2)仮道路の工事終了後の処置(存置又は撤去)。 (3)仮道路の維持補修が必要である場合は、その内容。 |
仮設備関係 | 1.仮土留、仮橋、足場等の仮設物を他の工事に引き渡す場合及び引き継いで使用する場合は、その内容、期間、条件等。 2.仮設備の構造及びその施工方法を指定する場合は、その構造及びその施工方法。 3.仮設備の設計条件を指定する場合は、その内容。 |
建設副産物関係 | 1.建設発生土が発生する場合は、残土の受入場所及び仮置き場所までの距離、時間等の処分及び保管条件。 2.建設副産物の現場内での再利用及び減量化が必要な場合は、その内容。 3.建設副産物及び建設廃棄物が発生する場合は、その処理方法、処理場所等の処理条件。なお、再資源化処理施設又は最終処理場を指定する場合は、その受入場所、距離、 時間等の処分条件。 |
工事支障物件等 | 1.地上、地下等の占用物件の有無及び占用物件等で工事支障物が存在する場合は、支障物件名、管理者、位置、移設時期、工事方法、防護等。 2.地上、地下等の占用物件工事と重複して施工する場合は、その工事内容及び期間等。 |
薬液注入関係 | 1.薬液注入を行う場合は、設計条件、工法区分、材料種類、施工範囲、削孔数量、削孔延長及び注入量、注入圧等。 2.周辺環境への調査が必要な場合は、その内容。 |
その他 | 1.工事用資機材の保管及び仮置きが必要である場合は、その保管及び仮置き場所、期間、保管方法等。 2.工事現場発生品がある場合は、その品名、数量、現場内での再使用の有無、引き渡し場所等。 3.支給材料及び貸与品がある場合は、その品名、数量、品質、規格又は性能、引渡場所、引渡期間等。 4.関係機関・自治体等との近接協議に係る条件等その内容。 5.架設工法を指定する場合は、その施工方法及び施工条件。 6.工事用電力等を指定する場合は、その内容。 7.新技術・新工法・特許工法を指定する場合は、その内容。 8.部分使用を行う必要がある場合は、その箇所及び使用時期。 9.給水の必要のある場合は、取水箇所・方法等。 |
※当該通知「条件明示について」の原文のまま「交通誘導員」と表記するが、「交通誘導警備員」に読み替えること。
8 指定・任意の使い分け
(1)基本事項
指定・任意については、契約書第 1 条第 3 項に定められているとおり、適切に扱う必要がある。
① 任意については、その仮設、施工方法の一切の手段の選択は受注者の責任で行う。
② 任意については、その仮設、施工方法に変更があっても原則として設計変更の対象としない。
③ ただし、指定・任意ともに当初積算時の想定と現地条件が異なることによる変更は行う。
(2)留意事項
指定・任意の使い分けにおいては下記の事項に留意する。
① 仮設、施工方法等には、指定と任意があり、発注においては、指定と任意の部分を明確にする必要がある。
② 監督職員は、任意の趣旨を踏まえ、適切な対応をするように注意が必要。
※任意における下記のような対応は不適切
・○○工法で積算しているので、「○○工法以外での施工は不可」との対応。
・標準歩掛かりではバックホウで施工となっているので、「クラムシェルでの施工は不可」との対応。
・新技術の活用について受注者から申し出があった場合に、「積算上の工法で施工」するよう対応。
ただし、任意であっても、当初積算時の条件と現地条件に変更がある場合は、設計変更を行う。
(3)発注者の指定事項以外は任意事項として受注者の裁量の範囲
【自主施工の原則】
契約書第 1 条第 3 項により、設計図書に指定されていなければ、工事実施の手段、仮設物等は受注者の裁量の範囲
契約書第 1 条第 3 項
仮設、施工方法その他工事目的物を完成するために必要な一切の手段(以下「施工方法等」という。)については、この契約書及び設計図書に特別の定めがある場合を除き、受注者がその責任において定める。
(4)指定と任意の考え方
指 定 | 任 意 | |
設計図書 | 施工方法等について具体的に 指定する | 施工方法等について具体的に は指定しない |
施工方法等の変更 | 発注者の指示又は承諾が必要 | 受注者の任意(施工計画書等の修正、提出は必要) |
施工方法の変更があ る場合の設計変更 | 設計変更の対象とする | 設計変更の対象としない |
