判決の要旨. 裁判所は、次のように判示して、Xの請求を棄却した。 (Y1らによる詐欺行為の有無) 本件手付条項は、一般的な語義に従うと、 「手付解除期日」と「相手方が本契約の履行に着手する」のいずれかが実現することを期限とするもので、いずれか早い方が期限となると解される。 Xは、名古屋高等裁判所平成13年3月29日判決が本件手付条項と同一の文言の条項につきXが主張する解釈を採用したと指摘するが、当該判決の解釈は、宅地建物取引業者が売主であるなど、本件とは異なる事情を基礎としているといわざるを得ず、本件手付条項も同様に解釈すべきとは言えない。 また、Xは、不動産業界団体が作成した売買契約書の書式は、上記判決を契機に改訂されているのに、本件売買契約では改訂前の書式が用いられたことから、上記両者のいずれか遅い方の解釈を採用する意図があったとも主張する。しかし、改訂前の文言をそのように解釈すべきか疑問がある上、書式を採用した経緯が証拠上明らかでないから、直ちにそうした意図があったとは推認し得ない。 Xが本件売買契約の解消を申し出たのは手付解除期日後であったから、本件手付条項に基づいて本件売買契約を解除することはできなかったとみるべきである。 (Y2による誠実義務違反の有無) 本件売買契約は、Xが解消を申し出た時点で手付解除し得なかったとみられる。そうすると、手付解除が可能である旨の説明義務が宅地建物取引業者にあるとはいえないのであって、そうした説明義務は生じていない。 また、Y3と転売先との売買契約は、本件売買契約の4週間後に締結されており、その 媒介契約もその頃に締結されたとみられる。そうすると、Y3は、本件売買契約に係る仲介を終えた後にAとの仲介をしたのであって、それぞれの仲介業務が並行して実行されたのでないから、宅建業者Y3がXとAの両方と媒介契約を締結したことが利益相反となるとみるのは相当でない。 名古屋高裁の裁判例については、本件と同じく、「手付解除期日(契約日から20日余後)又は相手方が履行に着手するまでは、手付解除できる」とされた契約条文において、売主宅建業者が、同条文の解釈では手付解除はいずれか早い時期までに制限されるとして、手付解除期日前に手付解除を行った買主に対し、契約日2日後の履行の着手を理由に違約金を請求した事案であって、裁判所は契約締結の経緯や手付解除の行使期間等から、当該契約ではいずれか遅い時期までと解釈すべきと判断したものであり、手付解除期日後に解除の申出をした本件と事情が異なるものである。 この名古屋高裁の裁判例を受け、不動産業界団体では、手付解除に関して異なった解釈が発生しないよう、手付解除は相手方が履行に着手していても、手付解除期日までは、解除を行うことができる旨の契約書雛形に変更している。 媒介事業者等におかれては売買契約書等の作成に際して、書式雛形を利用される場合には、書式改正情報等を参考に、最新の書式雛形を使用されるよう留意されたい。
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判決の要旨. 裁判所は、次のように判示して、Xの請求を棄却した裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を認容した。 (Y1らによる詐欺行為の有無) 本件手付条項は、一般的な語義に従うと、 「手付解除期日」と「相手方が本契約の履行に着手する」のいずれかが実現することを期限とするもので、いずれか早い方が期限となると解されるYは、本件土地の購入意向を示した直後から、金融機関に対し融資交渉を行っていたが、どれも担保不足等を指摘されて拒絶されていたこと、当初契約が締結されてから平成 20年5月9日の協議に至るまで、XはYから、同契約に基づく手付金等の支払を一切受けていなかったこと、これにつき度々支払期限延長の申出がされていたことが認められる。 Xは、名古屋高等裁判所平成13年3月29日判決が本件手付条項と同一の文言の条項につきXが主張する解釈を採用したと指摘するが、当該判決の解釈は、宅地建物取引業者が売主であるなど、本件とは異なる事情を基礎としているといわざるを得ず、本件手付条項も同様に解釈すべきとは言えないЖ このような状況は、Xからみた場合、本件土地を他へ売却することもできず、Yの融資交渉の進展待ちという不安定な状態が継続するというリスクを抱え込むことを意味し、しかも本件ローン解除条項が存在することは、かかるリスクを増大させる要因の一つとなるものであるから、これを削除して万一融資が通らなかった場合の違約金請求権を確保しようとすることは、Xにとって了解可能な行動であると考えられる。 また、Xは、不動産業界団体が作成した売買契約書の書式は、上記判決を契機に改訂されているのに、本件売買契約では改訂前の書式が用いられたことから、上記両者のいずれか遅い方の解釈を採用する意図があったとも主張する。しかし、改訂前の文言をそのように解釈すべきか疑問がある上、書式を採用した経緯が証拠上明らかでないから、直ちにそうした意図があったとは推認し得ない€ また、Yとしても、前記認定のとおり、同日の協議当時は、複数の金融機関に融資を申し込んでいて、その結果待ちという状況であったのであり、これらのうちいずれかで融資が承認されれば、本件土地の売買に関する当面の問題は解決されるのであるから、上記協議の場において、X側から持ちかけられた本件ローン解除条項削除の提案について難色を示すような状況にあったとは認められないこと、現に、Yは、前記認定のとおり、同日 の協議の場において、あと少しすれば融資が確実におりる旨説明していたのであり、このようなY側の当時の状況認識からすれば、本件ローン解除条項の削除が大きな意味を持つものと考えていなかったのではないかと推認される。 Xが本件売買契約の解消を申し出たのは手付解除期日後であったから、本件手付条項に基づいて本件売買契約を解除することはできなかったとみるべきである本件ローン解除条項の削除がされた本件売買契約書に特段の異議をとどめずに捺印等していることなどからすれば、同日の本件売買契約時において、XとYは本件ローン解除条項の削除について合意していたものと認められ、Yがこの点について錯誤に陥っていたとも、Xがこの点について故意に告知していなかったとも認められないから、Yの主張は理由がない。 (Y2による誠実義務違反の有無) 本件売買契約は、Xが解消を申し出た時点で手付解除し得なかったとみられる。そうすると、手付解除が可能である旨の説明義務が宅地建物取引業者にあるとはいえないのであって、そうした説明義務は生じていない。 また、Y3と転売先との売買契約は、本件売買契約の4週間後に締結されており、その 媒介契約もその頃に締結されたとみられる。そうすると、Y3は、本件売買契約に係る仲介を終えた後にAとの仲介をしたのであって、それぞれの仲介業務が並行して実行されたのでないから、宅建業者Y3がXとAの両方と媒介契約を締結したことが利益相反となるとみるのは相当でない。 