Common use of 判決の要旨 Clause in Contracts

判決の要旨. 裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を全て認容した。 (違約金免除の合意の有無) Yは、①Yの違約金支払いの定めのない本 RETIO. NO.118 2020 年夏号 合意書案をXから受領していたこと、②Xと Yの間で本協定書が締結されたこと、からYの違約金支払い免除についての合意があったと主張する。 たしかに、XからYに本合意書案が送付されたことは認められる。しかしながら、これはあくまでも手付金返還の交渉段階でのXからYへの提案に過ぎないもので、X内部の承認手続も行われていないものであり、Yも認めるとおり、両者で最終合意に至ったものではない。事実、その後、XはYに対して違約金の支払いを求めるに至っている。そうすると、本合意書案の送付があったことをもって、 XとYの間で本契約の違約金支払い免除の合意があったと推認することはできない。 また、本件土地の引渡しが困難になった局面において、本件代替地についての交渉が行われていたことは窺われるが、本協定書に署名のあるBは、Xの親会社の取締役でしかなく、Xの代表権や本協定書の締結権限を有していたと認めることはできない。むしろ、本協定書の作成日である平成29年5月25日の直後である同月31日に、XはYに対して違約金の支払いを求めたことからすれば、本協定書の締結がXの意志によるものであったかも疑問である。なお、仮に本協定書が有効に締結されていたものであったとしても、本協定書締結後にX内部の承認を経て、Yとの正式な売買契約を締結することが予定されていたこと、本件代替地の売買契約締結には至っていないことからすれば、本協定書の締結によって直ちに本件代替地の売買契約の効果が認められるものでもないし、ましてや本契約の違約金の支払い免除について合意されたとみることもできない。

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Samples: 土地売買契約, 土地売買契約

判決の要旨. 裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を全て認容した一部破棄差戻し、一部破棄自判、一部却下(注2)原審判決が、「本件契約が建物賃貸借契約に当たり、これに借地借家法の適用があるという以上、特段の事情のない限り、賃料増減額請求に関する同法32条も本件契約に適用があるというべきである。 本件契約には賃料保証特約が存し、Xの前記賃料減額請求は、同特約による保証賃料額からの減額を求めるものである。借地借家法32条1項は、強行法規であって、賃料保証特約によってその適用を排除することができないものであるから(最高裁昭和28年(オ)第8 61号同31年5月15日第三小法廷判決・民集10巻5号496頁、最高裁昭和54年 違約金免除の合意の有無) Yは、①Yの違約金支払いの定めのない本 RETIO. NO.118 2020 年夏号 合意書案をXから受領していたこと、②Xと Yの間で本協定書が締結されたこと、からYの違約金支払い免除についての合意があったと主張するオ)第593号同56年4月20日第二小法廷判決・民集35巻3号656頁参照),Xは、本件契約に賃料保証特約が存することをもって直ちに保証賃料額からの減額請求を否定されることはないたしかに、XからYに本合意書案が送付されたことは認められる。しかしながら、これはあくまでも手付金返還の交渉段階でのXからYへの提案に過ぎないもので、X内部の承認手続も行われていないものであり、Yも認めるとおり、両者で最終合意に至ったものではない。事実、その後、XはYに対して違約金の支払いを求めるに至っている。そうすると、本合意書案の送付があったことをもって、 XとYの間で本契約の違約金支払い免除の合意があったと推認することはできない。 また、本件土地の引渡しが困難になった局面において、本件代替地についての交渉が行われていたことは窺われるが、本協定書に署名のあるBは、Xの親会社の取締役でしかなく、Xの代表権や本協定書の締結権限を有していたと認めることはできない。むしろ、本協定書の作成日である平成29年5月25日の直後である同月31日に、XはYに対して違約金の支払いを求めたことからすれば、本協定書の締結がXの意志によるものであったかも疑問である。なお、仮に本協定書が有効に締結されていたものであったとしても、本協定書締結後にX内部の承認を経て、Yとの正式な売買契約を締結することが予定されていたこと、本件代替地の売買契約締結には至っていないことからすれば、本協定書の締結によって直ちに本件代替地の売買契約の効果が認められるものでもないし、ましてや本契約の違約金の支払い免除について合意されたとみることもできないところで,本件契約は、不動産賃貸業等を営む会社であるXが、土地所有者であるYの建築したビルにおいて転貸事業を行うことを目的とし、Yに対し一定期間の賃料保証を約し, Yにおいて,この賃料保証等を前提とする収支予測の下に多額の銀行融資を受けてビルを建築した上で締結されたものであり、いわゆるサブリース契約と称されるものの一つである。そして、本件契約は,Xの転貸事業の一部を構成するものであり、それ自体が経済取引であるとみることができるものであり,また、本件契約における賃料保証は、YがXの転貸事業のために多額の資本投下をする前提となったものであって、本件契約の基礎となったものということができる。しかし,このような事情は、本件契約に借地借家法32条が適用されないとする特段の事情ということはできない。また、本件契約に転貸借承継合意が存することによって、Yが解約の自由を有するということはできないし,仮に賃貸人が解約の自由を有するとしても、賃借人の賃料減額請求権の行使が排斥されるということもできない。ただし、賃料減額請求の当否や相当賃料額を判断するに当たっては,賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情を総合考慮すべきであり、特に本件契約においては、上記の賃料保証特約の存在や保証賃料額が決定された事情をも考慮すべきである