条件明示の変更に対 応した設計変更 | 設計変更の対象とする | 設計変更の対象とする |
その他 | <指定仮設とすべき事項> ・河川堤防と同等の機能を有する仮締切のある場合 ・仮設構造物を一般交通に供する場合 ・関係官公署との協議により制約条件のある場合 ・特許工法又は特殊工法を採用する場合 ・その他、第三者に特に配慮する必要がある場合 ・他工事等に使用するため、工事完成後も存置される必要のある仮設 |
9 工事打合簿への概算額の記載方法
設計変更を行う為、契約変更に先だって指示を行う場合は、工事打合簿にその内容に伴う増減額の概算額を記載する。ただし、受注者からの協議により変更する場合にあっては、協議時点で受注者から見積書の提出を受けた場合に限る。
ここで記載する概算額は、「参考値」であり、契約変更額を拘束するものではない。
また、緊急的に行う場合又は何らかの理由により概算額の算定に時間を要する場合は、「後日通知する」ことを添えて指示を行うものとする。
(1)発注者からの先行指示の場合
① 発注者から指示を行い、契約変更手続きを行う前に受注者へ作業を行わせる場合は、必ず工事打合簿にて指示を行う。
② 工事打合簿には、変更内容による変更見込み概算額を記載することとし、記載できない場合にはその理由を記載する。
③ 概算額については、類似する他工事の事例や設計業務等の成果、協会資料などを参考に記載することも可とする。また、記載した概算額の出典や算出条件等について明示する。
④ 概算額は、50 万円単位を基本(100 万円以下の場合は 10 万円単位)とする。(端数切り捨て)なお、増減額が 10 万円未満の場合は記載しない。
(2)受発注者間の協議により変更する工事打合簿の場合
① 受発注者間の協議に基づき、契約変更手続きを行う前に受注者へ作業を行わせる場合は、必ず工事打合簿にて指示を行う。
② 工事打合簿には、変更内容による変更見込み概算額を記載する。
③ 概算額の明示にあたっては、協議時点で受注者から見積書の提出があった場合に、その見積書の妥当性を確認し、妥当性が確認された場合は、その見積書の額と、受注者の提示額であることを工事打合簿に記載する。受注者から見積書の提出がない場合は、概算額を記載しない。
④ 概算額は、50 万円単位を基本(100 万円以下の場合は 10 万円単位)とする。
10 工事打合簿の記載例
(1)「指示」の記載例
工 事 打 合 簿
発 議 者 | ■発注者 □受注者 | 発議年月日 | 年 月 日 |
発 議 事 項 | ■指示 □協議 □通知 □承諾 □報告 □提出 □その他( ) | ||
工 事 名 及 び工 事 番 号 | △-△-△ ○○○○○○○○○○○工事 (受注者: ) | ||
(内容) ○○工について、以下のとおり変更指示します。本指示の内容は、設計変更の対象とします。 (変更前) (変更後) ○○工 規格 △△ → ▲▲ この内容に伴う増減額の概算額(請負代金相当額)は、約 150 万円です。 なお、概算額は「参考値」であり、契約変更額を拘束するものではありません。 (以下省略) |
発 議 者 | ■発注者 □受注者 | 発議年月日 | 年 月 日 |
発 議 事 項 | ■指示 □協議 □通知 □承諾 □報告 □提出 □その他( ) | ||
工 事 名 及 び 工 事 番 号 | △-△-△ ○○○○○○○○○○○工事 (受注者: ) | ||
(内容) ○○工について、以下のとおり変更指示します。本指示の内容は、設計変更の対象とします。 (変更前) (変更後) ○○工 規格 △△ → ▲▲ この内容に伴う増減額の概算額(請負代金相当額)の算定には時間を要するため、後日通知します。 (以下省略) |
工 事 打 合 簿
(2)「協議」の記載例
工 事 打 合 簿
発 | 議 | 者 | □発 | 注者 ■受注者 | 発議年月日 | 年 | 月 | 日 | |
発 | 議 | 事 項 | □指示 ■協議 □通知 □承諾 □報告 □提出 □その他( ) | ||||||
工工 | 事 名事 | 及 び 番 号 | △-△-△ ○○○○○○○○○○○工事 (受注者: ) | ||||||
(内容) ○○工について、□□により施工困難であるので、添付図書のとおり変更したいので協議します。 (途中省略) | |||||||||