名古屋高裁の裁判例については、本件と同じく、「手付解除期日(契約日から20日余後)又は相手方が履行に着手するまでは、手付解除できる」とされた契約条文において、売主宅建業者が、同条文の解釈では手付解除はいずれか早い時期までに制限されるとして、手付解除期日前に手付解除を行った買主に対し、契約日2日後の履行の着手を理由に違約金を請求した事案であって、裁判所は契約締結の経緯や手付解除の行使期間等から、当該契約ではいずれか遅い時期までと解釈すべきと判断したものであり、手付解除期日後に解除の申出をした本件と事情が異なるものである。 この名古屋高裁の裁判例を受け、不動産業界団体では、手付解除に関して異なった解釈が発生しないよう、手付解除は相手方が履行に着手していても、手付解除期日までは、解除を行うことができる旨の契約書雛形に変更している。 媒介事業者等におかれては売買契約書等の作成に際して、書式雛形を利用される場合には、書式改正情報等を参考に、最新の書式雛形を使用されるよう留意されたい不動産売買では、代金支払いのために銀行等のローンを利用することは少なくない。そこで、ローン不成立の場合には、買主において売買契約を解除できるとする特約がなされることが多い。本件はローン解除条項の削除について、売主と買主の合意の基に行われたものとして、売主の違約金請求を認めためずらしい事例であり、実務上参考となろう。
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判決の要旨. 裁判所は、次のように判示して、Xの請求を棄却した裁判所は次のように判示して、Xの請求を棄却した。 Xは、XがYに委任したのは、Cがb社に、 b社がa社に順次所有権移転することになっている本件土地に本件根抵当権設定登記の登記申請手続をすることであったから、Yには、委任契約上、Cの登記意思を確認する義務があったと主張し、これを前提にして、原判決の認定・判断を批判している。 しかし、原判決が適切に認定した本件の経緯に照らせば、X・Y間で成立していたのは、 a社が取得した後の本件土地にXを権利者とする本件根抵当権設定登記をするための登記申請手続を行うことを内容とする委任契約であったと認められるのであり、本件土地が、 Cからb社へ、b社からa社へと順次売買されて所有権が移転する土地であったことは、上記委任契約成立の背景事情に過ぎなかったものであり、また、Cからb社への所有権移転登記の申請手続に関しては、D司法書士が受任していたのである(所有者本人の登記意思確認について過失があったとすれば、それは同司法書士の責任である)。 そうすると、何らかの特約のない以上は、 XとYの間の本件の委任契約の内容として、 Yが、a社の前々所有者であるCの登記意思 (Y1らによる詐欺行為の有無) 本件手付条項は、一般的な語義に従うと、 「手付解除期日」と「相手方が本契約の履行に着手する」のいずれかが実現することを期限とするもので、いずれか早い方が期限となると解される本件土地をb社に売却する意思)を確認すること(言い換えれば、C・b社間の売買契 約の有効性を確認すること)が含まれていたということはできないところ、本件では、そのような特約を窺わせるに足りる証拠はない (なお、原判決は、更に進んで、前件の司法書士が作成した本人確認情報について、一見して明白にその適正な作成を疑わせるような事情があるなどの特段の事情の有無についてまで判断しているが、仮にそのような判断が必要であるとの立場をとったとしても、原判決の認定判断に誤りはない)。 Xは、名古屋高等裁判所平成13年3月29日判決が本件手付条項と同一の文言の条項につきXが主張する解釈を採用したと指摘するが、当該判決の解釈は、宅地建物取引業者が売主であるなど、本件とは異なる事情を基礎としているといわざるを得ず、本件手付条項も同様に解釈すべきとは言えないく、これらを棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから棄却する。 また、Xは、不動産業界団体が作成した売買契約書の書式は、上記判決を契機に改訂されているのに、本件売買契約では改訂前の書式が用いられたことから、上記両者のいずれか遅い方の解釈を採用する意図があったとも主張する。しかし、改訂前の文言をそのように解釈すべきか疑問がある上、書式を採用した経緯が証拠上明らかでないから、直ちにそうした意図があったとは推認し得ない。 Xが本件売買契約の解消を申し出たのは手付解除期日後であったから、本件手付条項に基づいて本件売買契約を解除することはできなかったとみるべきである。 (Y2による誠実義務違反の有無) 本件売買契約は、Xが解消を申し出た時点で手付解除し得なかったとみられる。そうすると、手付解除が可能である旨の説明義務が宅地建物取引業者にあるとはいえないのであって、そうした説明義務は生じていない。 また、Y3と転売先との売買契約は、本件売買契約の4週間後に締結されており、その 媒介契約もその頃に締結されたとみられる。そうすると、Y3は、本件売買契約に係る仲介を終えた後にAとの仲介をしたのであって、それぞれの仲介業務が並行して実行されたのでないから、宅建業者Y3がXとAの両方と媒介契約を締結したことが利益相反となるとみるのは相当でない。 名古屋高裁の裁判例については、本件と同じく、「手付解除期日(契約日から20日余後)又は相手方が履行に着手するまでは、手付解除できる」とされた契約条文において、売主宅建業者が、同条文の解釈では手付解除はいずれか早い時期までに制限されるとして、手付解除期日前に手付解除を行った買主に対し、契約日2日後の履行の着手を理由に違約金を請求した事案であって、裁判所は契約締結の経緯や手付解除の行使期間等から、当該契約ではいずれか遅い時期までと解釈すべきと判断したものであり、手付解除期日後に解除の申出をした本件と事情が異なるものである。 この名古屋高裁の裁判例を受け、不動産業界団体では、手付解除に関して異なった解釈が発生しないよう、手付解除は相手方が履行に着手していても、手付解除期日までは、解除を行うことができる旨の契約書雛形に変更している。 媒介事業者等におかれては売買契約書等の作成に際して、書式雛形を利用される場合には、書式改正情報等を参考に、最新の書式雛形を使用されるよう留意されたい不正登記防止申出制度とは、不正な登記がされる差し迫った危険がある場合に、申出から3か月以内に不正な登記がされることを防止するための制度である。この申出をすることにより、申出から3か月以内に登記が申請された場合は、申出人に、当該登記が申請された旨が通知されるので、身に覚えのない登記がされることを防止することができる(法務省HPより)。本件は、C・b社間の取引に何らかの不正があったことから、Cが不正登記防止の申出を行ったものと推測される。不動産取引そのものが争われた事案ではないが、実務の参考になると思われる。