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Samples: サブリース契約

判決の要旨. 裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を全て認容した裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を認容した(違約金免除の合意の有無) Yは、①Yの違約金支払いの定めのない本 RETIO. NO.118 2020 年夏号 合意書案をXから受領していたこと、②Xと Yの間で本協定書が締結されたこと、からYの違約金支払い免除についての合意があったと主張する盧 本件建物が一軒家であることは当事者間 に争いがないが、室内で犬猫等の小動物を飼育させるかどうかについては賃貸人、賃借人双方にとって重要な利害があることは常識の範囲に属するものであるところ、建物賃貸借契約書にも小動物の飼育が禁止されていることが明記されていることが明らかであること、Y自身もその嘆願書において、契約時に口頭及び契約書でペット飼育が禁止されている旨告知されていたことを認め、契約違反であるのは確実であり、犬猫ではなく散歩の必要もないので大きな問題になることはないと考えてフェネックギツネの飼育を続けたことを自認していたこと、Xの本件飼育行為停止の要望を聞き入れずにフェネックギツネは家族同然であるとしてその後も本件飼育行為を継続したことが明らかであることなどを、信頼関係が破壊されていたことを窺わせる事情として指摘できるたしかに、XからYに本合意書案が送付されたことは認められる。しかしながら、これはあくまでも手付金返還の交渉段階でのXからYへの提案に過ぎないもので、X内部の承認手続も行われていないものであり、Yも認めるとおり、両者で最終合意に至ったものではない。事実、その後、XはYに対して違約金の支払いを求めるに至っている。そうすると、本合意書案の送付があったことをもって、 XとYの間で本契約の違約金支払い免除の合意があったと推認することはできない盪 他方、本件建物の賃借人募集パンフレットにはY主張どおり動物飼育禁止の条件は記載されていないことが認められる。しかしながら、Yが主張し、述べるところによっても、契約時に動物飼育禁止を伝えられ、本件賃貸借契約の締結を見送る機会もあったものの、既に相当額を仲介業者に支払済みであったので、特約を認識しつつも契約書にそのまま署名捺印したというのであるから、Yが本件飼育行為に及んだことを、Xや仲介業者に責任転嫁して、これを正当化することはできない。蘯 また、Yは、本件飼育行為が問題視される前にXにフェネックギツネを見せたことがある旨主張しているが、フェネックギツネを見せたとされるのは本件飼育行為が判明した平成21年6月8日のことであり、Yが本件建物に住み始めたのは同月初旬のことであって、Xとはその際が初対面であったというのであるから、本件飼育行為についてXに説明したことが信頼関係を維持する方向の事情と なるとはいえないまた、本件土地の引渡しが困難になった局面において、本件代替地についての交渉が行われていたことは窺われるが、本協定書に署名のあるBは、Xの親会社の取締役でしかなく、Xの代表権や本協定書の締結権限を有していたと認めることはできない。むしろ、本協定書の作成日である平成29年5月25日の直後である同月31日に、XはYに対して違約金の支払いを求めたことからすれば、本協定書の締結がXの意志によるものであったかも疑問である。なお、仮に本協定書が有効に締結されていたものであったとしても、本協定書締結後にX内部の承認を経て、Yとの正式な売買契約を締結することが予定されていたこと、本件代替地の売買契約締結には至っていないことからすれば、本協定書の締結によって直ちに本件代替地の売買契約の効果が認められるものでもないし、ましてや本契約の違約金の支払い免除について合意されたとみることもできない盻 さらに、Yは、フェネックギツネの特徴や飼育状況等を縷々主張するが、本件における問題は、どのような動物であれば室内で飼育しても差し支えないかという点ではなく、動物飼育禁止特約の下で動物を室内で飼育することそのものの可否の点にある。Yが長年連れ添ってきたフェネックギツネに愛着を有すること自体は理解できるけれども、一連の Yの行動を全体としてみると、Xの指摘に耳を貸さずに、自己の都合のみを優先させることに終始してきたとみるほかはない。 眈 本件においては、Xが本件賃貸借契約の停止期限付解除の意思表示をした時点で、本件賃貸借契約における当事者間の信頼関係が破壊されているというべきであるから、Xの解除の意思表示は有効であり、よって、Xの請求には理由がある