処 理 ・ 回 答 | 発 注 者 | 上記について ■指示 □承諾 □協議 □提出 □受理 します。 □その他( ) 協議のとおり施工してください。本協議内容は、設計変更の対象とします。この内容に伴う増減額の概算額(請負代金相当額)は、約 80 万円です。 なお、概算額は「参考値」であり、契約変更額を拘束するものではありません。 年 月 日 | |||||||
受 注 者 | 上記について | ■承諾 □協議 □その他( | □提出 ) | □報告 | □受理 | します。 | 月 | 日 | |
年 |
発 | 議 | 者 | □発 | 注者 ■受注者 | 発議年月日 | 年 | 月 | 日 | |
発 | 議 | 事 項 | □指示 ■協議 □通知 □承諾 □報告 □提出 □その他( ) | ||||||
工 工 | 事 名 事 | 及 び 番 号 | △-△-△ ○○○○○○○○○○○工事 (受注者: ) | ||||||
(内容) ○○工について、□□により施工困難であるので、添付図書のとおり変更したいので協議します。 (途中省略) | |||||||||
処 理 ・ 回 答 | 発 注 者 | 上記について ■指示 □承諾 □協議 □提出 □受理 します。 □その他( ) 協議のとおり施工してください。本協議内容は、設計変更の対象とします。 この内容に伴う増減額の概算額(請負代金相当額)の算定には時間を要するため、後日通知します。 年 月 日 | |||||||
受 注 者 | 上記について | ■承諾 □協議 □その他( | □提出 ) | □報告 | □受理 | します。 | 月 | 日 | |
年 |
工 事 打 合 簿
(3)「承諾」の記載例
発 | 議 | 者 | □発注者 ■受注者 | 発議年月日 | 年 月 | 日 | |||
発 | 議 | 事 項 | □指示 ■協議 □通知 □承諾 | □報 | 告 □提出 | □その他( | ) | ||
工 工 | 事 名 事 | 及 び 番 号 | △-△-△ ○○○○○○○○○○○工事 | ( | 受注者: | ) | |||
(内容) ○○工について、□□により施工困難であるため、添付図書のとおり変更したいので協議します。 (途中省略) | |||||||||
処 理 ・ 回 答 | 発 注 者 | 上記について □指示 ■承諾 □協議 □提出 □その他( ) 本協議内容は、設計変更の対象としません。 | □受理 | します。 | |||||
年 | 月 | 日 | |||||||
受 注 者 | 上記について | ■承諾 □協議 □その他( | □提出 ) | □報告 | □受理 | します。 | |||
年 | 月 | 日 |
工 事 打 合 簿
※参考資料
◎公共工事の品質確保の促進に関する法律(抜粋)
(平成 17 年 3 月 31 日法律第 18 号)
(基本理念)
第三条 公共工事の品質は、公共工事が現在及び将来における国民生活及び経済活動の基盤となる社会資本を整備するものとして社会経済上重要な意義を有することに鑑み、国及び地方公共団体並びに公共工事の発注者及び受注者がそれぞれの役割を果たすことにより、現在及び将来の国民のために確保されなければならない。
10 公共工事の品質確保に当たっては、公共工事の受注者のみならず下請負人及びこれらの者に使用される技術者、技能労働者等がそれぞれ公共工事の品質確保において重要な役割を果たすことに鑑み、公共工事における請負契約(下請契約を含む。)の当事者が各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を適正な額の請負代金で締結し、その請負代金をできる限り速やかに支払う等信義に従って誠実にこれを履行するとともに、公共工事に従事する者の賃金その他の労働条件、安全衛生その他の労働環境が改善されるように配慮されなければならない。
(発注者の責務)
第七条 発注者は、基本理念にのっとり、現在及び将来の公共工事の品質が確保されるよう、公 共工事の品質確保の担い手の中長期的な育成及び確保に配慮しつつ、仕様書及び設計書の作成、予定価格の作成、入札及び契約の方法の選択、契約の相手方の決定、工事の監督及び検査並び に工事中及び完成時の施工状況の確認及び評価その他の事務(以下「発注関係事務」という。)を、次に定めるところによる等適切に実施しなければならない。
