調査の背景 样本条款

調査の背景. ミクロネシア連邦の首都が位置するポンペイ州において、物流上の重要な施設はポンペイ港である。近年、ポンペイ港の船舶数は増加傾向にあり、ピーク時には接岸及び航行上で問題が顕在化し始めており、埠頭施設拡張の必要性がいわれている。また、これは無償資金協力により建設された隣接するタカティック漁港を利用する漁船の 航行や接岸・荷揚げ等の問題にも関係する。
調査の背景. サヘル地域の諸国は、度重なる政変・政治危機による権力の空白状況に起因する脆弱なガバナンス、従来から存在した農耕民と牧畜民の土地や水を巡る対立から、コミュニティ間に亀裂と分断が生じ民族間対立が悪化するといった問題を抱えている。また、人口増や気候変動がもたらす失業や食料危機を起因とする深刻な貧困の蔓延や低開発が地域全体の不安定化に大きく影響してきた。これらの問題に加え、近年では過激派勢力の伸張に起因する著しい治安の悪化にも直面している。特にマリ、ブルキナファソ、ニジェールの国境地帯であるLiptako-Gourma地域及びチャド湖流域等、国境を跨ぐ地域において過激派勢力によるテロ攻撃や誘拐事案が頻発しており、各国・地域に難民・IDPを大量に流出し、潜在的に貧困状況にある受け入れ地域の社会経済を更に圧迫している。2020年7月時点のG5サヘル諸国(マリ、ブルキナファソ、ニジェール、モーリタニア、チャド)内の難民数は833,370人、国内避難民(IDP:Internal Displaced Persons)は1,747,523人となり、IDPに関しては1年間で約2.5倍増と急速な状況悪化がうかがえる 。2020年3月以降は新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大に起因する混乱に乗じ、国境地帯の治安当局に対する攻撃が増加している。また、麻薬・武器・人身・金等を取引する越境犯罪集団は、テロ組織に対する資金や人的動員を支えているともいわれている。また、G5サヘル諸国の全人口の1/3を占める若年層に関しては、雇用機会が不安定な状況やコミュニティや家族を守るという大義等、様々な理由のもとで犯罪集団や過激派勢力にリクルートされ、戦闘員または非戦闘員としての活動に加担し、過激化するリスクに晒されている。これらの多様な要因が複雑に関連し合い、各国の都市・地方におけるガバナンスの機能不全や低開発、域内の治安情勢の悪化をもたらしている。 サヘル地域の不安定な情勢の継続は、中東地域や「アフリカの角」をはじめとする東アフリカ地域と並び、ヨーロッパ方面への大規模な難民流出といった影響を及ぼしていることからも、国際的にも支援ニーズが認識されている。これまで、仏を中心としたドナーの支援は治安・軍事関連であったが、より強靭な国家の形成においては、ガバナンスを含めた開発方面でのさらなる支援が必要であるとの認識が浸透してきた。貧困の増大と蔓延、改善されない治安状況に対する国民の失望は社会不満として蓄積され、国内の政情不安にも影響し、外敵の侵入に対する国家と国民のレジリエンス低下を招きうることから、中央及び地方の行政機構を強化し、国民に目を向けた適切な公共サービスを提供する機関として機能化を図ることが必要不可欠である。サヘル危機の根本原因のひとつは、ガバナンスの問題、特に政府と住民間の問題にあるとされ、危機により政府と住民間の溝がより一層深まっている。
調査の背景. サイバーセキュリティを取り巻く環境は、世界的に急速に変化しており、サイバーセキュリティのリスクが甚大化、拡散し、グローバルレベルのものとなっている。2017年の大規模サイバー攻撃(ワナクライ)では全世界で約 80 億ドルに及び被害が発生したといわれており、多くの国において、国家や重要インフラに対する「サイバー攻撃」が現実のものとなり、サイバーセキュリティの確保は途上国のみならずあらゆる国・地域において国家的課題となっている。我が国でも、防衛・インフラ関連産業、衆参両院、中央省庁が相次いでサイバー攻撃を受けた経験等を踏まえ、また、2020 年東京オリンピックに向けて、重要な課題として官民情報連携強化等によるサイバーセキュリティ対策の強化に乗り出している。一方、途上国ではサイバーセキュリティに対し、広範かつ高度な技術を必要とすることから、政策の未整備、不十分なセキュリティ対策等により、対策が脆弱な側面があり、独自での防護体制の整備が難しいことが課題となっている。その結果、各政府機関において、サイバー攻撃によるホームページ乗っ取り、政府システムのダウン、標的型メールによる攻撃等のケースが多発している。さらに途上国のセキュリティの脆弱性が、連鎖的に先進国への脅威になることも懸念されている。 ディジタルバングラデシュを標榜するバングラデシュ共和国(以下、「バングラデシュ」という。)