調査の背景. 経緯 フィリピンでは、観光業は重要産業の一つである。フィリピンの2040年までの長期ビジョン「AmBisyon Natin 2040」では、観光業は投資を促進すべき9つの優先セクターの一つと位置付けられている。また、フィリピン開発計画2017-2022では、現地及び外国投資増加のための手段として位置づけられている。実際に、フィリピンの観光産業は好調であり、フィリピン観光省は、2019年の外国人観光客は826万人で過去最高を記録し、外国人からの観光収入は前年比20.8%増の約1兆30億円であったと発表している。1 世界で6番目に長い海岸線を有するフィリピンにおいては、ビーチエリアは重要な観光資源である。しかしながら、フィリピンでは下水道整備などの環境汚染対策が遅れており、リゾート地の水質汚染は社会問題となっている。フィリピンの下水道及び腐敗槽を利用している人口割合は54%とされているが、実体としては、下水道普及率は4%で、腐敗槽汚泥を安全に回収できている割合はわずか10%と推定されている。2 フィリピン政府は国家汚水汚泥管理プログラム(National Sewerage and Septage Management Program, NSSMP)を策定して主要都市における下水道整備や汚泥処理の導入にかかる目標を設定したり、排水規制を強化したりするなど対策にあたっている。しかしながら、2018年にはボラカイ島のビーチにて水質基準を上回る便性大腸菌数が検出されたことを受け、下水道への未接続や排水規制の非準拠を指摘しつつ、このままでは観光客の増加と共に天然資源を破壊しうるとして、大統領は非常事態宣言を出してボラカイ島への観光目的の渡航を6か月間禁止した。 中部ビサヤ諸島のボホール州は、カルスト地形の山々やフィリピン有数のビーチを有しており、観光業が盛んな地域である。なかでもパングラオ島パングラオ町に位置するアロナビーチは観光客に人気があり、リゾート開発が進んでいる。他方で、当該地域に下水道は整備されておらず、下水は未処理のまま放流されており、腐敗槽汚泥も適切に引き抜きされないまま地下に浸透している懸念がある。2018年2月に大統領がボラカイ島を視察した翌月の3月、環境天然資源省大臣と国家経済開発庁長官がアロナビーチを視察した際には、ボホール州はボラカイの二の舞にならないよう指摘を受けている。 前述のとおり、フィリピンの観光業は好調であり、ボホール州においても外国人観光客は増加している。ボホール州政府は観光客の増加による環境への更なる影響を懸念し、2019年10月、フィリピン政府を通じて、アロナビーチの水質保全及び改善を目的とした下水道整備にかかる無償資金協力を日本政府に要請した。
調査の背景. ネパール連邦民主共和国(以下「ネパール」という。)政府は、同国の開発計画である「第 13 次 3 カ年計画」(2013/14 年~2015/16 年)(An Approach Paper to the Thirteenth Plan)において、2022 年までに後発開発途上国から脱却することを目指し、保健医療セクターの改善に優先的に取り組むこととしている。 係る状況下、ネパールは 2015 年 4 月に大震災を経験し、約 9,000 人の命を失った。同震災によって、一般医療や救急医療体制の改善・強化に加え、災害発生時における医療体制の整備の重要性が再認識され、震災後に策定された「ネパール保健セクター戦略」(2015 年~2020 年)(Nepal Health Sector Strategy)においては、公平な保健サービスデリバリーシステムを通じてすべての人々の健康状況を改善することを目標に掲げつつ、9 つの成果の一つとして、緊急時の保健管理体制の強化
