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調査の背景 のサンプル条項

調査の背景. ケニアは人口約 5,300 万人(世銀予測値、2020 年)、面積 58.3 万km2 であり、国土の約 8 割を乾燥・半乾燥地が占めている。人口増加や経済・社会開発に伴う水需要が増大しており、特に都市部では、上水道サービスの拡充が人口増加による給水需要に追い付いておらず、2018/19 年度の都市部の給水率は約 59%と低い水準にとどまっている(ケニア水道事業監督局(WASREB:Water Services Regulatory Board、2019)。 ケニア政府は国家開発計画Vision2030 にて、2030 年までにすべての住民に安全な水供給と適切な衛生環境の利用アクセスを達成するとしているが、水セクターに配賦されている公的資金は実際に必要な開発資金の 4 割程度しかないと推計されており、新たな資金源の確保が必須となっている。そのため、ケニア政府の政策目標やSDGs 達成には、公的資金に依存するだけでなく、上下水道サービス事業体 (WSP:Water Service Provider)が自立的な経営能力を向上させ、更に、資金調達・動員を図りながら、水道サービスの拡張と改善を進められるようにすることが必須の課題となっている。 WSP は、水法 2016 において、郡(カウンティ)政府の責任の下で、自立的な上下水道施設の事業運営を行うこととされている。しかしながら、人口増加に対応した施設投資ができていないことに加え、高い無収水率や時間給水等により、多くの WSP が料金徴収等の収入により維持管理等の支出を満たすことができていない状況となっている。 一方で、優良な経営状況の一部のWSP では、自立的な水道サービスの拡充や無収水率の削減を進め、市中銀行からの融資を受ける事例も出始めている。ケニアでは WASREB により財務状況を含む各種指標によるWSP の信用格付けが行われてお り、41 のWSP のう➀、27 のWSP がBB 以上に分類されている(WASREB, 2018/19)。但し、長期かつ低利の融資が必要となるWSP のキャッシュフロー上の特徴や、WSP の支払い能力や事業計画の策定・実施能力の不足、金融機関等の水道事業に対する審査経験の不足等により、WSP が市中銀行等から融資を受ける例は依然限定的なものにとどまっている。 他方、近年、民間資金と公的資金を組み合わせたブレンデッド・ファイナンス や、PPP 等による民間資金動員を図る例が、世界各国の都市給水分野でも試行される等、新たな資金調達・動員手法が注目されており、ブレンデッド・ファイナンスに関しては、オランダ企業がケニアでの事業展開を検討する動きがある。 これまでJICA はケニアの都市給水分野において、無償資金協力による上水道施設の拡充等のハード面の支援に加え、技術協力により無収水対策を中心としたソフト面の支援を展開し、水道事業体の経営能力の強化を行ってきた。エンブやメルー等の中核都市にて、料金収入基盤の拡大とサービス向上を促進することにより、水道 事業を成長軌道に乗せたモデル的WSP の形成に貢献した。さらに、無収水対策に係る全国基準の策定支援等を通じ、他地域への普及展開を行ってきている。 しかしながら、WSP のより自立的な水道経営ニーズの高まりや、世界的な新たな資金調達・動員の検討の状況を鑑みれば、JICA としても、WSP の水道事業の拡張や経営能力の強化に対する従来型の協力に加え、WSP の経営能力に応じ、将来的な資金調達・動員を可能にするための自立的かつ持続的なWSP の経営能力向上に係る協力を展開していく必要がある。更には、資金調達・動員シナリオの具体的な実現を促進するための新しい協力アプローチを模索する段階にきているといえる。これら協力を実現するため、資金協力や技術協力をより有効に活用することが必要となっている。
調査の背景. ベトナム社会主義共和国(以下、「ベトナム」という。)は、都市・工業地域水道開発指針「Orientation on Water Supply Development of Urban areas and Industrial Zones in Vietnam up to 2025, Vision2050」にて、2025年までに都市部の水道普及率を100%、24時間給水、無収水率15%以下とする目標を設定しているが、2017年の都市部の水道普及率は約81%(2017 年(出典:Progress on household drinking water, sanitation and hygiene 2000-2017 ( WHO/UNICEF, 2019))であり、更なる水道施設の整備が求められている。