では、国家のサイバーセキュリティ戦略として National Cyber Security Strategy(NCSS)を 2014 年に策定し、当該戦略に基づき、22 の重要情報インフラセクターの指定、政府組織のセキュリティ対策マニュアル( Information Security Manual(GoBISM))の作成、政府 CSIRT となる BGD e-Gov CIRT の立上げ (2016 年)等を行ってきている。 係る状況において、2016 年には、サイバーセキュリティに関する組織設立、セキュリティ監視システム運用チーム立上げ、セキュリティ対策システム実装、サイバー関連法令の確立等を目的とする技術協力プロジェクトの要請がバングラデシュ・コンピュータ評議会(BCC :Bangladesh Computer Council)より提出された。 しかしながら、サイバーセキュリティ分野においては、法令、組織、人材育成等のバランスのとれた強化、及び、官民双方の協力が不可欠であり、また、持続的な支援となるためには先方側で主体的に推し進めるべき取り組みも存在する。そのため、現在のバングラデシュの取組を十分に確認した上で、その優先度を整理し、先方で実施すべき事項及び発注者による支援可能な分野を明らかにする必要がある。よって、同国のサイバーセキュリティに係る包括的な基礎情報の収集を目的とし、本調査を実施する。
調査の背景. バングラデシュは近年 6%程度の経済成長率を維持しており、堅調な経済成長を達成している(IMF、2016 年)。2018 年には国連の基準において、後発開発途上国(Least Developed Country : LDC)の卒業基準を達成した。同国は、2020 年頃まで 7%程度の経済成長率を維持すると予想されており、今後の高度経済成長を実現させるためには、政府投資及び民間投資の増加等が求められている(IMF、2018)。 かかる状況に対し、2014 年 9 月の日本・バングラデシュ首脳会談で合意されたベンガル湾成長地帯構想(Bengal Industrial Growth Belt。以下「BIG-B」という。)に基づき、JICA はコックスバザール県モヘシュカリ・マタバリ地域の港湾開発を含む複合的な地域開発のための基礎情報を収集することを目的に「南部チッタゴン地域総合開発に係る情報収集・確認調査」(2015 年~2016 年)を実施し、同地域における港湾、運輸交通、エネルギー・電力、産業・都市開発の必要性を確認した。その後、「マタバリ港開発事業」(2019~)が開始され将来的に最大 8,000TEU 級の大型コンテナ船を受け入れ可能な同国内初の深海港とダッカ首都圏の電力ニーズの 30%に相当する電力(年間 7,865GWh)を電力供給する発電所が同地域に整備されるなど同国の重要なインフラ拠点として開発が進んでいる。
調査の背景. 経緯 ルワンダはアフリカ大陸の中央部に位置し、周囲をウガンダ、タンザニア、ブルンジ、コンゴ民主共和国に囲まれた内陸国である。資源や産業に乏しいが、国内総生産(GDP)の年平均成長率は約 7%と世界最速水準の高度経済成長を続 け、その著しい経済成長から「アフリカの奇跡」と呼ばれている。ルワンダ政府は、長期開発計画“VISION 2020”において、「ICT(情報通信技術)立国」を政策の主軸に置き、農業依存型経済の脱却から知識集約型経済の確立を掲げ、国家改革戦略“National Strategy for Transformation 2017-2024”においても人的資本の育成と蓄積が知識基盤型社会の発展に不可欠であるとしている。➓育分野は、人的資本育成と蓄積に大きく寄与する分野であり、ルワンダ国➓育省は 5 カ年(2018/19-2022/23)の➓育セクター戦略計画“Education Sector Strategic Plan III” (以下、「ESSP3」とする)を策定し、➓育の質とアクセス改善に向けて施策を進めている。また、中長期的な人的資本開発に重要な分野である 6 歳以下を対象にした Early Childhood Development(以下、「ECD」とする) の開発の重要性も挙げられている。2011 年には、ジェンダー・家族推進省 (Ministry of Gender and Family Promotion (以下、「MIGEPROF」)とする)により政策も策定され、現在、国家 ECD 戦略計画(NECDP、2018-2024)を実施している。 ルワンダの➓育は、2007 年の➓育の無償化をはじめとした様々な施策の結 果、初等➓育の純就学率(NER)は 94.79%と高い数値になっているが、中等➓