調査の背景. 経緯 新型コロナウイルス感染症(以下「COVID-19」という)は、グローバル化を背景に短期間で全世界に拡大、2020 年 9 月末時点で累計感染者は 3,300 万人、死者は 100 万人を超えている。開発途上国での感染拡大が顕著であり、世界的な流行の長期化は日本の経済・社会にも多大な影響を及ぼしている。多くの開発途上国は保健医療体制が脆弱であり、「人間の安全保障 2.0」の具現化と「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現のために、JICA が長年の支援を通じて連帯と信頼関係を築いてきた開発途上国のパートナーや他の開発機関等と協力し、命を守るための支援 を、現場のニーズに応じて迅速かつ効果的に展開することが求められている。 COVID-19 影響下では、多くの国で行動制限措置が取られたことや、院内感染への 恐れから、オンライン診療や入口での発熱検知など医療現場におけるデジタル技術活用へのニーズが一気に高まっており、開発途上国においても例外ではない。日本国内においても、初診は対面を基本としていた厚生労働省も、時限的・特例的な措置として 2020 年 4 月からオンライン診療が初診でも可能とするなど規制緩和策がとられている。医療従事者の感染防止の観点から、隔離ベッドにいる患者のモニタリングや感染疑いのある隔離中の医師とのコミュニケーションなどの対応に、様々なデジタルツールが導入されつつある。 こうした中、感染者が増加する一部の国の中でも通信インフラと医療設備が一定整っていれば、医療 ICT に係る設備やサービスを導入することで、遠隔による感染症診断や治療体制の強化、医療崩壊の防止や医療従事者の感染防止などに寄与できる可能性は多いにある。ただし、医療機関の保有する設備状況や電力や通信等のインフラ状況、また感染状況により国ごとに医療機関のニーズが異なるため、提供可能な技術やサービスと同様に現地のニーズを調査する必要がある。
調査の背景. バングラデシュは近年 6%程度の経済成長率を維持しており、堅調な経済成長を達成している(IMF、2016 年)。2018 年には国連の基準において、後発開発途上国(Least Developed Country : LDC)の卒業基準を達成した。同国は、2020 年頃まで 7%程度の経済成長率を維持すると予想されており、今後の高度経済成長を実現させるためには、政府投資及び民間投資の増加等が求められている(IMF、2018)。 かかる状況に対し、2014 年 9 月の日本・バングラデシュ首脳会談で合意されたベンガル湾成長地帯構想(Bengal Industrial Growth Belt。以下「BIG-B」という。)に基づき、JICA はコックスバザール県モヘシュカリ・マタバリ地域の港湾開発を含む複合的な地域開発のための基礎情報を収集することを目的に「南部チッタゴン地域総合開発に係る情報収集・確認調査」(2015 年~2016 年)を実施し、同地域における港湾、運輸交通、エネルギー・電力、産業・都市開発の必要性を確認した。その後、「マタバリ港開発事業」(2019~)が開始され将来的に最大 8,000TEU 級の大型コンテナ船を受け入れ可能な同国内初の深海港とダッカ首都圏の電力ニーズの 30%に相当する電力(年間 7,865GWh)を電力供給する発電所が同地域に整備されるなど同国の重要なインフラ拠点として開発が進んでいる。
1、 臨海経済特区2及び住宅関連の開発により発生する水需要が、短期的(2026 年まで)には 61,800 m3/日、長期的(2041年まで)には 194,500 m3/日と推定された。 今後同地域への産業立地の促進とそれに伴う人口増加に向けた対応策として早急な水資源開発が求められている。
調査の背景. ミクロネシア連邦の首都が位置するポンペイ州において、物流上の重要な施設はポンペイ港である。近年、ポンペイ港の船舶数は増加傾向にあり、ピーク時には接岸及び航行上で問題が顕在化し始めており、埠頭施設拡張の必要性がいわれている。また、これは無償資金協力により建設された隣接するタカティック漁港を利用する漁船の 航行や接岸・荷揚げ等の問題にも関係する。
