予見可能性. (イ) 予見可能性による損害賠償の制限 違反当事者は,契約時に自らの契約違反の結果生じるものと予見すべかりし損害以外については,賠償の責任を負わない(Xxxxxx v. Baxendale, 1854)。
予見可能性. では【甲案】であれば、広告等のうち、どのようなものが勧誘と同視されるかにつき、予見可能性が確保できるだろうか。答えは否である。
予見可能性. 不利益事実の不告知について、「不実告知型」と「不告知型」の 2 類型に分けるとの提案がされている8が、そのような区別は抽象的には観念できたとしても、利益となる旨の告知と不利益事実との「関連性が強い」という基準が曖昧であるため、実際には、どちらにも解釈・主張が可能となる。裁判外の交渉において明確な規範として機能することはあまり期待できない。
予見可能性. 事例 3-2 や 3-3 は、補償する場合をあらかじめ限定したり金額の上限を定めたりせず、
予見可能性. 事業者の予見可能性という観点では、「消費者」の範囲を拡げることには極めて問題が大きい。現状、事業者は、契約の相手方が個人名かどうかという外形基準により、契 約条項や対応を区別している。継続的関係を前提とする相手と、何かあれば取消権を行使するかも知れない相手とでは、情報提供の範囲や程度が大きく異なる。 外形的に判別できない基準(実質的な格差の有無)によって当該契約に適用される規律が変わり得るという状態は、事業者にとっては予見可能性がないということである。特に「形式的には事業者に該当するが、相手方事業者との間に消費者契約に準ずるほどの格差がある場合」という類型には、予見可能性が全くないに等しい。 上記の通り予見可能性が低くなる結果、これまで信頼関係に基づき問題なく行われていた取引が著しく不安定になる。 また、以下例示の通り、定型約款に基づいて多数の相手方と契約する場合は、一律の契約条項を用いることにこそ合理性がある。ある程度客観的な基準を設けたとしても、同じサービスにおいて複数の契約条項を用意しなくてはならないこと自体が不合理であり、非現実的である。 ・ショッピングモールなど取引の場の提供者と出店者(開業準備中の個人を含む)との契約 ・ショッピングサイトと個人アフィリエイトとの契約 ・アプリマーケットと個人アプリ制作者との API ライセンス契約 更に、例えば零細の小売事業者が消費者とみなされる可能性があるとなった場合、それによる取引コスト増加を嫌う大手取引先(製造業者や中間流通業者)から契約を切られたり、事業者であれば購入できるもの(商品や広告等)が購入できないといった不利益を受けたりする恐れがある。事業者間格差の問題は、下請法や独占禁止法、民法の枠組みで検討すべきである。
予見可能性. 事業者の行為規範として機能させるためには、どのような行為が不当で、事業者としてどのような行動が望まれるのかが明確でなくてはならない。悪質でないケースまでが無効や取消とならないよう、合理的に対象を限定できるかという点に疑問が残る。 健全な事業者は、契約締結プロセスに不当性がないことを確保するため、日々悩みつつ、様々な業務フローを模索して手探りで対応している。例えば、一定年齢以上の者と契約する際には家族の承認を必須とする、家族から申し出があれば基本的に解約に応じる等である。しかし、このような対応は、家族間の問題に介入することにもなり、一歩間違えば人権侵害との批判を受けるものである。 会話の中で消費者の精神状態に不安を感じた場合、どのように確認をすれば良いのか。契約を拒否するのが望ましい行動か。その際、消費者本人にどのように理由を説明すべ きか。消費者があくまで契約したいと言った場合には、「契約締結時の判断能力には問 題がない」旨の念書を取れば良いのか。 高齢者等の保護と人権尊重とをどのようにバランスさせるべきかの指針がない状態でリスクを一方的に事業者に負わせることになれば、事業者は、リスクの高い取引を回 避する。すなわち、高齢者等には商品を売らないということにもなりかねない。
予見可能性. 契約条項は正確でなくてはならないため、きちんと書こうとすれば、平易ではなくならざるを得ない場合もある。わかりやすさを優先した場合は、正確でなくなる恐れがある。十分な情報提供と同様、わかりやすさと正確性は実務においては両立が非常に難しい。それは各種法令における法文にも当てはまることである。 望ましいバランスは個別分野によって全く異なり、業種・業態や取引内容に応じて柔軟に対応せざるを得ないものであって、予見可能性のある形で、一般的に「平易明確とは何か」を定めることは不可能である。