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判決の要旨. 裁判所は、次のように判示して、Xの請求を棄却した裁判所は、次のように判示して、Xの請求を一部認容した。 (Y1らによる詐欺行為の有無Yの説明義務違反の有無) 本件手付条項は、一般的な語義に従うと認定事実によれば、Yは、Xに対し、自ら売主になると告げ、売主の契約上の債務を重畳的に引き受けたこと等が認められる。宅建 業者であるYは、売買契約締結直前まで、事実上売主として振る舞い、XもYが売主であると信じ売買取引に臨んでおり、Yは、売主であった場合と同様の説明義務を負う。 本件不動産で発生する経費は、購入前のXが調査・予測することは容易ではないが、Yは、宅建業者かつ投資用不動産の取扱業者として、専門的な知識を有し、管理業者に問い合わせをする等、容易に調査を行える立場にあった。Xは、賃料額の齟齬を指摘する等、収支や投資リスクに高い関心があり、経費の額に齟齬があれば、関心を寄せていたと推認され、それをYも当然認識しており、宅建業者であるYは、経費の一部である共用部電力使用料金についても、適切な調査を行い、Xに正確な情報を説明する義務を負う。 Yは、転売案件では、Cへ問い合わせをすることで調査は十分であり、これに基づく説明により説明義務違反はない、レントロールには想定を含み、実際と異なる可能性があることを予め断っており、説明不足はない旨主張するが、宅建業者である売主は、所有者であれば当然知っているべき情報について正確な情報を提供すべき義務を負い、その義務の程度は、転売事案か否かによって左右されず、 「手付解除期日」と「相手方が本契約の履行に着手する」のいずれかが実現することを期限とするもので、いずれか早い方が期限となると解される。 Xは、名古屋高等裁判所平成13年3月29日判決が本件手付条項と同一の文言の条項につきXが主張する解釈を採用したと指摘するが、当該判決の解釈は、宅地建物取引業者が売主であるなど、本件とは異なる事情を基礎としているといわざるを得ず、本件手付条項も同様に解釈すべきとは言えない。 また、Xは、不動産業界団体が作成した売買契約書の書式は、上記判決を契機に改訂されているのに、本件売買契約では改訂前の書式が用いられたことから、上記両者のいずれか遅い方の解釈を採用する意図があったとも主張する。しかし、改訂前の文言をそのように解釈すべきか疑問がある上、書式を採用した経緯が証拠上明らかでないから、直ちにそうした意図があったとは推認し得ない。 Xが本件売買契約の解消を申し出たのは手付解除期日後であったから、本件手付条項に基づいて本件売買契約を解除することはできなかったとみるべきであるYは、投資判断の参考としてXに提供するレントロール作成の際には、改めて所有者ないし管理業者に直接問い合わせる等正確な情報を調査すべきである。また、レントロールには正確性について断り書きがあるが、当初から十分な調査をせず、その結果、通常生ずる変動幅とは評価できない程度の乖離を生じ、かつ、そもそも調査結果とも異なる記載をしていた場合にまで、買主がその乖離を受け入れなければならないものではなく、本件不動産の売買で、共用部電力使用料金の誤った情報を提供したことについて、Yには説明義務違反があったと認められる。 (Y2による誠実義務違反の有無Xの損害の有無及び額) 本件売買契約は、Xが解消を申し出た時点で手付解除し得なかったとみられる。そうすると、手付解除が可能である旨の説明義務が宅地建物取引業者にあるとはいえないのであって、そうした説明義務は生じていない将来の共用部電力使用料金は、入居者の設備使用状況等で変動し得るものであり、将来給付の訴えが認められるための要件である賠償内容の確定性の要件を充足するものではなく、本件口頭弁論終結日以降に生ずる損害部分は、訴えを却下すべきものである。 また、Y3と転売先との売買契約は、本件売買契約の4週間後に締結されており、その 媒介契約もその頃に締結されたとみられる。そうすると、Y3は、本件売買契約に係る仲介を終えた後にAとの仲介をしたのであって、それぞれの仲介業務が並行して実行されたのでないから、宅建業者Y3がXとAの両方と媒介契約を締結したことが利益相反となるとみるのは相当でないXは、本件不動産の共用部電力使用料金の差額が損害であると主張するが、Yの説明義務違反の有無にかかわらず、その設備状況から、現時点の同料金が月平均で1万8000円程度であり、X主張の損害は、説明義務違反との因果関係を欠く。また、差額分である月額 1万4000円は、売買価格と比較すると軽微であり、著しく不動産経営に影響を及ぼすとまではいえず、仮にYが正しい情報をXに提供していたとしても、購入自体の取りやめや売買価格減額が確実であるとまで認めることもできないが、本件不動産の経費は、少なくとも適正な投資額としての売買価格決定に影響を与え得る事実ではあり、Xは、正確な情報に基づく意思決定機会を失い、予想していなかった経費負担増が生じたこと、ただしその増額の程度が本件不動産の収支に及ぼす影響は必ずしも大きいとはいえないことを総合考慮すると、慰謝料は10万円と認められる。 名古屋高裁の裁判例については、本件と同じく、「手付解除期日(契約日から20日余後)又は相手方が履行に着手するまでは、手付解除できる」とされた契約条文において、売主宅建業者が、同条文の解釈では手付解除はいずれか早い時期までに制限されるとして、手付解除期日前に手付解除を行った買主に対し、契約日2日後の履行の着手を理由に違約金を請求した事案であって、裁判所は契約締結の経緯や手付解除の行使期間等から、当該契約ではいずれか遅い時期までと解釈すべきと判断したものであり、手付解除期日後に解除の申出をした本件と事情が異なるものである本事例の判示にあるように、宅建業者である売主は、買主に対し、正確な情報を提供して適切に説明すべき業務上の注意義務があるが、転売案件であってもそれを理由にその義務が軽減されることはないと考えられる。 この名古屋高裁の裁判例を受け、不動産業界団体では、手付解除に関して異なった解釈が発生しないよう、手付解除は相手方が履行に着手していても、手付解除期日までは、解除を行うことができる旨の契約書雛形に変更している他に、収益物件の収支に関する説明義務違反により慰謝料が認められた事例として、東京地判 平30・7・11 RETIO112-108があるので参考にされたい。 媒介事業者等におかれては売買契約書等の作成に際して、書式雛形を利用される場合には、書式改正情報等を参考に、最新の書式雛形を使用されるよう留意されたい。不動産媒介業者から紹介を受けたビルに関し、書類の交付確認、雨漏り調査及び特約の説明において、調査・告知義務等の違反により損害を被ったと主張する買主が、媒介業者に対して損害賠償を請求したが、調査・告知義務等の違反はなかったとされ、請求が棄却された事例。(東京地裁 平成30年3月28日判決 ウエストロー・ジャパン)
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Samples: 本件瑕疵担保責任