加えて、ベトナムの 2016~19年のGDP成長率は年平均7%であり、近年の課題として経済成長に伴う急速な工業化2と都市化3によって増加する水需要に対する水道の整備・更新が挙げられる。 ベトナム政府は 2000 年代以降、官民連携(PPP)に関する法制度整備を進め、 2015 年に水道事業における民間活用の政令が整備された4。その背景には、水道事業を含め採算性のある事業に関しては、公的資金ではなく民間資金での整備、 PPP による整備とする基本方針があり、2015 年以前から用水供給事業等の PPP の事例が確認されている。2021 年 1 月から、政令から PPP 法に格上げされることが決まり、引き続き上水道分野は PPP 対象分野の一つとなっている。5また、近年、インフラ整備の財源を調達するために水道公社の株式会社化と民間への株式売却の事例が多く確認されており、水道事業における施設整備に関し政府の役割は縮小する傾向にある。 JICA の水道分野への支援は、ハノイ、ハイフォン、フエ等に対する無償資金協力や技術協力が行われ、「ドンナイ/バリア・ブンタウ省上水道整備事業」(第 1 期 1998 年、第 2 期 2004 年 L/A)等の円借款も実施された。また、協力準備調査(PPP インフラ事業)が 2010 年に開始されて以降、ベトナムの上水道分野においては 7 件の調査が行われており、本邦企業の関心は高いが、海外投融資につな がった案件は 1 件のみとなっている。 このような状況下、ベトナム政府の政策や本邦企業の関心を踏まえると、水道 施設整備を迅速化するために、JICA が支援する ODA 資金を触媒とした資金調達、或いはPPP による水道施設整備の方策を検討することが必要である。本調査では、ベトナムの人口が一定規模以上の主要都市において資金調達・PPP6の可能性を検討し、現状確認及び問題分析を通じ、今後の上水道分野の協力方針の検討を行う。なお、ベトナムの新型コロナウイルスの陽性事例は、1,096 名(10 月 5 日時点) 2 ベトナムの GDP に占める第二次産業の金額は 373 億ドル(2010 年)から 839 億ドル(2018 年)へと年率 10.5%で増加しており、GDP 以上の伸びを示している。
調査の背景. アフリカ諸国における産業振興・企業成長の主な阻害要因として、①人的資源の不足/高度人材の育成課題、②金融・資本市場の未整備/金融アクセスの欠如などが挙げられている。JICAはアフリカの産業振興を支援するために、これまでにカイゼンの普及を中心とする技術協力を通じて8か国(チュニジア、エチオピア、ケニア、タンザニア、ザンビア、ガーナ、チュニジア、カメルーン)への支援を行い、主に中小企業における人的資源の不足/高度人材の育成課題解決に向けた活動を行ってきた。 これら既存企業への支援に加えて、起業家あるいは起業後間もない企業を支援することによる雇用促進や産業の多様化、ひいてはイノベーション創出効果が指摘されており、SDGsへの貢献の観点からもJICA支援が求められている。しかしながら、起業家にとって、「新たなビジネスモデルを創出し、市場に送り出す」までの創業当初の経営が困難な期間を乗り越えることは難しく、先進国においても技術面(経営支援サービス全般:BDS(Business Development Service))、資金面(補助金、出資、融資等)など様々なスタートアップ支援が整備されている状況にある。他方、アフリカにおいては、起業家を取り巻くエコシステムが成熟しておらず、技術・資金、ネットワーク等のスタートアップ企業の成長に必要な様々な要素が未成熟の状況である。 2020 年1 月にJICAは起業家支援のプログラムを総称してProject NINJA ( Next Innovation with Japan)1とすることを決定し、当該プログラムの下でアフリカを含む各国のスタートアップエコシステムの強化に取り組んでいる。これまでJICAが調査を行ってきた中ではアフリカにおいては起業家の成長を加速化するアクセラレーションプログラムの品質が必ずしも高くなく、同プログラムを経た企業もベンチャーキャピタルからの投資につながっていないことが課題としてあげられている。また、資金面についてもスタートアップ初期段階の支援についてはリスクの高さなどからこれまでJICA資金協力事業の形成には至っておらず、日系ベンチャーキャピタルへの調査委託による情報収集段階であり、更なる取り組みのあり方を検討する必要がある。加えて、2020年に発生した新型コロナは途上国の社会・経済に大きな負担となっており、アフリカ起業家による新たな課題対応の取組が期待されている。以上の状況を踏まえ、本調査を実施することとなった。