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Samples: 事務所賃貸借契約

判決の要旨. 裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を全て認容した裁判所は以下のとおり判示して、Xの請求及びYの反訴請求いずれも棄却した(違約金免除の合意の有無●争点1(賃貸借契約が成立したか否か。)盧 確かに、Xは、平成20年10月8日のYからの407万円の送金によって、本件賃貸借契約が成立したとの認識であったと考えられる。 盪 しかし、賃貸借契約については、いったん契約が締結されるとその関係が一定期間継続していくものであり、特に、正規賃料が月額407万円であること、12か月間の固定契約で中途解約が認められないことなど、重要かつ責任重大な内容が規定されている。このような契約については、成立に関して、XとYとの間の強固な合意があったと認められる場合にして初めて成立するものと解すべきである。 が事前に本件賃貸借契約書やその案がYへ示されたことはなく、Yは本件賃貸借契約書に署名捺印をしなかった。また、Xからの書面には本件物件確保には契約書に署名の上、初期契約金の支払いが必要であると記載されており、保証金は初期契約金の一部に過ぎず、 Yによる保証金407万円の送金が本件賃貸借契約締結の意思表示であったとは認めがたい。 蘯 従って、Yには、本件賃貸借契約を締結する意思も行為もなかったと言わざるを得ず、XY間で本件賃貸借契約を成立させるとの強固な合意があったとは認められない。 ●争点2(Yに契約締結上の過失があるか。)盧 確かに、XとYとの間の平成20年9月30日から同年10月10日までの本件物件の賃貸借についての交渉の経過や、XとYの具体的言動をみると、本件賃貸借契約の成立へ向けて XとYとの間では、信頼関係が築かれつつあったといえなくもない。 盪 しかし、Xの事業や営業方法のあり方、本件見積書の有効期限が2週間という短期間で設定されていたこと、YがXに対して他の物件も検討していることを明らかにしていたことなどから、XY間に信頼関係が築かれ、契約締結交渉の成熟度が高くなっており、信義則上の注意義務が発生したと認めるまでには至っていなかったのであり、Yが本件賃貸借契約の締結を一方的に拒絶したとしても、 Yには契約締結上の過失が認められない。 ●争点3(Yの反訴請求:407万円の返還請求の可否/Xによる不法行為の成否Yは、①Yの違約金支払いの定めのない本 RETIO. NO.118 2020 年夏号 合意書案をXから受領していたこと、②Xと Yの間で本協定書が締結されたこと、からYの違約金支払い免除についての合意があったと主張する。 たしかに、XからYに本合意書案が送付されたことは認められる。しかしながら、これはあくまでも手付金返還の交渉段階でのXからYへの提案に過ぎないもので、X内部の承認手続も行われていないものであり、Yも認めるとおり、両者で最終合意に至ったものではない。事実、その後、XはYに対して違約金の支払いを求めるに至っている。そうすると、本合意書案の送付があったことをもって盧 YがXに対し407万円を送金したときXとYの間で本契約の違約金支払い免除の合意があったと推認することはできない。 また、本件土地の引渡しが困難になった局面において、本件代替地についての交渉が行われていたことは窺われるが、本協定書に署名のあるBは、Xの親会社の取締役でしかなく、Xの代表権や本協定書の締結権限を有していたと認めることはできない。むしろ、本協定書の作成日である平成29年5月25日の直後である同月31日に、XはYに対して違約金の支払いを求めたことからすれば、本協定書の締結がXの意志によるものであったかも疑問である。なお、仮に本協定書が有効に締結されていたものであったとしても、本協定書締結後にX内部の承認を経て、Yとの正式な売買契約を締結することが予定されていたこと、本件代替地の売買契約締結には至っていないことからすれば、本協定書の締結によって直ちに本件代替地の売買契約の効果が認められるものでもないし、ましてや本契約の違約金の支払い免除について合意されたとみることもできないXY間で、本件物件を一時押さえ、あるいは、仮押さえするためであるとの合意があったとは認められず、本件賃貸借契約が成立しなかった場合、407万円が返還されるとの合意は少なくともなかったというべきである

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Samples: 事務所賃貸借契約

判決の要旨. 裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を全て認容した裁判所は、次の通り判示して、Ⅹの請求を棄却した(違約金免除の合意の有無) Yは、①Yの違約金支払いの定めのない本 RETIO. NO.118 2020 年夏号 合意書案をXから受領していたこと、②Xと Yの間で本協定書が締結されたこと、からYの違約金支払い免除についての合意があったと主張する本件登記手続等の不履行は、Yらではなく、 A社らの違法行為によりもたらされたものであり、第三者の行為による債務不履行といえる。そして、第三者の行為であって、債務者に予見可能性及び結果回避可能性がない場合は、その債務不履行責任を債務者に帰責することはできないものと解されるたしかに、XからYに本合意書案が送付されたことは認められる。しかしながら、これはあくまでも手付金返還の交渉段階でのXからYへの提案に過ぎないもので、X内部の承認手続も行われていないものであり、Yも認めるとおり、両者で最終合意に至ったものではない。事実、その後、XはYに対して違約金の支払いを求めるに至っている。そうすると、本合意書案の送付があったことをもって、 XとYの間で本契約の違約金支払い免除の合意があったと推認することはできない本件登記手続については、不動産登記法23条2項に基づく旧住所宛の通知は、移転先の住所に転送されないように転送不可の取扱いによる郵便によって行われるので、登記簿記載の旧住所に送付された郵便は、移転先の住所に転送されることはないから、その郵便を Y2は受け取ることは出来ず、Yらには、本件登記の予見可能性及び結果回避可能性は認められないまた、本件土地の引渡しが困難になった局面において、本件代替地についての交渉が行われていたことは窺われるが、本協定書に署名のあるBは、Xの親会社の取締役でしかなく、Xの代表権や本協定書の締結権限を有していたと認めることはできない。むしろ、本協定書の作成日である平成29年5月25日の直後である同月31日に、XはYに対して違約金の支払いを求めたことからすれば、本協定書の締結がXの意志によるものであったかも疑問である。なお、仮に本協定書が有効に締結されていたものであったとしても、本協定書締結後にX内部の承認を経て、Yとの正式な売買契約を締結することが予定されていたこと、本件代替地の売買契約締結には至っていないことからすれば、本協定書の締結によって直ちに本件代替地の売買契約の効果が認められるものでもないし、ましてや本契約の違約金の支払い免除について合意されたとみることもできないYらは、A社等への登記手続が判明した後、直ちに本件不動産の処分禁止仮処分申立てをしたが、Yらが法的手続を通じて、本件売買契約の引渡日ないしXが催告した期限までに本件不動産の移転登記手続を履行するのは不可能であったことが認められる。 Xが、決済日が経過した後に、Yらの所有権移転登記手続抹消請求訴訟の結果を待たずして、Yらに債務の履行を催告した上で、本件売買契約を解除することも、契約の拘束からの早期離脱として許容されると解されるが、Yらが所有権移転登記手続を期限までになすことが不可能であった以上、Yらの引渡義務の不履行についての善管注意義務違反は、上記のXの履行催告を満たすことができないという結果には影響が及ばず、よって、本件売買契約の債務不履行について、Yらに帰責性を認めることはできないので、Xの違 約金の請求は認められない。 も理由がないから棄却する