五 設計図書(仕様書、設計書及び図面をいう。以下この号において同じ。)に適切に施工条件を明示するとともに、設計図書に示された施工条件と実際の工事現場の状態が一致しない場合、設計図書に示されていない施工条件について予期することができない特別な状態が生じた場合その他の場合において必要があると認められるときは、適切に設計図書の変更及びこれに伴い必要となる請負代金の額又は工期の変更を行うこと。
◎発注関係事務の運用に関する指針(抜粋)
(平成 27 年1月 30 日公共工事の品質確保の促進に関する関係省庁連絡会議)
Ⅱ.発注関係事務の適切な実施について
1.発注関係事務の適切な実施
(2)工事発注準備段階
(工事の性格等に応じた入札契約方式の選択)
工事の発注に当たっては、本指針を踏まえ、工事の性格や地域の実情等に応じた適切な入札契約方式を選択するよう努める。1)自らの発注体制や地域の実情等により、適切な入札契約方式の選択・活用の実施が困難と認められる場合は、国、都道府県や外部の支援体制の活用に努める。
(予算、工程計画等を考慮した工事発注計画の作成)
地域の実情等を踏まえ、予算、工程計画、工事費等を考慮した工区割りや発注ロットを適切に設定し、工事の計画的な発注に努める。
(現場条件等を踏まえた適切な設計図書の作成)
工事に必要な関係機関との調整、住民合意、用地確保、法定手続などの進捗状況を踏まえ、現場の実態に即した施工条件(自然条件を含む。)の明示等により、適切に設計図書を作成し、積算内容との整合を図る。
(4)工事施工段階
(施工条件の変化等に応じた適切な設計変更)
施工条件を適切に設計図書に明示し、設計図書に示された施工条件と実際の工事現場の状態が一致しない場合、設計図書に明示されていない施工条件について予期することのできない特別な状態が生じた場合その他の場合において、必要と認められるときは、適切に設計図書の変更及びこれに伴って必要となる請負代金の額や工期の適切な変更を行う。
また、労務、資材等の価格変動を注視し、賃金水準又は物価水準の変動により受注者から請負代金額の変更(いわゆる全体スライド条項、単品スライド条項又はインフレスライド条項)について請求があった場合は、変更の可否について迅速かつ適切に判断した上で、請負代金額の変更を行う。
◎(基準契約書A)工事請負契約書(抜粋)
(総則)
第1条 発注者及び受注者は、この契約書に基づき、設計図書(別冊の図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書をいう。以下同じ。)に従い、日本国の法令を遵守し、この契約(この契約書及び設計図書を内容とする工事の請負契約をいう。以下同じ。)を履行しなければならない。
3 仮設、施工方法その他工事目的物を完成するために必要な一切の手段(以下「施工方法等」という。)については、この契約書及び設計図書に特別の定めがある場合を除き、受注者がその責任において定める。
(条件変更等)
第 18 条 受注者は、工事の施工に当たり、次の各号のいずれかに該当する事実を発見したときは、その旨を直ちに監督職員に通知し、その確認を請求しなければならない。
(1) 図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書が一致しないこと(これらの優先順位が定められている場合を除く。)。
(2) 設計図書に誤謬又は脱漏があること。
(3) 設計図書の表示が明確でないこと。
(4) 工事現場の形状、地質、湧水等の状態、施工上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しないこと。
(5) 設計図書で明示されていない施工条件について予期することのできない特別な状態が生じたこと。
2 監督職員は、前項の規定による確認を請求されたとき又は自ら同項各号に掲げる事実を発見したときは、受注者の立会いの上、直ちに調査を行わなければならない。ただし、受注者が立会いに応じない場合には、受注者の立会いを得ずに行うことができる。