判決の要旨. 裁判所は、次のように判示して、Xの請求を棄却した裁判所は、次の通り判示し、ⅩのYに対する請求を棄却した。 (Y1らによる詐欺行為の有無本件土地が「宅地」に該当するか) 本件手付条項は、一般的な語義に従うと、 「手付解除期日」と「相手方が本契約の履行に着手する」のいずれかが実現することを期限とするもので、いずれか早い方が期限となると解される本件契約が、宅建業法64条の8第1項所定の宅地建物取引業に関する取引に該当するというためには、本件土地が宅建業法2条1号に定められた「宅地」(建物に敷地に供される土地)に該当することを要する。 Xは、名古屋高等裁判所平成13年3月29日判決が本件手付条項と同一の文言の条項につきXが主張する解釈を採用したと指摘するが、当該判決の解釈は、宅地建物取引業者が売主であるなど、本件とは異なる事情を基礎としているといわざるを得ず、本件手付条項も同様に解釈すべきとは言えないここにいう「建物の敷地に供せられる土地」とは、現に建物の敷地に供せられている土地に限らず、広く建物の敷地に供する目的で取引の対象とされた土地(宅地予定地や宅地見込地)を指し、その地目や現況のいかんを問わないものと解される(最一判昭46.6.17)。そして、土地が建物の敷地に供する目的で取 引の対象とされたか否かは、取引当事者の主観的な目的のほか、取引の目的物である土地の周辺の状況、土地の区画割の有無、区画街路や電気・ガス・上下水道の施設の有無、分譲価格等から総合的、客観的に判断するべきである。 また、Xは、不動産業界団体が作成した売買契約書の書式は、上記判決を契機に改訂されているのに、本件売買契約では改訂前の書式が用いられたことから、上記両者のいずれか遅い方の解釈を採用する意図があったとも主張する。しかし、改訂前の文言をそのように解釈すべきか疑問がある上、書式を採用した経緯が証拠上明らかでないから、直ちにそうした意図があったとは推認し得ないこれを本件についてみると、①本件土地の地目及び現況は山林であり、本件土地は、現に建物の敷地に供せられている土地ではないこと、②本件土地の隣地については、道路と思われる土地に沿って区画割がされているとみる余地はあるものの、隣地のいずれも、現に建物の敷地に供せられてはいないこと、③本件土地は、道路と思われる土地に接していない袋地であり、建物を建築することができない土地であること(建築基準法43条)、④本件土地は、他の土地を経由することなく上下水道、電気、ガス等を引き込むことができない状態であることが認められる。 Xが本件売買契約の解消を申し出たのは手付解除期日後であったから、本件手付条項に基づいて本件売買契約を解除することはできなかったとみるべきである以上の本件土地及びその周辺の客観的状況に照らし、本件土地は、現に建物の敷地に供せられている土地ではないし、また、直ちに建物の敷地に供する目的で取引の対象とされ得る土地であるとも認められない。 他方、認定事実によれば、本件契約書等には、本件契約が宅地建物取引であることを前提とした記載が複数あることは否定できない。 しかしながら、Xは、本件契約締結当時、本件契約書等の内容について説明を受けておらず、自らも本件契約書等の内容を確認しておらず、本件契約が土地の売買契約であること自体の認識を欠いており、本件契約を「悪質不動産業者に騙されたときの保険」であるとの認識の下、本件契約書等に署名・押印をした事実が認められる。したがって、Ⅹには、本件契約が土地の売買契約であるという認識自体なかったのであるから、本件土地を建物 の敷地に供する目的もなかったことが認められる。一方、売主であるAにおいても、Ⅹに対し、本件土地が建物の敷地に供し得る土地であることを前提とした勧誘を行った形跡はない。 そうすると、本件契約の当事者の主観的な目的においても、本件土地を建物の敷地に供する目的で取引の対象としていたとは認められず、本件土地が「宅地」に該当するとはいえない。 (Y2による誠実義務違反の有無結論) 本件売買契約は、Xが解消を申し出た時点で手付解除し得なかったとみられる。そうすると、手付解除が可能である旨の説明義務が宅地建物取引業者にあるとはいえないのであって、そうした説明義務は生じていない以上によれば、本件契約の目的物である本件土地が「宅地」(宅建業法2条1号)に該当するとは認められない以上、本件契約が宅建業法64条の8第1項所定の宅地建物取引業に関する取引に該当するとは認められないから、Ⅹは、Yに対し、Aに対する不当利得返還請求権について、認証を請求することはできない。 また、Y3と転売先との売買契約は、本件売買契約の4週間後に締結されており、その 媒介契約もその頃に締結されたとみられる。そうすると、Y3は、本件売買契約に係る仲介を終えた後にAとの仲介をしたのであって、それぞれの仲介業務が並行して実行されたのでないから、宅建業者Y3がXとAの両方と媒介契約を締結したことが利益相反となるとみるのは相当でない山林売買の取引が、宅建業法に定める宅地の取引に該当するか否かについて、最一判 昭46.6.17の判断を示し、取引対象地の現況、将来利用等の客観的判断と、取引当事者の取引目的等の主観的状況の両面を検討して、該当しないと判断した本件判決は、実務の参考になると思われる。 名古屋高裁の裁判例については、本件と同じく、「手付解除期日(契約日から20日余後)又は相手方が履行に着手するまでは、手付解除できる」とされた契約条文において、売主宅建業者が、同条文の解釈では手付解除はいずれか早い時期までに制限されるとして、手付解除期日前に手付解除を行った買主に対し、契約日2日後の履行の着手を理由に違約金を請求した事案であって、裁判所は契約締結の経緯や手付解除の行使期間等から、当該契約ではいずれか遅い時期までと解釈すべきと判断したものであり、手付解除期日後に解除の申出をした本件と事情が異なるものである。 この名古屋高裁の裁判例を受け、不動産業界団体では、手付解除に関して異なった解釈が発生しないよう、手付解除は相手方が履行に着手していても、手付解除期日までは、解除を行うことができる旨の契約書雛形に変更している。 媒介事業者等におかれては売買契約書等の作成に際して、書式雛形を利用される場合には、書式改正情報等を参考に、最新の書式雛形を使用されるよう留意されたい本件同様、取引の目的等の主観的状況、取引対象地の客観的状況を総合勘案して、売買された山林の取引が、宅建業法上の宅地の取引に該当しないとされた事例として(東京地判 H24.11.26 RETIO90-132) もあるので参 考にしていただきたい。