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Samples: 売買契約

判決の要旨. 裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を全て認容した裁判所は、次のように判示し、原判決を破棄し、第1審判決を取り消し、Yの請求を棄却した(違約金免除の合意の有無) Yは、①Yの違約金支払いの定めのない本 RETIO. NO.118 2020 年夏号 合意書案をXから受領していたこと、②Xと Yの間で本協定書が締結されたこと、からYの違約金支払い免除についての合意があったと主張する期間の定めがある建物の賃貸借につき契約の更新がないこととする旨の定めは、公正証書による等書面によって契約をする場合に限りすることができ(借地借家法38条1項)、賃貸人は、あらかじめ、賃借人に対し、当該賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについ 物賃貸借に係る契約の締結に先立って、賃借人になろうとする者に対し、契約の更新がなく期間の満了により終了することを理解させ、当該契約を締結するか否かの意思決定のために十分な情報を提供することのみならず、説明においても更に書面の交付を要求することで契約の更新の有無に関する紛争の発生を未然に防止することにあるものと解される。同条2項は、定期建物賃貸借に係る契約の締結に先立って、賃貸人において、契約書とは別個に、契約の更新がなく期間の満了により終了することについて記載した書面を交付した上、その旨を説明すべきものとしたことが明らかである。紛争の発生を未然に防止しようとする同項の趣旨を考慮すると、上記書面の交付を要するか否かについては、契約の締結に至る経緯、契約の内容についての賃借人の認識の有無及び程度等といった個別具体的事情を考慮することなく、形式的、画一的に取り扱うのが相当であるたしかに、XからYに本合意書案が送付されたことは認められる。しかしながら、これはあくまでも手付金返還の交渉段階でのXからYへの提案に過ぎないもので、X内部の承認手続も行われていないものであり、Yも認めるとおり、両者で最終合意に至ったものではない。事実、その後、XはYに対して違約金の支払いを求めるに至っている。そうすると、本合意書案の送付があったことをもって、 XとYの間で本契約の違約金支払い免除の合意があったと推認することはできないしたがって、法38条2項所定の書面は、賃借人が、当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず、契約書とは別個独立の書面であることを要するというべきであるまた、本件土地の引渡しが困難になった局面において、本件代替地についての交渉が行われていたことは窺われるが、本協定書に署名のあるBは、Xの親会社の取締役でしかなく、Xの代表権や本協定書の締結権限を有していたと認めることはできない。むしろ、本協定書の作成日である平成29年5月25日の直後である同月31日に、XはYに対して違約金の支払いを求めたことからすれば、本協定書の締結がXの意志によるものであったかも疑問である。なお、仮に本協定書が有効に締結されていたものであったとしても、本協定書締結後にX内部の承認を経て、Yとの正式な売買契約を締結することが予定されていたこと、本件代替地の売買契約締結には至っていないことからすれば、本協定書の締結によって直ちに本件代替地の売買契約の効果が認められるものでもないし、ましてや本契約の違約金の支払い免除について合意されたとみることもできない本件契約書の原案が契約書とは別個独立の書面であるということはできず、他にYがXに書面を交付して説明したことはうかがわれない。なお、Xによる本件定期借家条項の無効の主張が信義則に反するとまで評価し得るような事情があるともうかがわれない。 そうすると、本件定期借家条項は無効とい うべきであるから、本件賃貸借は、定期建物賃貸借に当たらず、約定期間の経過後、期間の定めがない賃貸借として更新されたこととなる(法26条1項)

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Samples: 定期借家契約

判決の要旨. 裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を全て認容した裁判所は以下のように判示し、Xの請求を一部認容した(違約金免除の合意の有無) Yは、①Yの違約金支払いの定めのない本 RETIO. NO.118 2020 年夏号 合意書案をXから受領していたこと、②Xと Yの間で本協定書が締結されたこと、からYの違約金支払い免除についての合意があったと主張する盧 XとYが賃貸借契約を締結したかについては、本件賃貸借契約が、賃料及び共益費を合計すると月額3,000万円を超え、敷金総額も4億円近い取引であって、合意も書面を作成してなされるのが通常である。Yには本件申込書をXに交付しただけで契約を成立させる意思はなかったといわざるをえない。したがって、賃貸借契約書が作成されていない本件においては、いまだXと Yの間で賃貸借契約が成立したとは認められないたしかに、XからYに本合意書案が送付されたことは認められる。しかしながら、これはあくまでも手付金返還の交渉段階でのXからYへの提案に過ぎないもので、X内部の承認手続も行われていないものであり、Yも認めるとおり、両者で最終合意に至ったものではない。事実、その後、XはYに対して違約金の支払いを求めるに至っている。そうすると、本合意書案の送付があったことをもって、 XとYの間で本契約の違約金支払い免除の合意があったと推認することはできない盪 次にYの契約締結上の過失の存在につい ては、平成15年12月の段階でXとYは契約の準備段階に入ったといわざるをえない。そうするとXが賃貸借契約を結べるものと信じて行動することが、Yには容易に予想できるものであり、YはXの契約締結上の利益を侵害しないように行動すべき義務を負う。会長が承諾しないことは正当な理由とは認められず、YはXに対して損害賠償義務を免れないまた、本件土地の引渡しが困難になった局面において、本件代替地についての交渉が行われていたことは窺われるが、本協定書に署名のあるBは、Xの親会社の取締役でしかなく、Xの代表権や本協定書の締結権限を有していたと認めることはできない。むしろ、本協定書の作成日である平成29年5月25日の直後である同月31日に、XはYに対して違約金の支払いを求めたことからすれば、本協定書の締結がXの意志によるものであったかも疑問である。なお、仮に本協定書が有効に締結されていたものであったとしても、本協定書締結後にX内部の承認を経て、Yとの正式な売買契約を締結することが予定されていたこと、本件代替地の売買契約締結には至っていないことからすれば、本協定書の締結によって直ちに本件代替地の売買契約の効果が認められるものでもないし、ましてや本契約の違約金の支払い免除について合意されたとみることもできない蘯 次にXの損害額について、損害賠償の範囲は、契約が履行されると信じたために失った別の取引による得べかりし利益まで信頼利益に含むと解するのが相当であり、Yは、平成15年12月からXが新たな賃借人と賃貸借契約を結ぶことができた平成16年6月末までの期間について、共益費を除いた実質賃料月額約2,322万円の損害賠償義務を負う。 盻 最後に過失相殺については、XとYの交渉経過に照らすと、交渉が長引いたのはYに責任があり、交渉断念に至ったのもYの内部事情に尽きる。したがってXに対し過失相殺をする理由はない。 眈 よって、Xの賃貸借契約の成立を前提とする請求は理由がないので棄却することとし、契約締結上の過失を前提とする請求はこれを一部認容することとする