調査の背景. 経緯 新型コロナウイルス感染症(以下「COVID-19」という)は、グローバル化を背景に短期間で全世界に拡大、2020 年 9 月末時点で累計感染者は 3,300 万人、死者は 100 万人を超えている。開発途上国での感染拡大が顕著であり、世界的な流行の長期化は日本の経済・社会にも多大な影響を及ぼしている。多くの開発途上国は保健医療体制が脆弱であり、「人間の安全保障 2.0」の具現化と「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現のために、JICA が長年の支援を通じて連帯と信頼関係を築いてきた開発途上国のパートナーや他の開発機関等と協力し、命を守るための支援 を、現場のニーズに応じて迅速かつ効果的に展開することが求められている。 COVID-19 影響下では、多くの国で行動制限措置が取られたことや、院内感染への 恐れから、オンライン診療や入口での発熱検知など医療現場におけるデジタル技術活用へのニーズが一気に高まっており、開発途上国においても例外ではない。日本国内においても、初診は対面を基本としていた厚生労働省も、時限的・特例的な措置として 2020 年 4 月からオンライン診療が初診でも可能とするなど規制緩和策がとられている。医療従事者の感染防止の観点から、隔離ベッドにいる患者のモニタリングや感染疑いのある隔離中の医師とのコミュニケーションなどの対応に、様々なデジタルツールが導入されつつある。 こうした中、感染者が増加する一部の国の中でも通信インフラと医療設備が一定整っていれば、医療 ICT に係る設備やサービスを導入することで、遠隔による感染症診断や治療体制の強化、医療崩壊の防止や医療従事者の感染防止などに寄与できる可能性は多いにある。ただし、医療機関の保有する設備状況や電力や通信等のインフラ状況、また感染状況により国ごとに医療機関のニーズが異なるため、提供可能な技術やサービスと同様に現地のニーズを調査する必要がある。
調査の背景. 独立 100 周年の年に当たる 2045 年に向けて、インドネシア政府は、①人材開発と 科学技術、②持続可能な経済開発、③公平な開発、④強靭な国家とガバナンス、の 4つを柱とする Vision 2045 を掲げており、①では公平な教育の浸透等を通じた更なる人材開発の重要性に言及している。2019 年 4 月の大統領選挙において再選され、2019年~2024 年までの二期目を務めることになったジョコ大統領も、同年 7 月に示した 5 つの重要政策のうち 1 つとして、人材育成を掲げている。現在策定が進められている 次期国家中期開発計画(RPJMN 2020-2024)では、7 つのアジェンダの 1 つとして「質 と競争力のある人的資源の増加」が取り上げられる見込みである。インドネシアは人 的資源の指標である Global Human Capital Index(World Economic Forum, 2017)で は全 130 カ国中、65 位となっており、同じ東南アジア地域のマレーシア(33 位)、 タイ(40 位)と比較するとまだその差は大きい。同 RPJMN 2020-2024 では、市場のニ ーズに合致していない質の低い労働力がインドネシアの生産性と競争力が他国と比 べて遅れている理由とし、職業教育における産業界との連携、高等教育の質の向上を 政策方針・戦略として掲げている。また国内の高等教育の状況を見ると、大学・職業 教育機関(ポリテクニック、以下「ポリテク」)の需要は急速に拡大する一方で、そ の施設整備や特にポリテクにおいては教育の質が追い付いていないことが課題とし て挙げられる1。教育・文化省及び科学・研究省2としても、大学においては生徒急増 による施設の増改築の必要性、またポリテクについては教員能力の不足だけではなく、産業ニーズを踏まえたカリキュラムの制定や機器のアップデートが不足し産業ニー ズと卒業生の能力ギャップにつながっていること等、学校運営上の課題を認識してお り、それらの課題改善に向けた支援の期待が JICA にも寄せられている。 日本政府の対インドネシア共和国国別開発協力方針では、開発課題に位置付ける 「更なる経済成長への支援」を実現するための重点分野の一つとして、「高等教育人材の育成」を掲げている。経済活性化や産業高度化の実現には、それらを担う人材育成のための大学・ポリテク等の高等教育機関を拡充・改善する必要性は高い。かかる状況を踏まえ、高等教育セクター全体の動向(インドネシア政府としての政策の方向性等)およびそれに対する大学・職業教育機関のギャップと支援ニーズを確認・分析し、その上で当該セクターに対する提言、JICA による協力の方向性や具体的な候補案件について検討すべく、基礎情報収集・確認調査を行うものである。
