政策目的・必要性・有効性. 現行法の定義から外れ、解釈でも対応できない類型に関しては、消費者として保護を及ぼすべき主体と考えるかという価値判断の問題と理解する。こうした個人事業主に対して消費者契約法の規律が及ばないとしても、問題の所在はどこにあり、それらに消費者契約法の規律を及ぼす必要があるのか(社会全体で見た場合誰が幸せになるのか。消費者にとって意味があることか。)について十分なコンセンサスができていない。また、不法行為など、消費者契約法以外の法律の適用によって適当な解決が図られる場合もあると考えられる。 加えて、インターネット関連サービスにおいては、形式的には消費者に当たる個人が入念な調査等を行い事業者に匹敵するほどの情報を得て契約を締結する場合も存在する。実質的な格差に着目すべきとするのであれば、こうした個人は「事業者」に当たるとするのが議論としては一貫しているものの、そのような議論はされておらず、論理一貫していない。 なお、「消費者」概念は、不当勧誘規制だけでなく、不当条項規制の適用の有無を分ける基準である。しかし、挙げられた 11 事例の大半は不当勧誘の事例であり、不当条項規制に与える影響については実質的に何も検討されていない。
政策目的・必要性・有効性. 事例 12〜17 及び 19 は、個別分野の行政規制法やガイドライン等において、情報提供すべき内容や範囲が詳細に定められている事例である。これらに違反し、消費者の被害回復が必要な場合には、裁判において信義則上の義務を介し、適切かつ柔軟な解決がされている。金融商品販売法のように民事効果を定めている個別法もある。
政策目的・必要性・有効性. 事例 23 は平易明確でないことは明らかであるが、規約のわかりにくさは本事例の問 題点の 1 つに過ぎず、他にも行政法違反や契約の無効・取消しを主張できる要素が数多く含まれる悪質な事例である。本件の解決が困難なのは、当該事業者(海外事業者)の所在が不明で、まともに交渉が成立しないという理由であり、平易明確化義務が法定化されたとしても解決には何ら寄与しない。
政策目的・必要性・有効性. 条項使用者不利の原則を明文化しなければ解決不可能な事例や場面が想定できない。
政策目的・必要性・有効性. 消費者基本法第7条第1項には、「消費者は、自ら進んで、その消費生活に関して、必要な知識を修得し、及び必要な情報を収集する等自主的かつ合理的に行動するよう努めなければならない」とされている。消費者契約法第3条第2項における消費者の「情報活用努力義務」と「内容理解努力義務」はここから導き出されたものと理解されるので、当然、維持されるべきである。
政策目的・必要性・有効性. 背景説明として、「様々なインターネットトラブルが発生している」「テレビショッピングやカタログ通販等の通信販売に関するトラブルも増加傾向にある」ことが挙げられている3が、事実認識に疑問がある。 インターネット通販のトラブルとされているものの多くは、海外事業者による模倣品販売など詐欺的なケースであり(別紙 1)、消費者契約法で解決できる問題ではない。テレビショッピングやカタログ通販のトラブルは増えていないことを示すデータ(別紙 2)も参照されたい。 インターネットを含む通信販売は、提供する事業者にとっても、購入する消費者にとっても取引方法の 1 つに過ぎず、他の取引形態と異なる規律を置く必要は基本的にはない。隔地者間取引やネット取引の特性に応じた行為規制及び契約上の規律については、既に特定商取引法や電子消費者契約法において手当済であり、広告に関する景品表示法の規制は、取引形態を問わず同じ基準が適用されている。 ネット上に商品情報が掲載されている状態(事例 1-1 や 1-2)は、スーパーマーケットの店頭に商品やチラシが陳列されているのと同じ状態であり、消費者が、商品パッケージの外側や商品の横に表示された POP 広告を見て、特に店員と会話することなく購入を決めることが「勧誘」に当たらないのであれば、事例 1-1 や 1-2 は、「勧誘」には当たらない。
政策目的・必要性・有効性. 事例 2-1 から 2-3 は、現行法で「断定的判断の提供」と認められていると理解する。
政策目的・必要性・有効性. 故意要件については、事案の内容を踏まえて柔軟に解されている裁判例も少なくないところ、あえて削除する必要性は乏しい。 先行行為要件は、取消権を発動するための要件であるとともに、不利益事実の範囲を確定するという重要な役割があり、削除は認められない。
政策目的・必要性・有効性. 立法事実が指摘されている不実告知との関係で改正が必要であることは理解する。しかし事例 4-8 は、最高裁判例においても、将来の変動が不確実な事項であるとして適用が否定された事例である。将来の変動が不確実な事項についてまで事業者に告知を求 めることは適当ではない。なお、将来の変動が不確実な事項でないような事実については、上記の裁判例も否定したものではなく、現在の「重要事項」を拡大する必要はない。 不利益事実の不告知については立法事実が指摘されていない。 (第 8 回専門調査会【資料 2】より) 事業者が、金の商品先物取引の委託契約の締結を勧誘する際に、東京市場における金の価格が上昇傾向にあることを告げ、この上昇傾向が年内は続くとの自己の相場予測を伝え、金を購入すれば利益を得られる旨説明したが、一方で、将来における金の価 格が暴落する可能性があることを示す事実を告げなかった。
政策目的・必要性・有効性. 執拗な勧誘・威迫等による勧誘で消費者の購入意思決定がゆがめられたという被害が、主に電話勧誘販売と訪問販売の場面で発生しているのであれば、現時点で、一般法であ る消費者契約法に規律を置く必要性は乏しい。特定商取引法の中で、再勧誘禁止規定や クーリングオフとの関係を整理した上で検討すべきである。 不招請勧誘については、どのような事例を対象としたいのかをまず議論すべき。