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Samples: 賃貸借契約

判決の要旨. 裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を全て認容した裁判所は次のとおり判示した。 1 本件建物の外装、内装とXの承諾 Xは、外装、内装の大幅な変更につき、不 動産業者Bに苦情を述べたことが認められる し、外装及び内装の変更についての苦情を強く求めなかったからといってそのことをXが承諾したということはできない。以上によれば、本件建物の外装及び内装につき、Xの承諾は存しなかったということができる。 2 信頼関係を破壊するような事情の存在 ・Yは、平成16年暮れころから平成18年初めまでの間、店舗内の暖房として、本件賃貸借契約では使用を禁止されている石油ストーブを使用していたこと、Aの指摘により、使用が中止されたことが認められる(違約金免除の合意の有無) Yは、①Yの違約金支払いの定めのない本 RETIO. NO.118 2020 年夏号 合意書案をXから受領していたこと、②Xと Yの間で本協定書が締結されたこと、からYの違約金支払い免除についての合意があったと主張する・本件賃貸借契約上、営業時間が午前3時までと明記されていること、Yは、週に2回程度の頻度で、午前3時以降も営業を続けることがあったこと、そのため、Xは、平成19年 12月11日、平成20年4月30日、同年7月16日に警察を呼んで、Yに契約を遵守するように注意をしてもらったことが認められる。Xが本件建物の2階に居住していることを考慮すると、深夜3時以降も営業をされることによる影響は小さくないと推認できるたしかに、XからYに本合意書案が送付されたことは認められる。しかしながら、これはあくまでも手付金返還の交渉段階でのXからYへの提案に過ぎないもので、X内部の承認手続も行われていないものであり、Yも認めるとおり、両者で最終合意に至ったものではない。事実、その後、XはYに対して違約金の支払いを求めるに至っている。そうすると、本合意書案の送付があったことをもって・Aは、平成17年11月ころ、Yに対し、店舗前面の本件木枠が公道に約30cmほどはみだしていることを指摘し、本件木枠の撤去を求めたこと、Yはこれに対し、本件木枠も店舗の一部であるとしてこれを拒絶したこと、AはYに対し、少なくとも本件木枠の引き出し部分は下げてほしいことを伝え、Yがこれを承諾したこと、その後も本件木枠は残されたままであったが、平成20年1月に撤去したことが認められる。 本件賃貸借契約の契約書では、特記事項として「安易に移動不可能なものをおいてはならない」と明記されているのであり、XはYから話は出たが、きちんとした説明ではなくXとYの間で本契約の違約金支払い免除の合意があったと推認することはできないXとしては、閉店後には店内に収納できるものを考えていたことが認められ、これらの事実からすると、Xが本件木枠の設置を承諾し ていたとはいい得ないまた、本件土地の引渡しが困難になった局面において、本件代替地についての交渉が行われていたことは窺われるが、本協定書に署名のあるBは、Xの親会社の取締役でしかなく、Xの代表権や本協定書の締結権限を有していたと認めることはできない。むしろ、本協定書の作成日である平成29年5月25日の直後である同月31日に、XはYに対して違約金の支払いを求めたことからすれば、本協定書の締結がXの意志によるものであったかも疑問である。なお、仮に本協定書が有効に締結されていたものであったとしても、本協定書締結後にX内部の承認を経て、Yとの正式な売買契約を締結することが予定されていたこと、本件代替地の売買契約締結には至っていないことからすれば、本協定書の締結によって直ちに本件代替地の売買契約の効果が認められるものでもないし、ましてや本契約の違約金の支払い免除について合意されたとみることもできない・本件賃貸借契約の契約書では、Xの書面による承諾なく、本件建物を第三者に使用させてはならない旨の規定があるにもかかわらず、平成17年10月ころ、ランチの営業時間に、店内において、友人のCに雑貨販売業を行わせ、これは平成18年9月まで続いた。 ・以上の事実によれば、Yは、本件賃貸借契約の契約書を読んでおらず、Xに十分な説明もしないで、本件建物の使用を行っており、外装及び内装の変更のほか、上記のような各種契約違反行為を行ったものであり、遅くとも、Xが平成19年5月29日に解除の意思表示をするまでには、XとY間の信頼関係は破壊されていたということができる 3 賃料相当損害金の支払いの是非 Yは、口頭弁論終結に至るまで、賃料(賃 料相当損害金)の支払を欠かさず行っていることが認められるのであり、Xの請求のうち賃料相当損害金の支払を求める部分は理由がない。