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判決の要旨. 裁判所は、次のように判示して、Xの請求を棄却した裁判所は、次のとおり判示した。 Xは、Y2との間で本件売買契約をめぐる税務指導契約を締結し、Y2はXから本件報酬金の授受にあたり、報酬内訳を税務指導料とする請求書や領収証の取り交わしをしている。しかし、事実経過に照らすと、XがY 2に交付した本件報酬金は、実際には本件売買契約の情報提供したことに対する紹介金や謝礼金といった性質の金員であり、Y2が作成した請求書や領収書において「税務紹介料」の記載があるのは、宅建業法違反のおそれを回避するための名目上のものに過ぎないと認 められるし、XとY2の間に税務指導契約締結の事実は認められないというべきである。 Ж 本件報酬金は、前記のとおり、Y2の税理士としての業務に支払われたものではないから、本来所得税法204条1項2号の源泉徴収対象となるべき報酬に該当するものとはいえない。したがって、本来であれば、Xにはその源泉徴収義務はなかったことになるから、Y2が、Xに対し、かかる義務の存在を説明すべき法的義務を負うということもできない。 € Y1は、宅建業者としてXとの間で媒介の契約を締結したに過ぎないし、もともと宅建業者たるY1において、その重要事項説明の内容として、Xが負担すべき税金の内容や金額、源泉徴収義務の存否等についてまで、これを調査、報告すべき義務を負うものではない。 税務指導料名目の報酬は、税理士としての業務に関する報酬ではなく、本来であれば Xにその源泉徴収義務はないが、税務署において、これを税理士としての報酬として源泉徴収義務があると認めたことはやむを得ないし、Xが税務署の指導に従って納付した所得税本税70万円は、Y2のための所得税として納付したものというべきである。とすれば、 XによるY2の所得税の納付は、本来その必要性がないものであっても、これによって同額の損失を被った一方、Y2は、原則として同額相当の所得税の支払義務を免れるという利益を得たものと解するべきである。Y2は自ら確定申告に際し本件報酬も収入として適正に申告していると主張するが、それを裏付ける資料の提出に応じなかったこと等から、 Y2の主張は信用することができない。 以上によれば、Y1とY2には、もともとXに対し、訴外外国法人に支払われた本件売買代金、またY2に支払われた本件報酬金 につき、Xにその源泉徴収義務があることを告知すべき契約上の義務も、信義則上その他の法律上の義務もないから、これを告知しなかったことが、Y1らの債務不履行又は不法行為となる余地はなく、XのY1らに対する損害賠償請求はいずれも理由がない。しかし、 Y2は、Xが本件報酬金支払に伴うY2の所得税を納付した結果として、70万円相当の利益を得たものと解すべきであるから、XのY 2に対する前記70万円及び遅延損害金の支払いを求める不当利得返還請求は、その全部について理由がある。 宅建業者の税に関する説明と責任について、宅建業者には、原則として取引関係者に対し、税について説明したり、調査したり、調査の求めに応じる義務はないとする判例 (Y1らによる詐欺行為の有無) 本件手付条項は、一般的な語義に従うと、 「手付解除期日」と「相手方が本契約の履行に着手する」のいずれかが実現することを期限とするもので、いずれか早い方が期限となると解される大阪高判昭49.11.6、東京地判昭49.12.6)がある。 Xは、名古屋高等裁判所平成13年3月29日判決が本件手付条項と同一の文言の条項につきXが主張する解釈を採用したと指摘するが、当該判決の解釈は、宅地建物取引業者が売主であるなど、本件とは異なる事情を基礎としているといわざるを得ず、本件手付条項も同様に解釈すべきとは言えない。 また、Xは、不動産業界団体が作成した売買契約書の書式は、上記判決を契機に改訂されているのに、本件売買契約では改訂前の書式が用いられたことから、上記両者のいずれか遅い方の解釈を採用する意図があったとも主張する。しかし、改訂前の文言をそのように解釈すべきか疑問がある上、書式を採用した経緯が証拠上明らかでないから、直ちにそうした意図があったとは推認し得ない。 Xが本件売買契約の解消を申し出たのは手付解除期日後であったから、本件手付条項に基づいて本件売買契約を解除することはできなかったとみるべきである。 (Y2による誠実義務違反の有無) 本件売買契約は、Xが解消を申し出た時点で手付解除し得なかったとみられる。そうすると、手付解除が可能である旨の説明義務が宅地建物取引業者にあるとはいえないのであって、そうした説明義務は生じていない。 また、Y3と転売先との売買契約は、本件売買契約の4週間後に締結されており、その 媒介契約もその頃に締結されたとみられる。そうすると、Y3は、本件売買契約に係る仲介を終えた後にAとの仲介をしたのであって、それぞれの仲介業務が並行して実行されたのでないから、宅建業者Y3がXとAの両方と媒介契約を締結したことが利益相反となるとみるのは相当でない。 名古屋高裁の裁判例については、本件と同じく、「手付解除期日(契約日から20日余後)又は相手方が履行に着手するまでは、手付解除できる」とされた契約条文において、売主宅建業者が、同条文の解釈では手付解除はいずれか早い時期までに制限されるとして、手付解除期日前に手付解除を行った買主に対し、契約日2日後の履行の着手を理由に違約金を請求した事案であって、裁判所は契約締結の経緯や手付解除の行使期間等から、当該契約ではいずれか遅い時期までと解釈すべきと判断したものであり、手付解除期日後に解除の申出をした本件と事情が異なるものである。 この名古屋高裁の裁判例を受け、不動産業界団体では、手付解除に関して異なった解釈が発生しないよう、手付解除は相手方が履行に着手していても、手付解除期日までは、解除を行うことができる旨の契約書雛形に変更している。 媒介事業者等におかれては売買契約書等の作成に際して、書式雛形を利用される場合には、書式改正情報等を参考に、最新の書式雛形を使用されるよう留意されたい本事例は、外国法人から不動産を譲り受けた場合、源泉徴収義務について媒介業者の説明義務等が争われた事案である。源泉徴収義務がある場合、土地建物等の譲渡対価を支払った月の翌月10日までに納付することが必要で、納付期限を過ぎると、不納付加算税や延滞税の支払い義務が生じることになる。判決にあるように源泉徴収義務について宅建業者に調査や説明義務は原則ないが、国際化の流れの中で、外国法人等所有の不動産取引も今後増加すると思われるので、外国法人等所有の不動産取引を業者として媒介する場合は、買主や売主に源泉徴収義務の可能性があること、買主自ら税務署への照会、又は税理士等に相談すべきことを助言することは必要と思われる。
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判決の要旨. 裁判所は、次のように判示して、Xの請求を棄却した裁判所は、次のとおり判示し、原審の判断を支持し、Xの控訴を棄却した。 (Y1らによる詐欺行為の有無Xは本契約上の義務を履行したか) 本件手付条項は、一般的な語義に従うと、 「手付解除期日」と「相手方が本契約の履行に着手する」のいずれかが実現することを期限とするもので、いずれか早い方が期限となると解される境界確認書にCから署名押印が得られなかったことに争いはないところ、Xは、現にその後にDはこれがない確定測量図により分筆登記が行えていたことからして、本契約上の義務は履行したと主張する。 Xは、名古屋高等裁判所平成13年3月29日判決が本件手付条項と同一の文言の条項につきXが主張する解釈を採用したと指摘するが、当該判決の解釈は、宅地建物取引業者が売主であるなど、本件とは異なる事情を基礎としているといわざるを得ず、本件手付条項も同様に解釈すべきとは言えないしかしながら、本契約において売主である Xは、残代金支払日までに「隣地所有者等の立会を得て」作成された確定測量図をYに交付する旨が定められており、実際に隣地所有者等の立会を経て作成された確定測量図を交付する義務をXは負っていたものといえる。