3 発注者は、受注者の意見を聴いて、調査の結果(これに対してとるべき措置を指示する必要があるときは、当該指示を含む。)をとりまとめ、調査の終了後14日以内に、その結果を受注者に通知しなければならない。ただし、その期間内に通知できないやむを得ない理由があるときは、あらかじめ受注者の意見を聴いた上、当該期間を延長することができる。
4 前項の調査の結果において第 1 項の事実が確認された場合において、必要があると認められるときは、次の各号に掲げるところにより、設計図書の訂正又は変更を行わなければならない。
(1) 第 1 項第 1 号から第 3 号までのいずれかに該当し設計図書を訂正する必要があるもの
発注者が行う。
(2) 第 1 項第 4 号又は第 5 号に該当し設計図書を変更する場合で工事目的物の変更を伴うもの
発注者が行う。
(3) 第 1 項第 4 号又は第 5 号に該当し設計図書を変更する場合で工事目的物の変更を伴わないもの
発注者と受注者とが協議して発注者が行う。
5 前項の規定により設計図書の訂正又は変更が行われた場合において、発注者は、必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
(設計図書の変更)
第 19 条 発注者は、前条第 4 項の規定によるほか、必要があると認めるときは、設計図書の変更内容を受注者に通知して、設計図書を変更することができる。この場合において、発注者は、必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
(工事の中止)
第 20 条 工事用地等の確保ができない等のため又は暴風、豪雨、洪水、高潮、地震、地すべり、落盤、火災、騒乱、暴動その他の自然的又は人為的な事象(以下「天災等」という。)であって受注者の責めに帰すことができないものにより工事目的物等に損害を生じ若しくは工事現場の状態が変動したため、受注者が工事を施工できないと認められるときは、発注者は、工事の中止内容を直ちに受注者に通知して、工事の全部又は一部の施工を一時中止させなければならない。
2 発注者は、前項の規定によるほか、必要があると認めるときは、工事の中止内容を受注者に通知して、工事の全部又は一部の施工を一時中止させることができる。
3 発注者は、前 2 項の規定により工事の施工を一時中止させた場合において、必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し、又は受注者が工事の続行に備え工事現場を維持し若しくは労働者、建設機械器具等を保持するための費用その他の工事の施工の一部中止に伴う増加費用を必要とし若しくは受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
(受注者の請求による工期の延長)
第 21 条 受注者は、天候の不良、第 2 条の規定に基づく関連工事の調整への協力その他受注者の責めに帰すことができない事由により工期内に工事を完成することができないときは、その理由を明示した書面により、発注者に工期の延長変更を請求することができる。
2 発注者は、前項の規定による請求があった場合において、必要があると認められるときは、工期を延長しなければならない。発注者は、その工期の延長が発注者の責めに帰すべき事由による場合においては、請負代金額について必要と認められる変更を行い、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
(発注者の請求による工期の短縮等)
第 22 条 発注者は、特別の理由により工期を短縮する必要があるときは、工期の短縮変更を受注者に請求することができる。
2 発注者は、この契約書の他の条項の規定により工期を延長すべき場合において、特別の理由があるときは、延長する工期について、通常必要とされる工期に満たない工期への変更を請求することができる。
3 発注者は、前 2 項の場合において、必要があると認められるときは請負代金額を変更し、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。
(工期の変更方法)
第 23 条 工期の変更については、発注者と受注者とが協議して定める。ただし、協議開始の日から14日以内に協議が整わない場合には、発注者が定め、受注者に通知する。