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Samples: 事務所賃貸借契約

判決の要旨. 裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を全て認容した裁判所は、次のとおり判示した(違約金免除の合意の有無) Yは、①Yの違約金支払いの定めのない本 RETIO. NO.118 2020 年夏号 合意書案をXから受領していたこと、②Xと Yの間で本協定書が締結されたこと、からYの違約金支払い免除についての合意があったと主張する盧 原判決にある「事実及び理由」を引用して、AとYとは内縁関係にあったものと判断するたしかに、XからYに本合意書案が送付されたことは認められる。しかしながら、これはあくまでも手付金返還の交渉段階でのXからYへの提案に過ぎないもので、X内部の承認手続も行われていないものであり、Yも認めるとおり、両者で最終合意に至ったものではない。事実、その後、XはYに対して違約金の支払いを求めるに至っている。そうすると、本合意書案の送付があったことをもって盪 Yは、Aとの間でYが死亡するまで本件建物を無償で使用できる旨の使用貸借契約を黙示的に締結した旨主張する。YがAの愛人、内縁の妻として40年もの長きにわたりAに尽くし、十分に経済的な基盤も有しない状態であったから、Aが行く末を案じ住処を確保してやりたいと考えることは極めて自然なことである。そして、Aは、平成16年頃Xをわざわざ本件建物に呼び出し、同行したXの夫や Y及びYの兄夫婦の前で、Xに対し、Aにもしものことがあったら、Yに本件建物をやり、そこに死ぬまでそのまま住まわせて、1500万円を渡してほしい旨申し渡していること等から、AがYを死ぬまで無償で本件建物に住み続けさせる意思を有していたものと優に認めることができ、他方、Yにおいても、そのようなAの意向を拒否する理由は全くないと認められるとして、本件の申渡しのあった平成 16年頃には、AとYとの間で、黙示的に、Y 主張の使用貸借契約が成立していたものと認めるのが相当である。 蘯 これに対し、Xは、本件使用貸借の契約成立を否認し、その理由として、Aが本件建物をYに遺贈したり、Yへの所有権移転登記もせず、本件建物の占有権限に係る契約書等の書面も何ら作成していないことを指摘する。確かに本件使用貸借契約を書面化することは行われていないものの、AとYが親密な関係にあったことからすると、あえて書面化までしないことは十分考えられる。そしてXとYの間で本契約の違約金支払い免除の合意があったと推認することはできないAは自身の意向をX側に何回も伝えており、 XもAの意向を認識していたから、Aが、Xとの関係でも、Yによる死亡までの使用貸借の限りでは、あえて書面化まで必要であると考えていなかったとしても、格別不合理ではない。また、Aが生前Yに本件建物の登記名義を移転したり、これを遺贈しなかったことは、AがXにも一人娘として愛情を抱いていたため、Yが死ぬまで本件建物をその住処と承諾する反面、本件建物の所有権まではYに移転せず、いずれYの死亡した段階でXに本件建物の完全な所有権を取得させたい意向を有し、AなりにXとYとの間の本件建物を巡る利害関係を調整した結果であるとみることができる。よって、Xが指摘する上記事実が、前記盪の認定を左右するものではないまた、本件土地の引渡しが困難になった局面において、本件代替地についての交渉が行われていたことは窺われるが、本協定書に署名のあるBは、Xの親会社の取締役でしかなく、Xの代表権や本協定書の締結権限を有していたと認めることはできない。むしろ、本協定書の作成日である平成29年5月25日の直後である同月31日に、XはYに対して違約金の支払いを求めたことからすれば、本協定書の締結がXの意志によるものであったかも疑問である。なお、仮に本協定書が有効に締結されていたものであったとしても、本協定書締結後にX内部の承認を経て、Yとの正式な売買契約を締結することが予定されていたこと、本件代替地の売買契約締結には至っていないことからすれば、本協定書の締結によって直ちに本件代替地の売買契約の効果が認められるものでもないし、ましてや本契約の違約金の支払い免除について合意されたとみることもできない以上によると、Yは本件建物について本件使用貸借契約に基づく占有権限を有するから、XのYに対する本件建物の明渡請求及び賃料相当損害金請求は、いずれも理由がないため棄却する。 盻 YはAの預金口座から金員(800万円)の払い戻しを行い、その払戻金を取得する権限を有していた。よって、XからのYについての不法行為及び不当利得に基づく請求はいずれも理由がないため棄却する