調査の背景. バングラデシュ人民共和国(以下「バングラデシュ」という。)では、近年の安定した経済成長や工業化の進展により電力需要が急増している。実際、電力需要は 2020 年から 10 年間に亘り年率約 7.9%の増加(Power System Master Plan 2016、電力エネルギー鉱物資源省)が見込まれる。発電の 6 割を依存する国内産天然ガスの産出量は頭打ちとなり、2018 年からは国産ガスと比較し 5 倍程度高価なLNG の輸入が開始された。一つのエネルギー源に過度に依存した状態は、燃料供給や関連設備に何らかの問題が発生した際に、エネルギー源の供給途絶、それに伴う燃料不足による電力供給力不足や燃料供給コストの高騰というエネルギー安全保障上の問題発生が懸念される。そのため、エネルギー安全保障上、ガスに依存したエネルギー消費構造を多様化していくことが重要な課題となっている。一方、当国は、国土の大部分が海抜 9 m 以下の低地であり水力発電ポテンシャルが極めて限定的であり、人口密度が高く用地取得が容易でないことから大規模な太陽光発電導入適地が限られている等、再生可能エネルギーの導入余地が限定的である。需要増加に対応しつつ、エネルギー源を多様化していく必要性が高い状況下、当国政府は、約 1.5%(2016 年)である設備容量に占める石炭火力発電の割合を、2041年までに約 32%まで高める方針にある(Revisiting Power System Master Plan、2018年)。持続的な経済成長を背景とした旺盛な電力需要増加に応えるための安定的な電力供給と、エネルギー多様化を同時に実現する手段として中期的に石炭火力発電所の導入が不可欠な状況にある。 バングラデシュの国家計画である「第 7 次五か年計画」(2016/17~2020/21 年度)において、不安定な電力供給が経済成長の制約であるとの認識から、電力セクターは最優先セクターとして位置付けられている。また、バングラデシュ政府は、2015 年に Intended Nationally Determined Contributions (INDC)を策定し、その中で定めた目標を達成するため、資金支援があることを条件に全ての新規石炭火力建設において超臨界圧以上の技術を用いることを例示している。日本政府は「第 5 次エネルギー基本計画」 (2018 年 7 月)において、エネルギー安全保障及び経済性の観点から石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国に限り、一定の要件を満たした場合、超々臨界圧以上の石炭火力発電設備の導入を支援することとしており、本事業は日本政府の石炭火力の支援方針とも整合している。また、バングラデシュ政府から累次にわたりフェーズ 2 事業の支援要請が日本政府に対しなされており、同事業はハシナ首相直轄の最重要事業の一つに位置付けられている。 上記背景を踏まえ、本調査は「マタバリ超々臨界圧石炭火力発電事業(フェーズ 2)」 (以下「本事業」という。)に関し、事業目的、概要、事業費、実施体制、スケジュール、運転・維持管理体制、環境社会配慮等、有償資金協力事業として実施するための審査に必要な調査を行うことを目的とし、日本政府の指示に基づき実施するものである。
調査の背景. 昨今世界的に猛威を振るう新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は西バルカン地域の 国々にも例外なく社会的・経済的な影響を及ぼしている。世界銀行のレポートによれば、パンデミックが発生する前から西バルカン地域は保健財政及び保健サービス提供に課題があ り、具体的には保健医療への不十分な公的支出及び利用者の自己負担率の高さや、保健医療サービスの提供体制が域内の疾病傾向に効率的かつ有効に働いていないことが課題とされていた。今回のパンデミックや将来の感染拡大が非感染性疾患を持つ患者の脆弱性を高めることを懸念しており、今後、西バルカン地域の各国政府は、パンデミック対策に必要となる財政持続性と対処技術・能力における危機的なギャップを埋め、ケアの質および保健医療サービス提供の効率と効果を改善する必要があるとしている(世界銀行、2020)。中でもバルカン半島のほぼ中央に位置し、セルビア、北マケドニア、アルバニア、モンテネグロと接するコソボ共和国(以下、コソボ)は、西バルカン地域の中では貧困率が高く、貧困層を含む全国での感染拡大が比較的早く進んでいる。