また、仮にCが立会に応じていたとしても、買主は係る事実の有無や、立会の結果、隣地所有者が境界を承諾したか否かを自ら確認することは容易ではないため、「隣地所有者等の立会を得て」というのは、物理的な立会の機会を隣地所有者に与えれば足りるものではなく、書面による承諾を得る義務を課す趣旨であると解すべきである。 また、Xは、不動産業界団体が作成した売買契約書の書式は、上記判決を契機に改訂されているのに、本件売買契約では改訂前の書式が用いられたことから、上記両者のいずれか遅い方の解釈を採用する意図があったとも主張する。しかし、改訂前の文言をそのように解釈すべきか疑問がある上、書式を採用した経緯が証拠上明らかでないから、直ちにそうした意図があったとは推認し得ない解するのが当事者の合理的意志に合致するというべきで、実際にもXは、本契約締結後に C以外の隣地所有者から署名押印がある境界確認書を取得しており、Cからもこれを取得すべく行動しており、これがないままYに残代金の請求をするようになったのは、Bからの説明を受けた後になってからである。 Xが本件売買契約の解消を申し出たのは手付解除期日後であったから、本件手付条項に基づいて本件売買契約を解除することはできなかったとみるべきであるまた、Xは、Yとの売買価格大きく下回る金額で本物件をDに売却しており、現隣地所有者からの境界確認書を取得できないことは、売買価格に影響するものであると考えられる。 (Y2による誠実義務違反の有無結論) 本件売買契約は、Xが解消を申し出た時点で手付解除し得なかったとみられる。そうすると、手付解除が可能である旨の説明義務が宅地建物取引業者にあるとはいえないのであって、そうした説明義務は生じていないよって、Xの控訴を棄却する。 また、Y3と転売先との売買契約は、本件売買契約の4週間後に締結されており、その 媒介契約もその頃に締結されたとみられる。そうすると、Y3は、本件売買契約に係る仲介を終えた後にAとの仲介をしたのであって、それぞれの仲介業務が並行して実行されたのでないから、宅建業者Y3がXとAの両方と媒介契約を締結したことが利益相反となるとみるのは相当でない本件は、法務局での分筆や地積更正登記が可能な確定測量図でも、契約に定められた確定測量図の要件を満たさないとして、買主主張の契約の白紙解除が認められた事例である。 名古屋高裁の裁判例については、本件と同じく、「手付解除期日(契約日から20日余後)又は相手方が履行に着手するまでは、手付解除できる」とされた契約条文において、売主宅建業者が、同条文の解釈では手付解除はいずれか早い時期までに制限されるとして、手付解除期日前に手付解除を行った買主に対し、契約日2日後の履行の着手を理由に違約金を請求した事案であって、裁判所は契約締結の経緯や手付解除の行使期間等から、当該契約ではいずれか遅い時期までと解釈すべきと判断したものであり、手付解除期日後に解除の申出をした本件と事情が異なるものであるひとくちに「測量図」と言っても、隣地所有者の立会を得ないで作成する現況測量図も含め、様々なものがあることから、測量図の作成・交付を売主の義務とする契約を締結する際には、売主はどの様な測量図を交付する必要があるのか、また売主は地積更正登記の責任まで負うのか等について、契約締結時に売主・買主間で認識に齟齬がないように合意をしておく必要があると考えられる。 この名古屋高裁の裁判例を受け、不動産業界団体では、手付解除に関して異なった解釈が発生しないよう、手付解除は相手方が履行に着手していても、手付解除期日までは、解除を行うことができる旨の契約書雛形に変更している。 媒介事業者等におかれては売買契約書等の作成に際して、書式雛形を利用される場合には、書式改正情報等を参考に、最新の書式雛形を使用されるよう留意されたい売主が引渡しまでに地積更正登記をしなかったことは契約の本旨に従った債務の提供にはあたらないとされた事例(東京地判 平22・ 2・26 RETIO79-108)も見られるので、併せて参考にしていただきたい。
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判決の要旨. 裁判所は、次のように判示して、Xの請求を棄却した裁判所は次のように判示し、Xの訴えを一部認容した。 説明義務 宅地の売買においては、建築基準法上の接道関係は、建替えの可否並びに転売の可否及び転売条件等に大きく影響するものである。そして、Y1、Y2(以下「Yら」という)は、いずれも不動産の売買及び仲介を業とする会社であり、宅建業者であるから、まず、 Y1については、本件売買契約の付随義務として、本件土地の接道状況についてXに対し説明する義務があったと言うべきである。 また、Yらは、宅建業者であり、売主及び仲介を業として本件売買契約に関与したものであるから、宅地建物取引業法35条1項により、それぞれ取引主任者をして、Xに対し接道状況について説明すべき義務を負っていたものである。 本件土地は、接道要件を満たしておらず、建替えが困難な土地である。ところが、まず、本件売買契約書には、この点について何ら記載がなく、むしろ、本件重要事項説明書には、本件土地の「北側が幅約6mの公道に約3m接している」旨記載され、「新築時の制限」としては道路斜線制限等が記載されているのみで、接道要件との関係での建築の制限については全く記載されていなかった。そして、Xは本件路地が共有であることについては説明を受けたものの、本件土地が接道要件を満たしておらず、建替えが困難であることについては説明を受けたことがなかった。 前記によれば、Yらには、Xに対する説明義務違反(本件不法行為)があったことが明 らかであって、Yらは、本件不法行為と相当因果関係にあるXの損害について賠償責任 (Y1らによる詐欺行為の有無) 本件手付条項は、一般的な語義に従うと、 「手付解除期日」と「相手方が本契約の履行に着手する」のいずれかが実現することを期限とするもので、いずれか早い方が期限となると解される不真正連帯債務)を負うと言うべきである。 Xは、名古屋高等裁判所平成13年3月29日判決が本件手付条項と同一の文言の条項につきXが主張する解釈を採用したと指摘するが、当該判決の解釈は、宅地建物取引業者が売主であるなど、本件とは異なる事情を基礎としているといわざるを得ず、本件手付条項も同様に解釈すべきとは言えない。 また、Xは、不動産業界団体が作成した売買契約書の書式は、上記判決を契機に改訂されているのに、本件売買契約では改訂前の書式が用いられたことから、上記両者のいずれか遅い方の解釈を採用する意図があったとも主張する。しかし、改訂前の文言をそのように解釈すべきか疑問がある上、書式を採用した経緯が証拠上明らかでないから、直ちにそうした意図があったとは推認し得ない。 