調査の背景. 水資源は生存に必須な生活用水としてのみならず、経済活動を支え、生態系を維持するためにも必要不可欠である。水は限りある資源であり、降雨、河川、地下水等は偏在している一方、人口増加や経済発展に伴い水需要は増加しており、水資源の適切な管理や配分が課題となっている。また、気候変動による洪水、渇水リスクの増加が予測されていることからも、人々の生活、経済活動、生態系の維持のためには、今まで以上の適切な水資源管理が求められている。 本調査の対象であるメコン河は、チベット高原に源を発し、中国西部を南東に流下し、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジアを経て、ベトナムで南シナ海に注ぐ全長 4,200 キロに及ぶ国際河川である。その流域面積は約 795,000km2 で世界 21 位、年間総流出量は 4,750 億 m3 で世界 8 位の規模である。メコン河は、流域の農漁業による食料生産、生活用水や工業用水の水源、舟運などを支え、水力発電においても重要な役割を果たし、地域の人々の生活にとって不可欠な自然環境である。また、世界的にみても生物多様性の高い地域の一つとなっており、メコン河流域で現在確認されている魚種は約 800 種以上と言われている。これらの漁業資源は、流域に住む人々の貴重なタンパク源となっている。 一方、メコン河流域では水力発電を主目的とするダムが多数建設されており、ラオスだけでも 2021 年には支流も含めると水力発電所が 100 か所に達すると見込まれている。中国は 1992 年以来メコン河本流に 6 か所のダムを建設しており、その運用が下流の流量や水位に 影響を与えているとの懸念が広がっている。加えて、ラオスが 2 か所の本流ダムを建設中で あり、これらを含めて 19 か所の本流ダム建設の提案が行われている。これらのダム開発によって、ダムからの放流による洪水の発生、ダムへの貯水による水位の低下、流量変動の平準化による漁業資源への影響、ダムによる魚類の回遊の阻害、ダムへの堆砂と下流への土砂や栄養塩の供給の減少、土砂供給の減少に伴う河岸浸食や海岸浸食、メコンデルタにおける塩水遡上など、様々な環境社会影響が生じていると言われている。よって、これらのダムの運用ルールを定め、関係者の利害を調整しつつ最適な運用を行うことにより、発電量等の経済的便益は享受しつつ、負の環境社会影響は抑制していく総合的な水資源管理が重要となっている。 メコン河の水資源管理については、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムの 4 カ国が「メ コン河流域における持続的開発のための協力合意」を 1995 年に締結し、これを基にメコン河委員会(MRC)を組織した。MRC は本流ダムの環境社会影響を調査する Council Study(2018)を実施するなどの取り組みを行っているが、中国、ミャンマーがメンバーに含まれておらず、各国の利害を調整するメカニズムも必ずしも十分に機能していない。一方、中国政府は、 Lancang Mekong Cooperation(LMC)という MRC メンバー4 か国にミャンマー、中国を加えた新たな枠組みでのイニシアティブを 2016 年から展開しており、2019 年 3 月に策定した “Lancang Mekong Environmental Cooperation Strategy”では、SDGs 達成に向けた地域開発や環境保全の促進等を掲げている。さらに 2009 年に発足した米国主導による Lower Mekong Initiative(LMI)は、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナム、ミャンマー、米国の 6 か国の地域協力のメカニズムとして、環境、連結性、教育、エネルギー安全保障、環境と 水、農業と食糧安全保障の 6 つの柱で活動している。我が国も日本・メコン地域諸国首脳会 議を 2009 年以来毎年開催しており、2018 年に開催された第 10 回首脳会議で採択された東京戦略においても、グリーン・メコンの実現を目標として掲げ、水資源管理の持続可能な利用及び管理の重要性を強調し、MRC のような地域的及び国際的組織との連携にコミットしている。