地域の安定化と人間の安全保障の観点から、コソボにおいて今後の COVID-19 を含む感染症の流行を抑えるとともに、流行した場合でも平時の基本的な保健医療サービスが提供でき、かつ全国民が経済的な困難を被ることなくサービスを利用することを可能とする強靭な保健システム(Resilient Health System)を構築することが非常に重要である。 コソボは 2015 年以降の実質 GDP 成長率が 4%前後を推移するなど、西バルカン諸国のなかでも比較的安定した経済成長を続けており、一人あたり国民総所得(GNI per capita)は 2019 年で 4,640 USD(出所:世界銀行)に達し、中進国に位置付けられる。しかしながら、観光収入や海外労働者送金への依存度が高く、また失業率は 2018 年で 29.4%(出所:世界銀行)と高く、さらに非正規雇用の割合も 2018 年第 2 四半期で 79.5%(出所:世界銀行・ウィーン国際経済研究所)と高いなど、外的ショックの影響を受けやすい脆弱な経済・社会構造にある。2017 年の家計調査(コソボ統計局のデータ)によれば、国民の約 18%が絶対的貧困線(一日あたり 1.85EUR)以下、その内 5.2%が極度の絶対的貧困線(一日当たり 1.30EUR)以下の生活をしており、都市・地方間での所得格差に加えて都市内での所得格差も課題である。EU のレポートによれば、人口の約 20%が極度の貧困を理由に保健医療サービスにアクセスできていないと報告されており、すべての人々(特に貧困層・脆弱層)が、十分な質の保健サービスを、必要な時に、負担可能な費用で受けられる状態であるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けた対策は、コソボの持続的な経済成長にとって重要な開発課題となっている。 同国政府は「国家開発戦略 2016-2021」において、持続的な経済発展と EU 加盟を将来的に実現するにあたり人的資本(Human Capital)の育成を戦略目標のトップに掲げている。同戦略に基づく「保健セクター戦略 2017-2021」に沿って、①健康増進(母子保健、感染 症・慢性疾患対策等)、②強制医療保険の導入と持続的な保健財政制度の構築、③保健セクター再編と保健医療施設の機能拡充の実現に向けて包括的な改革を進めているものの、改革は遅々として進んでいない。 コソボでは国内総保健医療支出全体の約 71.1%(2015 年)が公的保健支出で賄われてお り、残り約 3 割は利用者自己負担を主とした民間保健支出に頼らざるを得ない保健財政構造となっている。これは、世界保健機関(WHO)の利用者支出割合の推奨値である 15-20%や EU 平均の約 14%を大きく上回っており、貧困層の保健医療サービスへのアクセスの弊害となっている。そのため、貧困層が負担可能な費用で公的保健医療サービスを利用できる体制づくりが求められており、コソボ政府は世界銀行等のドナーの支援も得ながら強制医療保険制度の導入と貧困層の保険料免除を進めているが、2014 年に医療保険法を制定したものの未 だ実現に至っておらず、公的医療保険制度については西バルカン諸国のなかで最も整備が遅れている。 また保健医療サービスの質の確保も重要な課題である。公的保健支出の約 7 割が人件費を主とした公的保健医療施設の固定費に費やされているため、残り 3 割で医療機材・サービスに係る支出を工面せざるを得ない状況にあり、各保健医療施設が保健医療サービスの質の向上を図れる運営体制づくりが求められている。現在、「成果連動型人頭払い制度」など新しい報酬支払い制度を導入することで、各保健医療施設が政府や医療保険基金から追加収入を得て持続的にサービス向上できるような改革を進めている。また、同国で一か所しかない三次医療施設1に本来二次医療施設で対応されるべき患者が集中しているため、一次・二次医療施設の機能拡充(医療施設・機材の整備、保健医療人材の能力強化等)も急務となっている。機能拡充には院内外の情報連携が必要であり、ルクセンブルク政府等の支援のもと電子カルテ等の保健情報システム(eHIS)の構築にも取り組んでいる。 JICA は対コソボ協力の重点分野の一つに「行政能力の向上と人材育成」を掲げ、2014 年に実施した「コソボ・アルバニア 保健セクター情報収集・確認調査」を通じて保健セクターの概況及び課題ならびに協力の方向性について包括的に整理した。同調査結果を踏まえ、日本政府は無償資金協力(経済社会計画)にて日本製を含む医療機材をコソボの中核的 3 次医療施設であるコソボ大学医療センターに供与しており、年間 2 万人以上の手術が行われる同センターの医療サービスが改善され、コソボの経済社会開発に貢献した。同国の保健省...