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Samples: 事務所賃貸借契約

判決の要旨. 裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を全て認容した裁判所は次のとおり判示し、Xの請求の一部を認容した。 (違約金免除の合意の有無賃貸人の修繕義務についてYは、①Yの違約金支払いの定めのない本 RETIO. NO.118 2020 年夏号 合意書案をXから受領していたこと、②Xと Yの間で本協定書が締結されたこと、からYの違約金支払い免除についての合意があったと主張する本件事故の後は、浴室内の外にある冷蔵庫まで汚水が付着したことが認められ、2度目の事故の後は、ユニットバスから溢れ出たと思われる排水が室内全体に広がっている状態で居室内の大部分にわたって浸水したことが認められ、Yは、少なくとも本件居室のクリーニング義務を負うというべきであるたしかに、XからYに本合意書案が送付されたことは認められる。しかしながら、これはあくまでも手付金返還の交渉段階でのXからYへの提案に過ぎないもので、X内部の承認手続も行われていないものであり、Yも認めるとおり、両者で最終合意に至ったものではない。事実、その後、XはYに対して違約金の支払いを求めるに至っている。そうすると、本合意書案の送付があったことをもって修繕義務については、民法606条の解釈として、経済的ないし取引上の観点からみて不能な場合に修繕義務はないと解される。しかし、Yが代表である管理組合は、調査会社に調査を依頼し、平成29年8月15日に高圧洗浄により錆ゴミの除去を行い、その後、共用の排水管工事が行われたことから、修繕が不能 な場合に当たるとはいえない。 また、賃貸人は、賃貸借契約に基づき、賃借人に賃貸借契約の目的物を使用収益させる債務を負っており、その債務を履行できない場合には損害賠償義務を負う。その場合に、賃貸借契約の目的物とは別の同種、同等の代替物を使用収益させる義務まで負うとはいえないため、Yは、仮住まいの手配すべき債務を負うとはいえない。 (賃借人の損害について) 本件居室は、本件事故の後には居住に適した状態になかったこと、すなわち、その使用収益が社会通念上全面的に不能となっていたこと、それにもかかわらず、Yがクリーニング義務を怠った上、Yが支払い義務を負うXの仮住まい費用について、平成29年10月分以降の支払いを拒絶するなど、Xは転居せざるを得なくなったことから、平成29年10月28日、賃料1か月8万6324円の新居に転居したことが認められる。Xは、平成22年から本件居室に居住していたことから、本件事故がなければ、その後も相当の期間にわたって本件居室に居住していたことが推認できる。よってXとYの間で本契約の違約金支払い免除の合意があったと推認することはできない。 また、本件土地の引渡しが困難になった局面において、本件代替地についての交渉が行われていたことは窺われるが、本協定書に署名のあるBは、Xの親会社の取締役でしかなく、Xの代表権や本協定書の締結権限を有していたと認めることはできない。むしろ、本協定書の作成日である平成29年5月25日の直後である同月31日に、XはYに対して違約金の支払いを求めたことからすれば、本協定書の締結がXの意志によるものであったかも疑問である。なお、仮に本協定書が有効に締結されていたものであったとしても、本協定書締結後にX内部の承認を経て、Yとの正式な売買契約を締結することが予定されていたこと、本件代替地の売買契約締結には至っていないことからすれば、本協定書の締結によって直ちに本件代替地の売買契約の効果が認められるものでもないし、ましてや本契約の違約金の支払い免除について合意されたとみることもできないXが請求する新家賃の差額については、Yの債務不履行と相当因果関係のある損害である。さらに、Xは、転居に当たり、礼金、仲介手数料、保証料等を支出したことが認められ、これらもYの債務不履行と相当因果関係のある損害である。Yは、Xの転居先が上質であることから、家賃の差額について債務不履行と因果関係のない損害であると主張するが、証拠によれば、本件居室と大差のない、ほぼ同等の物件である。転居費用についても、単身の転居のため、より低額の転居費で転居できたなどと主張するが、転居作業を依頼した引越し業者は大手であり、その費用が不相当に高額であると認める証拠もないため、Yの主張は採用できない

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Samples: 賃貸借契約

判決の要旨. 裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を全て認容したAとX社との間で、Aの勤務シフトについて、本件排便障害等を理由として勤務配慮を行うことが労働契約1における労働条件として黙示的に合意されていたと認めるのが相当である(違約金免除の合意の有無) Yは、①Yの違約金支払いの定めのない本 RETIO. NO.118 2020 年夏号 合意書案をXから受領していたこと、②Xと Yの間で本協定書が締結されたこと、からYの違約金支払い免除についての合意があったと主張する• X社が会社分割に当たって行った手続は、Y社に承継される自動車運送事業に主として従事する労働者であるAに対し、(略)X社との間の従前の労働契約をそのままY社に承継させるという選択肢はなく、そのような選択が可能であるとの説明もなかったたしかに、XからYに本合意書案が送付されたことは認められる。しかしながら、これはあくまでも手付金返還の交渉段階でのXからYへの提案に過ぎないもので、X内部の承認手続も行われていないものであり、Yも認めるとおり、両者で最終合意に至ったものではない。事実、その後、XはYに対して違約金の支払いを求めるに至っている。そうすると、本合意書案の送付があったことをもって、 XとYの間で本契約の違約金支払い免除の合意があったと推認することはできない本件分割契約では、X社が自動車運送事業に主として従事する労働者と締結した労働契約はいずれも Y社に承継されないこととされたが、X社は、Aに対し、承継法2条1項所定の通知の手続を行わず、本件労働契約1がY社に承継されないことについて同法4条1項に基づく異議を申し出る機会があることを知らせなかったまた、本件土地の引渡しが困難になった局面において、本件代替地についての交渉が行われていたことは窺われるが、本協定書に署名のあるBは、Xの親会社の取締役でしかなく、Xの代表権や本協定書の締結権限を有していたと認めることはできない。むしろ、本協定書の作成日である平成29年5月25日の直後である同月31日に、XはYに対して違約金の支払いを求めたことからすれば、本協定書の締結がXの意志によるものであったかも疑問である。なお、仮に本協定書が有効に締結されていたものであったとしても、本協定書締結後にX内部の承認を経て、Yとの正式な売買契約を締結することが予定されていたこと、本件代替地の売買契約締結には至っていないことからすれば、本協定書の締結によって直ちに本件代替地の売買契約の効果が認められるものでもないし、ましてや本契約の違約金の支払い免除について合意されたとみることもできない労働契約承継法上、通知義務の規定(同法第2条第1項)に例外規定はないから、転籍に係る同意が 得られたからといって上記通知等の手続の省略が当然に許されるものとは解されない。しかも、本件会社分割に際してX社が行った上記手続は、(略)労働契約1がそのままY社に承継され得ることについてAに一切説明せず、そのような承継の利益をAに意識させないまま、形式的に個別に転籍の同意を得て、異議の申出の前提となる同法所定の通知の手続を省略し、本来会社分割の際に同法によって保障されているはずの、本件労働契約1がそのままAに承継されるというAの利益を一方的に奪ったものというべきである。 以上によれば、(略)本件同意書を提出させることによってX社との間で本件労働契約1を合意解約させてX社から退職させ、Y社との間で本件労働契約2を締結させてY社に転籍させるという手続は、同法によって保障された、本件労働契約1がそのままY社に承継されるというAの利益を一方的に奪うものであり、同法の趣旨を潜脱するものといわざるを得ない。したがって、本件労働契約1の合意解約及び本件労働契約2は、いずれも公序良俗に反し無効と解するのが相当である。 • 承継法2条1項所定の通知がなされず、その結果、適法な異議申出を行う機会が失われた場合には、当該労働者は、適法な異議申出が行われた場合と同様の効果を主張することができるというべきである。したがって、AがX社との間で締結していた本件労働契約1は、Aが適法に同項所定の異議申出を行っ た場合と同様に、そのまま承継会社であるY社に承継されるというべきである(同法4条4項)。 • 上記同意による勤務配慮に係る労働条件の不利益変更は、公序良俗に反し無効と解するのが相当である。したがって、本件労働契約1における本件勤務配慮に係る合意は、上記Aの同意によっては変更されない