調査の背景. パリ協定締結後、世界的に低・脱炭素社会実現に向けた取り組みが加速化している。国際エネルギー機関(IEA)は、現状の政策を続けた場合のシナリオからパリ協定で合意された CO2 排出量を 2050 年までに達成するためには、再エネ促進によって 32%、省エネ促進によって 37%の貢献が必要と試算している。また、2040 年において全体の発電量のうち 67%を再エネが占めると試算している。このような低炭素社会の実現に向けた資金調達として、グリーンボンドに代表されるグリーンファイナンスが重要な役割を果たし始めている。背景には、気候変動に対するグローバルな危機意識の高まりと、それと関連した ESG 投資やステークホルダー資本主義の台頭、また、国際的な金融環境の変化として、資金供給サイドにある先進国側の低金利政策による余剰資金の発生がある。グリーンファイナンスは、通常のファイナンスよりも期間やリターンが優遇され、事業対象は汚染除去、温室効果ガス排出量削減、エネルギー効率改善、再生可能エネルギーなど環境分野の事業に限定されるのが特徴である。 他方、グリーンファイナンスの多くは、欧米、中国やインド等の一部の新興国・途上国に向けられており、多くの途上国が抱えるインフラ資金需要の充足に貢献できていない。また、今後の途上国の莫大なインフラ資金需要を見ると、グリーンファイナンスの資金ソースの多様化も求められている。このような課題に対応するためには、カントリーリスクや事業リスクの大きな途上国事業におけるリスク低減や分配の促進、並びに、資金ソース側との連携を促す公的金融の役割は大きい。途上国向け資金フローとしては、約 20 年前より民間資金が ODA を逆転し、民間資金が増大していることなどから、開発援助としても XXX による動員・触媒機能が問われている。また、途上国の公的債務の拡大によってソブリンファイナンス自体の拡大も困難になっている。このようなブレンデッドファイナンスの潮流のもと、グリーンファイナンスにおいても開発金融の役割の重要性が増してきていると言える。 日本政府は、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」において、最終到達点としての「脱炭素社会」を掲げ、それを野心的に今世紀後半のできるだけ早期に実現することを目指すこととし、ビジネス主導の国際展開、国際協力を進めていくこととしている。JICA は、気候変動対策事業の方向性として、「自国が決定する貢献(NDC: Nationally Determined Contribution)」及び長期低排出発展戦略等国家レベルの気候変動政策目標を達成するための長期的な絵姿を示すとともに、脱炭素社会実現に向けたトランジション推進のための協力を効果的に行う方針である。特にエネルギー分野については、途上国におけるエネルギー利用の低・脱炭素化を目指すための支援戦略(サブクラスター)を策定し、電力系統システムにおける再生可能エネルギー主力電源化を図るための促進策や系統柔軟性強化、産業分野のみならず社会全体のエネルギー利用効率向上のための低炭素型施設・機器導入普及を図っている。また、開発途上国の持続可能な開発を推進するという責務の下、従来の ODA のみならず、気候変動に係る様々な資金を動員することで、よりインパクトのある開発を追求している。民間資金の動員を念頭においた気候変動対策案件の形成を推進するとともに、ODA 案件との効 果的な相乗効果を追求するため、外部資金の一層の活用に取り組み、また、新たな資金ソースの検討も行っている。 本調査では、低炭素社会の実現に向けた多様な資金の動員を検討するうえで、グリーンファイナンスの動向や特徴を踏まえつつ、途上国のインフラ資金ギャップの解消に貢献するための課題、開発金融機関としての JICA による貢献のあり方について分析を行い、今後の支援戦略や案件形成の指針について検討することを目的とする。なお、本調査では、グリーンファイナンスのうち、対象事業の大部分を占めるエネルギー分野における再エネ(太陽光、風力、地熱)、省エネ、ミニ・オフグリッド事業へのファイナンスを主な調査対象とする。
調査の背景. ミャンマー連邦共和国(以下、「ミャンマー」)の保健医療セクターにおいては、母子保健指標及び感染症に係る指標は改善傾向にあるものの、他ASEAN諸国に比して依然として状況が悪いことに加え、非感染性疾患の死因に占める割合が大きく、二重の疾病負荷を抱えている状況にある。さらに、飢餓に苦しむ世帯の割合の高さや肥満の子供の数の増加など、栄養不良にも直面している。供給面の課題として医療サービスのアクセス・質、国際水準と比して医療従事者の不足、国家総支出に占める保健支出の低さ等があげられる(ミャンマーの保健医療セクターへの予算は漸進的に増加傾向にあるが、国家保健収支は例年赤字を計上し、国家保健支出に対する国民の自己負担の割合が約7割を占める)。需要面の課題として、保健医療サービスに対する知識の不足や、医療保障制度が確立されていないことによる貧困層を中心とした適切な医療サービスの享受が妨げられていること等があげられる。 ミャンマー政府は、こうした状況に対応すべく、国家保健計画(National Health Plan, NHP)を策定し、2030年までのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(以下、「UHC」)達成を掲げ、基礎的保健医療サービスの拡充と国民の経済的負担の軽減を段階的に図っていく方針である。