調査の背景. サラエボ県中心部はボスニア最大の都市であり(人口約44万人)、周囲を山に囲まれた盆地である。公共交通は、路面電車、トロリーバスなど旧ユーゴスラビア連邦時代のものを多く引き継いでいるが、近年の経済停滞やサラエボ県公共交通公社 (GRAS)の経営難等が原因で、インフラの更新が進んでおらず、サービスレベルが低下している。それに伴い、自家用車利用の増加により、交通渋滞及び大気汚染が深刻な問題となっている。サラエボ県の2020年までの開発計画においては「公共交通」の改善が目標の一つに掲げられており、サラエボ県の公共交通改善、大気汚染改善に対する意向は強い。
調査の背景. バヌアツ共和国(以下、「バヌアツ」という。人口約26万人、総面積約1万2千km2)は、南太平洋西部に位置し、南北約1,200kmに広がる約80の島々で構成される島嶼国である。人口の20%がエファテ島にある首都ポートビラ市及びエスピリッツサント島のルーガンビル市に集中している。 バウアーフィールド国際空港は、首都ポートビラにおける人的・物的交流の中核となる重要な国際空港として位置付けられており、1990年に我が国の無償資金協力にて「バウアーフィールド国際空港ターミナルビル建設施設」(1990年E/N、16.05億円)を実施し、ターミナルビルが整備された。本ターミナルビルは、当初国際線・国内線合わせて約24万人の旅客数を想定して建設されたが、2018年の旅客数は約47万人にまで増加している。就航するフライト数も急増しており、既にターミナル施設はキャパシティを大幅に超えている状態である。 また、同空港は建設後20年を経過していることから、施設の老朽化も喫緊の課題となっている。これに対して、世界銀行は大洋州地域の航空インフラへの投資や航空セクターの改善を目的としたPacific Aviation Investment Program(2019年12月31日終了予定)の一環として、同空港における滑走路改修、エプロン舗装改良、消火救難施設整備等を実施している。また、バヌアツ空港公社(AVL)も自社資金にて旅客ターミナルビルの一部やカーゴ施設の都度改修を行っているものの、著しい老朽化への十分な対応には至っていない。このため、旅客取扱設備の容量不足も相まって、今後の需要増に伴い更なるサービスレベルの低下が懸念される等、現在の国際基準にそぐわない状況となっている。 バヌアツ政府は、我が国に対しターミナル施設(エプロン、誘導路、旅客ターミナルビル、管制塔、消防庁舎、道路・駐車場、空港アクセス道路、航空燃料施設、使用事業用施設、貨物ターミナルビル、格納庫等)の整備支援に係る協力を要望しており、これを受け、当機構は2019年2月、現地調査にて先方政府との協議を行い、ターミナル施設の適正規模への見直しが必要であることを共有した。係る状況から、将来の適切な事業規模の提案及び我が国協力可能性を確認すべく、本調査を実施する。 なお、世界銀行は上記プログラムの中で本空港を含むバヌアツ主要空港のマスタープランを策定済み(2017年)であるが、想定される事業規模が過大となっていると思われることから、本調査のなかで同マスタープランをレビューし、適切な事業規模を検討することが必要である。
調査の背景. 新興国並びに途上国では近年の急速な経済発展に伴い、中央政府の財政安定化が最重要課題の一つと位置付けられている。政府歳入のうち、租税は各国で安定的な収入となっており、公共サービスの対価として税金は重要な役割を果たすが、成長維持のための公共支出の増大により歳出過多となる中、不足する財源を対外借入等の債務に依存した結果、支払能力を上回る債務超過の状態に陥る国も出始めている。さらに、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、世界的に長期間に亘って経済・社会への悪影響が懸念されている。こうした各国の財政状況に鑑み、より健全な財政安定化のための方策として、自己財源である歳入の基盤強化が不可欠である。 