2 前項の協議開始の日については、発注者が受注者の意見を聴いて定め、受注者に通知するものとする。ただし、発注者が工期の変更事由が生じた日(第 21 条の場合にあっては発注者が工期変更の請求を受けた日、前条の場合にあっては受注者が工期変更の請求を受けた日)から7日以内に協議開始の日を通知しない場合には、受注者は、協議開始の日を定め、発注者に通知することができる。
(請負代金額の変更方法等)
第 24 条 請負代金額の変更については、発注者と受注者とが協議して定める。ただし、協議開始の日から14日以内に協議が整わない場合には、発注者が定め、受注者に通知する。
2 前項の協議開始の日については、発注者が受注者の意見を聴いて定め、受注者に通知するものとする。ただし、請負代金額の変更事由が生じた日から7日以内に協議開始の日を通知しない場合には、受注者は、協議開始の日を定め、発注者に通知することができる。
3 この契約書の規定により、受注者が増加費用を必要とした場合又は損害を受けた場合に発注者が負担する必要な費用の額については、発注者と受注者とが協議して定める。
(臨機の措置)
第 26 条 受注者は、災害防止等のため必要があると認めるときは、臨機の措置をとらなければならない。この場合において、必要があると認めるときは、受注者は、あらかじめ監督職員の意見を聴かなければならない。ただし、緊急やむを得ない事情があるときは、この限りでない。
2 前項の場合においては、受注者は、そのとった措置の内容を監督職員に直ちに通知しなければならない。
3 監督職員は、災害防止その他工事の施工上特に必要があると認めるときは、受注者に対して臨機の措置をとることを請求することができる。
4 受注者が第 1 項又は前項の規定により臨機の措置をとった場合において、当該措置に要した費用のうち、受注者が請負代金額の範囲において負担することが適当でないと認められる部分については、発注者が負担する。
◎土木工事共通仕様書(案)(平成 29 年 9 月、京都府)(抜粋)
1-1-1-3 設計図書の照査等
1.図面原図の貸与
受注者からの要求があり、監督職員が必要と認めた場合、受注者に図面の原図を貸与することができる。ただし、共通仕様書等市販または公開されているものについては、受注者が備えなければならない。
2.設計図書の照査
受注者は、施工前および施工途中において、自らの負担により契約書第 18 条第 1 項第
1 号から第 5 号に係る設計図書の照査を行い、該当する事実がある場合は、監督職員にその事実が確認できる資料を書面により提出し、確認を求めなければならない。
なお、確認できる資料とは、現地地形図、設計図との対比図、取合い図、施工図等を含むものとする。また、受注者は、監督職員から更に詳細な説明または書面の追加の要求があった場合は従わなければならない。
3.契約図書等の使用制限
受注者は、契約の目的のために必要とする以外は、契約図書及びその他の図書を監督職員の承諾なくして第三者に使用させ、または伝達してはならない。
1-1-1-16 工事の一時中止
1.一般事項
発注者は、契約書第 20 条の規定に基づき以下の各号に該当する場合においては、あらかじめ受注者に対して通知した上で、必要とする期間、工事の全部または一部の施工について一時中止をさせることができる。
なお、暴風、豪雨、洪水、高潮、地震、地すべり、落盤、火災、騒乱、暴動その他自然的または人為的な事象による工事の中断については、1-1-1-44 臨機の措置により、受注者は、適切に対応しなければならない。
(1) 埋蔵文化財の調査、発掘の遅延及び埋蔵文化財が新たに発見され、工事の続行が不適当または不可能となった場合
(2) 関連する他の工事の進捗が遅れたため工事の続行を不適当と認めた場合
(3) 工事着手後、環境問題等の発生により工事の続行が不適当または不可能となった場合 2.発注者の中止権
発注者は、受注者が契約図書に違反しまたは監督職員の指示に従わない場合等、監督職員が必要と認めた場合には、工事の中止内容を受注者に通知し、工事の全部または一部の施工について一時中止させることができる。
3.基本計画書の作成
前 2 項の場合において、受注者は施工を一時中止する場合は、中止期間中の維持・管理に関する基本計画書を監督職員に提出し、承諾を得るものとする。また、受注者は工事の再開に備え工事現場を保全しなければならない。