Xが本件売買契約の解消を申し出たのは手付解除期日後であったから、本件手付条項に基づいて本件売買契約を解除することはできなかったとみるべきである。 (Y2による誠実義務違反の有無) 本件売買契約は、Xが解消を申し出た時点で手付解除し得なかったとみられる。そうすると、手付解除が可能である旨の説明義務が宅地建物取引業者にあるとはいえないのであって、そうした説明義務は生じていない。 また、Y3と転売先との売買契約は、本件売買契約の4週間後に締結されており、その 媒介契約もその頃に締結されたとみられる。そうすると、Y3は、本件売買契約に係る仲介を終えた後にAとの仲介をしたのであって、それぞれの仲介業務が並行して実行されたのでないから、宅建業者Y3がXとAの両方と媒介契約を締結したことが利益相反となるとみるのは相当でない。 名古屋高裁の裁判例については、本件と同じく、「手付解除期日(契約日から20日余後)又は相手方が履行に着手するまでは、手付解除できる」とされた契約条文において、売主宅建業者が、同条文の解釈では手付解除はいずれか早い時期までに制限されるとして、手付解除期日前に手付解除を行った買主に対し、契約日2日後の履行の着手を理由に違約金を請求した事案であって、裁判所は契約締結の経緯や手付解除の行使期間等から、当該契約ではいずれか遅い時期までと解釈すべきと判断したものであり、手付解除期日後に解除の申出をした本件と事情が異なるものである。 この名古屋高裁の裁判例を受け、不動産業界団体では、手付解除に関して異なった解釈が発生しないよう、手付解除は相手方が履行に着手していても、手付解除期日までは、解除を行うことができる旨の契約書雛形に変更している。 媒介事業者等におかれては売買契約書等の作成に際して、書式雛形を利用される場合には、書式改正情報等を参考に、最新の書式雛形を使用されるよう留意されたいЖ Xの損害について Xは、Yらの不法行為によって、本件土地 の接道状況には問題はなく、建替えが可能である旨誤信させられ、本件売買契約を締結し、本件借入れを行った上、本件売買代金及び本件借入れに係る利息金の支払をするに至ったものと認められるから、これらの金員の出捐は、本件不法行為と相当因果関係にある損害と言うべきである。
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判決の要旨. 裁判所は、次のように判示して、Xの請求を棄却した裁判所は次のように判示して、原告の請求の一部を認容した。 本件解除条項は、同条項に定める事由があった場合には、賃貸人に一方的に賃貸借契約の無催告解除を認めるものであって、民法 541条の適用がされる場合に比べ、消費者である賃借人の権利を制限し、義務を加重するものといえる。よって、本件解除条項は、法 10条前段に該当する。 本件解除条項の中で消費者に関係する、破産、民事再生、競売、仮差押え、仮処分、強制執行の決定又は申立てを受けたときについては、これらの事由に係る手続が、通常、債務者の金銭債務等の履行がされないために、債権者がそれを回収若しくは保全する目的で、又は債務者が債務の清算をする目的で、裁判所に申し立てられ決定される手続であることからすると、同事由は、一般的には、賃借人の経済的破綻を徴表する事由であるといえる。 しかしながら、これらの事由は、本来賃貸借契約から発生する義務違反そのものを理由とするものとはいえず、(中略)これらの事由が発生した場合に、賃借人の賃料債務の不履行がないのに、また、賃料債務の不履行があっても、相当な期間を定めてする催告を経ることなく、又は契約当事者間の信頼関係が破壊されていないにもかかわらず、賃貸人に一方的に解除を認める条項は、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるから、法10条後段に該当するというべきである。 したがって、本件解除条項については、法 12条3項に基づく差止めが認められる。 が、改訂後の本件旧契約書特約事項7項は、家賃保証会社以外の、通常、賃借人との間で一定の信頼関係があると考えられる個人の連帯保証人に対し、上記権限を付与したものであって、その目的は、個人の連帯保証人の賃料支払債務が過大になるのを防止するためであり、当該条項を賃借人が明確に認識した上で契約を締結したものであれば、当該条項が信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するものであるということはできず、法10条に該当するものとは解されない。 いずれの条項についても、法9条又は10条に該当しない。*判断理由省略 3 まとめ 家賃保証会社に契約解除権、明渡し代理権、動産物処分権等を付与する特約は、トラブルの原因になっており、不当条項として禁止すべきである。クリーニング特約については敷金精算で問題になることが多いところ、本件においては、賃借人が床面積の割合に応じて定額のクリーンアップ費用を支払うことが明示されているから、賃借人がその負担を具体的かつ明確に合意していないということにならないのは明らかであり、高額すぎる場合を除き、法10条に反しないとして差止を否認しているが、原状回復特約に係る最高裁平成17年12月16日判決等との関係では議論があるところではないかと思われる。 最近の判例から (Y1らによる詐欺行為の有無東京地判 平26・12・11 ウエストロー・ジャパン) 本件手付条項は、一般的な語義に従うと、 「手付解除期日」と「相手方が本契約の履行に着手する」のいずれかが実現することを期限とするもので、いずれか早い方が期限となると解される。 Xは、名古屋高等裁判所平成13年3月29日判決が本件手付条項と同一の文言の条項につきXが主張する解釈を採用したと指摘するが、当該判決の解釈は、宅地建物取引業者が売主であるなど、本件とは異なる事情を基礎としているといわざるを得ず、本件手付条項も同様に解釈すべきとは言えない。 また、Xは、不動産業界団体が作成した売買契約書の書式は、上記判決を契機に改訂されているのに、本件売買契約では改訂前の書式が用いられたことから、上記両者のいずれか遅い方の解釈を採用する意図があったとも主張する。しかし、改訂前の文言をそのように解釈すべきか疑問がある上、書式を採用した経緯が証拠上明らかでないから、直ちにそうした意図があったとは推認し得ない。 Xが本件売買契約の解消を申し出たのは手付解除期日後であったから、本件手付条項に基づいて本件売買契約を解除することはできなかったとみるべきである。 (Y2による誠実義務違反の有無) 本件売買契約は、Xが解消を申し出た時点で手付解除し得なかったとみられる。そうすると、手付解除が可能である旨の説明義務が宅地建物取引業者にあるとはいえないのであって、そうした説明義務は生じていない。 また、Y3と転売先との売買契約は、本件売買契約の4週間後に締結されており、その 媒介契約もその頃に締結されたとみられる。そうすると、Y3は、本件売買契約に係る仲介を終えた後にAとの仲介をしたのであって、それぞれの仲介業務が並行して実行されたのでないから、宅建業者Y3がXとAの両方と媒介契約を締結したことが利益相反となるとみるのは相当でない。 