歳入源の構成は国ごとに様々であるが、基本的には国税が主たる歳入源となっており、徴税等の税務行政の執行を歳入庁/国税庁や財務省税務局といった税務当局が担う。このため、税務行政を担う税務当局の能力強化が重要となるが、一方で、各国の税務当局は執行にあたり人員不足や業務非効率などの様々な課題を抱えている。例えばモンゴルにおいて、広大な国土を人海戦術でカバーできるだけの職員がおらず、一人で徴収、納税者サービス、税務調査等をこなさなければいけない地方税務署が点在する。モンゴルに限らず、各国の税務当局では予算不足等に伴い常に人員が不足傾向にあるだけでなく、転職が一般的であることもあり、専門人材育成のための研修制度の確立・実施の困難さ、人材流出といった問題も立ちはだかる。また、税務行政の業務フローにおいても非効率な作業が散見される。 かかる状況において、昨今、税務行政においてビッグデータや AI 技術を駆使し、業務改善を行う取り組みが進んでいる。ロボティック・プロセス・オートメーション (RPA)による業務効率化だけでなく、膨大な税務行政データや機械学習技術を用いて、脱税の疑いがある企業を特定するといった先進的な事例2も蓄積されつつある。 JICA はこれまで日本の国税庁の支援を得つつ、アジアを中心に税務行政分野の協力を行ってきた。長年の協力と税務当局自体の努力を通じ着実に執行能力を向上させているものの、上述の課題に取り組むためにより抜本的な解決策を検討する必要がある。昨今のビッグデータ活用を通じた付加価値の創出や業務効率化は、特に上述の課題への糸口となる可能性が高いことから、本調査において税務行政への活用可能性や有用性の検証を行うものである。
調査の背景. ネパールは2015年の震災に伴う一時期の経済停滞期があったものの、順調に経済成長を遂げており、一人当たりGNI(アトラス法)においても2008年から2018年までに430米ドルから970米ドル1まで上昇している。しかし、各産業の一人当たり生産高は農業、工業、サービス業においてそれぞれ599米ドル2,1514米ドル3, 4140米ドル4と南アジア平均(それぞれ1594米ドル, 5976米ドル, 7836 米ドル)と比較して少ない。また、主要な輸出産業がないことなどから、2015年以降は恒常的な経常赤字が続いている。加えて、ネパールでは15-34歳までの若手労働者層を中心に多くの国民が海外で就労しており、外国送金額はGDPの約30%に相当し5FDIの0.5%(2016年)を大きく上回る6。今後、ネパール国政府が農産品の輸出や、繊維業、観光業、IT産業等の促進を目指していく7中で、留学や就労などの海外経験を積んでネパールに帰国する人材(還流人材)が産業振興において大きな役割を果たすことが期待できる。 一方、我が国においては少子高齢化に起因する労働人口減少に伴って人材不足が課題となっている。2019年6月時点で在留ネパール人数は約92,000人、国別で6位に位置しその数は2010年度から上昇傾向にある8。ネパール人を含めた外国籍労働者は、人材不足が続く我が国の産業において既に重要な役割を果たしており、適切な人材マッチングが求められている。 2020年2月から全世界を襲った新型コロナウイルス(COVID-19)の流行は、インドをはじめ湾岸諸国やマレーシア、欧州などに滞在していたネパール人労働者にも大きな影響を与え、職を失くした10万人に及ぶネパール人が帰国を余儀なくされる事態となった。現在、今後数年間にわたってネパール人の海外への再渡航・就労が容易ではない中、深刻なGDPの低下と外貨不足にもつながりかねない危機的な状況となっている。 本調査では、これらの状況を踏まえ、ネパールの中期的な産業振興に貢献するために、ネパール国での成長のポテンシャルがある産業において、留学、技能実習、特定技能、あるいは就労等のために来日し、ネパールに帰国する人材のフローを明らかにし、ネパールの産業人材と日本の産業界とのより効果的なマッチング方法や来日を契機としたネパール人の若者のキャリアパスの実現、およびそのための人材育成支援等の還流人材を活用したネパールの産業育成支援に向けた JICAの協力の方向性を検討するものである。