1-1-1-17 設計図書の変更
設計図書の変更とは、入札に際して発注者が示した設計図書を、発注者が指示した内容及び設計変更の対象となることを認めた協議内容に基づき、発注者が修正することをいう。
なお、工事請負契約書第 1 条第 3 項に規定する契約書及び設計図書に特別の定めのない施工方法等については、本工事の数量変更による場合を除き設計変更の対象としない。
1-1-1-18 工期変更
1.一般事項
契約書第 15 条第 7 項、第 17 条第 1 項、第 18 条第 5 項、第 19 条、第 20 条第 3 項、第
21 条及び第 42 条第 2 項の規定に基づく工期の変更について、契約書第 23 条の工期変更協議の対象であるか否かを監督職員と受注者との間で確認する(本条において以下「事前協議」という。) ものとし、監督職員はその結果を受注者に通知するものとする。
2.設計図書の変更等
受注者は、契約書第 18 条第 5 項及び第 19 条に基づき設計図書の変更または訂正が行
われた場合、第 1 項に示す事前協議において工期変更協議の対象であると確認された事項について、必要とする変更日数の算出根拠、変更工程表その他必要な資料を添付の上、契約書第 23 条第 2 項に定める協議開始の日までに工期変更について監督職員と協議しなければならない。
3.工事の一時中止
受注者は、契約書第 20 条に基づく工事の全部もしくは一部の施工が一時中止となった
場合、第 1 項に示す事前協議において工期変更協議の対象であると確認された事項について、必要とする変更日数の算出根拠、変更工程表その他必要な資料を添付の上、契約書第 23 条第 2 項に定める協議開始の日までに工期変更に関して監督職員と協議しなければならない。
4.工期の延長
受注者は、契約書第 21 条に基づき工期の延長を求める場合、第 1 項に示す事前協議において工期変更協議の対象であると確認された事項について、必要とする延長日数の算出根拠、変更工程表その他必要な資料を添付の上、契約書第 23 条第 2 項に定める協議開始の日までに工期変更に関して監督職員と協議しなければならない。
5.工期の短縮
受注者は、契約書第 22 条第 1 項に基づき工期の短縮を求められた場合、可能な短縮日
数の算出根拠、変更工程表その他必要な資料を添付し、契約書第 23 条第 2 項に定める協議開始の日までに工期変更に関して監督職員と協議しなければならない。
◎公共建築工事標準仕様書(建築工事編)(平成 28 年版、一般財団法人公共建築協会)(抜粋)
1.1.8 疑義に対する協議等
(a) 設計図書に定められた内容に疑義が生じた場合又は現場の納まり,取合い等の関係で,設計図書によることが困難若しくは不都合が生じた場合は,監督職員と協議する。
(b) (a)の協議を行った結果,設計図書の訂正又は変更を行う場合の措置は,契約書の規定による。
(c) (a)の協議を行った結果,設計図書の訂正又は変更に至らない事項は,1.2.4(a)による。
1.1.9 工事の一時中止に係る事項
次の(1)から(5)までのいずれかに該当し,工事の一時中止が必要となった場合は,直ちにその状況を監督職員に報告する。
(1) 埋蔵文化財調査の遅延又は埋蔵文化財が新たに発見された場合
(2) 別契約の関連工事の進捗が遅れた場合
(3) 工事の着手後,周辺環境問題等が発生した場合
(4) 第三者又は工事関係者の安全を確保する場合
(5) 暴風,豪雨,洪水,高潮,地震,地すべり,落盤,火災,騒乱,暴動その他の自然的又は人為的な事象で,受注者の責めに帰すことができないものにより,工事目的物等に損害を生じた場合又は工事現場の状態が変動した場合
1.1.10 工期の変更に係る資料の提出
(a) 契約書の規定に基づく工期の短縮を発注者から求められた場合は,協議の対象となる事項について,可能な短縮日数の算出根拠,変更工程表その他の協議に必要な資料を,監督職員に提出する。
(b) 契約書の規定に基づく工期の変更についての協議を発注者と行うに当たっては,協議の対象となる事項について,必要とする変更日数の算出根拠,変更工程表その他の協議に必要な資料を,あらかじめ監督職員に提出する。