調査の背景. ❦れまでベトナムでは交通インフラ整備が着実に進められてきたものの、急速な経済成長に伴って予想を上回るスピードで交通需要が増加しており、交通インフラ整備が追いついていない。VITRANSS2(以下参照)最終✲告書によれば2030年にはさらに貨物・旅客それぞれの輸送ニーズが3倍程度増加すると予想されている。持続的な経済成長の促進や国際競争力の強化のため、適切に交通インフラを整備し、人の移動や物流の効率化を進めると共に、人口増加が激しい都市部では交通混雑や大気汚染の課題に対応するために公共交通機関へのシフトを一層進める❦とが喫緊の課題となっている。 過去、JICAはベトナムにおける包括的な運輸交通セクターの開発計画作成に必要な戦略策定を支援するため「ベトナム国運輸交通開発戦略調査(National Transport Strategy Study for the Socialist Republic of Vietnam: VITRANNSS) (1999 -2000 年)」、「ベトナム国持続可能な総合運輸交通開発戦略策定調査 (The Comprehensive Study on the Sustainable Development of Transport System in Vietnam:VITRANSS2)(2007-2010年)」を実施してきた。 ベトナム運輸交通省(Ministry of Transport:MOT)では、VITRANSS2で策定された開発戦略や特定された優先プログラムを基に総合交通セクター戦略及びサブセクター毎の交通開発計画を策定し、優先度の高い案件から交通インフラが整備されてきたが、都市部での交通事故の増加、大気汚染の悪化、地方間の格差拡大、省レベルでの非効率的な地方交通ネットワーク及びサービス、不適切な予算配分など、引き続き課題・問題を抱えている状況である。 現在ベトナム政府は、Planning Law(2017年制定)に基づき、ベトナム初の全国開発計画(National Comprehensive Plan:NCP)策定を目指している。NCPは様々なセクターの開発計画から成っており、MOTは運輸交通セクター部分を主管官庁として策定する❦ととなっている。NCPの運輸交通セクター部分は、既存の総合交通セクター戦略に代わるものと位置付けられている。なお、運輸交通セクターの5つのサブセクター(鉄道・道路・航空・港湾・内陸水運)の開発計画(National Sector Plan:NSP)の策定も、NCPの作業と並行して行う❦ととなっている。❦のような状況下、MOTは、JICAに対し、VITRANSS2をレビューした上で、NCPの運輸交通セクター部分及びNSP作成に必要となるVITRANSS3への支援要請が寄せられた。
調査の背景. トンガ王国(以下、「トンガ」という)は、ポリネシアに位置し、南北約800kmに広がる約170の島々で構成される島嶼国である。人口は約10万人で、その70%が首都ヌクアロファを擁するトンガタプ島に集中している。島々が地理的に散在していることから、空路は同国における重要な移動・輸送の手段となっている。観光や島間・国際通商のみならず社会、教育、医療サービス等の面でも重要な役割を担っており、二つの主要空港(ファアモツ国際空港、ババウ国際空港)がある。
調査の背景. 経緯の確認 本調査に関連し以下の項目に係る現状把握を行う。
1) 社会経済状況、トンガ及びマーシャル諸島政府の国家開発計画、それぞれの国における航空セクターに関する上位計画等を確認し、各空港の位置づけ、開発方針・計画を確認する。
2) 観光等将来の航空需要に影響を及ぼす可能性のあるセクターについて、現状及び今後の計画を把握する。
3) 航空輸送サービス及び航空需要の現状(主要空港の国際・国内線別の旅客数貨物取扱量、発着回数、航空会社、路線、機材等)を把握、分析する。
4) 各空港に就航する航空会社へのヒアリング等を通じ、路線計画、機材計画中長期的な就航計画等を調査する。
5) トンガ社会基盤省(MOI)、トンガ空港公社(TAL)、マーシャル諸島運輸通 信省、マーシャル諸島港湾空港公社(RMIPA)等関連組織の役割を調査し、空 港運営主体であるTAL及びRMIPAについては、財政状況等についても調査する。
6) 現地建設事情(資機材調達事情、現地業者の状況等)について調査する。
調査の背景. (1) アフリカ地域経済統合、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の現状・課題及び本事業の位置付け