調査の背景. 新型コロナウイルス感染症(COVID19)への対策、経済への急激な悪影響に対し、短期的な協力を進める必要がある一方、COVID19 の影響は長期間にわたる可能性があり、COVID19 との共存を強いられる可能性が指摘されている。そのため、遠隔授業や日本の給付金の受領手続きのように、先進国を含む世界各国で人との接触を極力避けつつ、必要な公共、民間サービスを、個人個人が確実に受けられることが求められている。 エストニアでは公共サービスを電子化することで、公正な選挙の実施、納税率向上、公共身分証明による経済活動(銀行口座開設、就職、住宅賃貸・購入等)、予防接種等の乳幼児ケア及び義務教 育、汚職防止、治安向上等を実現している。また、日本でもマイナンバーが導入されたが、今回のコロナ禍での現金給付において個人に確実に公的な補助をとどけるうえで、より根本的な国民ID制度整備への期待も高まりつつある。国民IDを整備することは国民の基本的人権を保障し、「人間の安全保障」を推進する、国家及び国民の双方にとって根本的に必要な重要インフラである 。 この問題に対応すべく、2014 年に世界銀行を事務局にして Identification for Development Initiative(以下、「ID4D」)が立ち上がり、途上国における国民 ID に関する情報収集や導入支援、アドバイザリーなどの活動が行われている。ID4D では、国民 ID の導入は SDGs ゴール 16.9 (「2030 年までに、すべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する。」)の達成はもちろんのこと、その他多くのゴールの達成に大いに貢献し得ると位置づけている。 JICA でも 2019 年度に「アフリカ地域におけるデジタル技術を活用した国民 ID システム導入推進にかかる情報収集・確認調査(一般競争入札(総合評価落札方式))」がセネガル、ザンビアを対象に実施され、国民 ID にかかる今後の方策が検討されている。また、ウクライナにおいても「行政サービス向上に向けた電子政府の実現に係る情報収集・確認調査」において同国の国民 ID デジタル化に関連した支援検討に資する調査を実施中である。また、2019 年度に立ち上がった機構理事長発案のデジタルトランスフォーメーション(DX)タスクにおいて電子政府・国民 ID のサブタスクが設置さ れ、本分野における JICA の支援方策が検討されている。 他方、上記のようなサービスを実現するうえで、アフリカのサブサハラ各国により状況が異なっていると考えられ、国民 ID の整備状況のみならず、インターネット等のインフラの整備状況、当該分野を担う人材、手続き等、様々な情報が不足している。具体的には、商業法整備や ICT 人材のような基礎的な環境が整っていない国、ブロードバンド・インターネット、データセンターのような基本インフラが整っていない国、中央政府の電子情報プラットフォームが整っていない国、各種公共サービスのデジタル化が進んでいない国、国民ID の付与が十分でない国等、状況は様々であると推察される。 また、各国での当該分野にかかるドナー、及び民間企業の進出状況も異なっていると考えられ、日本としてデータの共有をどのように行うべきか等課題も多い。これらの課題を踏まえたうえで、適切なアプローチ、連携先を検討する必要がある。 上記を踏まえ、本件対象各国における公共サービスのデジタル化にかかる現況につき、ID4D 等による先行調査結果を十分に踏まえた上で、人材、法制度、インフラ等も含め包括的に最新状況を調査 し、当該分野における将来的なJICA 事業実施を目途とした対象国ごとの支援方針策定に資する基本的な情報収集を行う。