基礎的保健医療サービスの拡充に対しては、保健インフラ整備、保健医療人材育成、サービス提供、保健財政の4つを主な要素としてそれぞれの強化を行っており、経済的負担の軽減に対しては医療保障制度の導入を検討している。保健インフラ整備に関して、医療と地域保健のうち、医療(病院機能)は主として公立の施設が担っており、タウンシップ・ステーション病院が一次医療施設、郡病院が二次医療施設、州・地域総合病院が二次・三次医療施設、大都市主要病院・専門病院が三次医療施設として提供される体制となっている。保健・スポーツ省は病院数及び機能拡充を進め、タウンシップレベル以下には他援助機関の支援が一部入っているものの、依然として各地方のトップリファラル病院として中心的役割を果たす地方拠点病院やファーストリファラルの機能を果たすべきタウンシップ病院の多くは、老朽化に伴い危険な状況にある上、増大する患者数及び変化する疾病負荷に対して適切な医療サービスを提供できていない状況にある。地域保健は、地域保健センター(Rural Health Center, RHC)、地域補助保健センター(Sub-Rural Health Center, SRHC)が担い、その数を増やしアクセス改善を図っているもの、人口2万人を目安にRHC を1ヵ所配置するとのミャンマー側の基準には至っていない。サービス提供に関しては、必須保健サービスパッケージ(Essential Package of Health Services,EPHS)を段階的に拡充する計画(2021年までにBasic EPHS、2026年までにIntermediate EPHS、2030年までにComprehensive EPHSを提供)を立て、その初期段階であるBasic EPHSの内容確定と一部のタウンシップへの提供が開始されているものの、計画期間の終盤を迎えつつある2019年11月時点で依然として大半のタウンシップへの提供が未了となっている。保健人材育成についてもその数は増加傾向にあるものの、限定的な予算配賦に起因して各医療施設に割り当てられた人員数を確保できない状況に直面している。保健財政については、歳出面において、トップダウン型予算配賦によりニーズに合致しない非 効率な予算配分が行われていたことを受け、地域保健計画やタウンシップ保健計画の策定によるボトムアップ型予算計画を推進しているものの、依然としてこれらの計画策定がほとんどすべての地域・州においてなされておらず、また中央・地方各レベルにおける公共財政管理能力の不足等によりその執行率に課題がある。一方で、歳入面について、現在は保健医療経費を税金で賄う「税方式」を採用しているが、財源不足により上述のとおり医療人材不足や患者の自己負担増、低いケアの質につながっている。こうした状況を受け、財源を増やすべくミャンマー政府は「社会保険方式」を採用する方針だが、UHC法やHealth Insurance 法の策定に時間を要し制度整備途上であり、その実現に向けては、健康保険の制度設計や保険料徴収のシステム形成などの政策課題が残されている。以上のことから、地方において中核的役割を果たす拠点病院及び地域保健を担うRHC/SRHCの拡充、UHC達成に向けた基礎保健サービスの拡充促進、それらの安定的提供を支える保健財政の強化が喫緊の課題となっている。 さらに、NHPを構成するプログラムのうち栄養改善は重要課題の一つに位置付けら れており、2017年アウンサンスーチー国家顧問が関係省庁及び開発パートナーを招集し開催した関係者協議をはじめ度重なる関係者協議を経て、Multi Sectoral National Action Plan on Nutrition (MS-NPAN) の策定や National Nutrition Steering Committee (NSGC)の設置が行われ、具体的取組の特定・コスティングの策定は完了しているが、資金的支援を始めとしたそれらの取り組みの実施・促進が今まさに求められている。 我が国は、これまでUHC達成支援に向け、保健システム強化、保健人材育成、感染症対策の3本柱の下、無償資金協力及び技術協力を中心とした支援を長らく行ってきており、カヤ州をモデルサイトとした保健システム強化のほか、地域拠点病院(カヤ州、シャン州、マグウェイ地域、タニンダーリ地域)や新専門病院、RHC/SRHCの整備等の保健インフラ整備や、長期・短期研修による医療従事者の人材育成、主要感染症対策の技術協力等を実施してきている。最近の動きとしては、マグウェイ地域を対象に、国家保健計画...
調査の背景. (1)アフリカ地域経済統合、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の現状・課題及び本事業の位置付け