名古屋高裁の裁判例については、本件と同じく、「手付解除期日(契約日から20日余後)又は相手方が履行に着手するまでは、手付解除できる」とされた契約条文において、売主宅建業者が、同条文の解釈では手付解除はいずれか早い時期までに制限されるとして、手付解除期日前に手付解除を行った買主に対し、契約日2日後の履行の着手を理由に違約金を請求した事案であって、裁判所は契約締結の経緯や手付解除の行使期間等から、当該契約ではいずれか遅い時期までと解釈すべきと判断したものであり、手付解除期日後に解除の申出をした本件と事情が異なるものである。 この名古屋高裁の裁判例を受け、不動産業界団体では、手付解除に関して異なった解釈が発生しないよう、手付解除は相手方が履行に着手していても、手付解除期日までは、解除を行うことができる旨の契約書雛形に変更している。 媒介事業者等におかれては売買契約書等の作成に際して、書式雛形を利用される場合には、書式改正情報等を参考に、最新の書式雛形を使用されるよう留意されたい。松木 美鳥 居住用建物の転貸借関係において、転借人の同居人が当該建物で自殺したため、契約解除後の入居者募集に支障が生じているとして、賃貸人が1年分の賃料と2年分の賃料減額分(50%)の損害賠償を、また転貸人が3年分の利ザヤ相当額をそれぞれ転借人に請求した事案において、転借人の善管注意義務違反を認め、賃貸人及び転貸人の請求を一部認容した事例(東京地裁 平成26年12月11日判決 一部認容 ウエストロー・ジャパン)
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判決の要旨. 裁判所は、次のように判示して、Xの請求を棄却した裁判所は、次のように判示し、Xの請求を却下した。 (Y1らによる詐欺行為の有無) 本件手付条項は、一般的な語義に従うとY1は、本件雨漏り箇所における雨漏りが発生する都度、その補修に要する工事費用の負担に応じ、これを受けて本件合意書1及び 2が締結されたものであるから、本件合意書 2の条項は、Y1における第2修繕に係る費用の負担義務を定めたものと解するのが相当である。 これに対し、Xは、本件合意書1及び2は、 「手付解除期日」と「相手方が本契約の履行に着手する」のいずれかが実現することを期限とするもので、いずれか早い方が期限となると解されるY1において本件雨漏り箇所における雨漏りを完全に修繕する義務を負うことを確認したものであると主張する。しかしながら、各事実に照らすと同主張を直ちに採用することは困難であり、これを的確に裏付ける証拠もなく、同主張は採用できない。なお、Xは、本件合意書2の条項は、本件雨漏り箇所の雨漏りが完全に修繕された後、本件雨漏りと関係のない不具合が生じた場合には、XはY1らに何らの請求をしないという趣旨のものであるとも主張するが、本件合意書2は本件雨漏りに関する合意事項を確認したものであることがその冒頭に明記されていることや、同合意書の条項は本件雨漏りについての円満解決 が図られたことを確認する文言となっていることと整合せず、理由がない。そうすると、第2修繕に係る工事は既に実施され、Y1はその費用負担も済ませているのであるから、本件において、本件合意書2の条項を適用するのを妨げるべき事情は存在しないものというべきである。 Xは、名古屋高等裁判所平成13年3月29日判決が本件手付条項と同一の文言の条項につきXが主張する解釈を採用したと指摘するが、当該判決の解釈は、宅地建物取引業者が売主であるなど、本件とは異なる事情を基礎としているといわざるを得ず、本件手付条項も同様に解釈すべきとは言えない以上の次第であり、本件の各請求は、いずれも、本件合意書の条項において全て解決済みであることが確認された本件雨漏りに関するものであるから、本件の各訴えは、条項で定められた不起訴の合意に反し、訴えの利益を欠くものといわざるを得ない。 また、Xは、不動産業界団体が作成した売買契約書の書式は、上記判決を契機に改訂されているのに、本件売買契約では改訂前の書式が用いられたことから、上記両者のいずれか遅い方の解釈を採用する意図があったとも主張する。しかし、改訂前の文言をそのように解釈すべきか疑問がある上、書式を採用した経緯が証拠上明らかでないから、直ちにそうした意図があったとは推認し得ないよって、本件の各訴えはいずれも不適法であるからこれらを却下することとする。 Xが本件売買契約の解消を申し出たのは手付解除期日後であったから、本件手付条項に基づいて本件売買契約を解除することはできなかったとみるべきである本件は、買主が雨漏りの補修を行う合意があったとして補修費用を求めたが、すべて解決していたとして却下され、その後、控訴したが棄却された事案である。 (Y2による誠実義務違反の有無) 本件売買契約は、Xが解消を申し出た時点で手付解除し得なかったとみられる。そうすると、手付解除が可能である旨の説明義務が宅地建物取引業者にあるとはいえないのであって、そうした説明義務は生じていない売主が外国人等の場合、本来売主が負う契約不適合責任を買主は請求できない場合が考えられるため、媒介業者において、売主が海外に帰国した場合のリスクを考え、それを見越した対応が必要と考えられる。 また、Y3と転売先との売買契約は、本件売買契約の4週間後に締結されており、その 媒介契約もその頃に締結されたとみられる。そうすると、Y3は、本件売買契約に係る仲介を終えた後にAとの仲介をしたのであって、それぞれの仲介業務が並行して実行されたのでないから、宅建業者Y3がXとAの両方と媒介契約を締結したことが利益相反となるとみるのは相当でない。 名古屋高裁の裁判例については、本件と同じく、「手付解除期日(契約日から20日余後)又は相手方が履行に着手するまでは、手付解除できる」とされた契約条文において、売主宅建業者が、同条文の解釈では手付解除はいずれか早い時期までに制限されるとして、手付解除期日前に手付解除を行った買主に対し、契約日2日後の履行の着手を理由に違約金を請求した事案であって、裁判所は契約締結の経緯や手付解除の行使期間等から、当該契約ではいずれか遅い時期までと解釈すべきと判断したものであり、手付解除期日後に解除の申出をした本件と事情が異なるものである。 この名古屋高裁の裁判例を受け、不動産業界団体では、手付解除に関して異なった解釈が発生しないよう、手付解除は相手方が履行に着手していても、手付解除期日までは、解除を行うことができる旨の契約書雛形に変更している。 媒介事業者等におかれては売買契約書等の作成に際して、書式雛形を利用される場合には、書式改正情報等を参考に、最新の書式雛形を使用されるよう留意されたい本件のように、外観だけでは判別できない瑕疵が想定される場合、買主にリスク責任を説明し売買金額にて調整するのか、建物状況調査(インスペクション)を実施した上で既存住宅売買瑕疵保険に加入することで対応するのが望ましいと思われる。
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