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Samples: 労働契約承継法

判決の要旨. 裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を全て認容した裁判所は、次のように判示してXの請求を、認容した(違約金免除の合意の有無) Yは、①Yの違約金支払いの定めのない本 RETIO. NO.118 2020 年夏号 合意書案をXから受領していたこと、②Xと Yの間で本協定書が締結されたこと、からYの違約金支払い免除についての合意があったと主張する一連の事実や、Fが、Y1と直接連絡をとるに当たり、Xに可否を打診し、また、Dも、直接連絡に応じた後も、Xに直接のやり取りの内容を報告していたこと、また、不動産業界では、提供情報が成約に結びついた場合に媒介手数料を支払うことで情報を募り、宅建業者も成功報酬を対価に情報提供をすることが一般に行われていること等を総合すると、 X・Y1間では、平成22年10月中に、成約した場合、媒介手数料を支払うという媒介契約が黙示に合意されたと認めることができ、売買契約締結直前に媒介契約書の取り交わしが通常なされているから、媒介契約書がないことも、契約成立の判断を妨げないたしかに、XからYに本合意書案が送付されたことは認められる。しかしながら、これはあくまでも手付金返還の交渉段階でのXからYへの提案に過ぎないもので、X内部の承認手続も行われていないものであり、Yも認めるとおり、両者で最終合意に至ったものではない。事実、その後、XはYに対して違約金の支払いを求めるに至っている。そうすると、本合意書案の送付があったことをもってY1は、Y2と本件物件の売買交渉を開始したことをXに知らせる義務はないと主張するが、当初、Xから情報提供を受けた以上、再度、購入を検討することとなった場合XとYの間で本契約の違約金支払い免除の合意があったと推認することはできないY1は、Xにその旨を通知すべき信義則上の義務を負っていたと解するべきであり、また、 Y1は準大手開発業者である以上、Xとの間で媒介契約が成立し、成約した場合、媒介契約書を取り交わし媒介手数料を支払うことを認識していたにもかかわらず、Xに本件物件の売却活動の再開を知らせず、Y2と媒介契約を締結したことから、Xへの媒介手数料発生の停止条件の成就を故意に妨げたものとし て、Xへの媒介契約上の媒介手数料支払義務を免れず、その額は、不動産業界の慣習に従い、法令上限とすることが黙示に合意されていることから1707万円余となるまた、本件土地の引渡しが困難になった局面において、本件代替地についての交渉が行われていたことは窺われるが、本協定書に署名のあるBは、Xの親会社の取締役でしかなく、Xの代表権や本協定書の締結権限を有していたと認めることはできない。むしろ、本協定書の作成日である平成29年5月25日の直後である同月31日に、XはYに対して違約金の支払いを求めたことからすれば、本協定書の締結がXの意志によるものであったかも疑問である。なお、仮に本協定書が有効に締結されていたものであったとしても、本協定書締結後にX内部の承認を経て、Yとの正式な売買契約を締結することが予定されていたこと、本件代替地の売買契約締結には至っていないことからすれば、本協定書の締結によって直ちに本件代替地の売買契約の効果が認められるものでもないし、ましてや本契約の違約金の支払い免除について合意されたとみることもできない一方、Y2は、Y2が不動産業界の常識に通じていること、また、Y2がAのために買主を探索すべき立場にありながら、本件物件の売却先探索が再開された事実を、Zに知らせないでいる一方、直接にDに売却再開を知らせ、直接交渉を行い、AとY1の双方から媒介報酬を得ていること、Y1が不動産業界の信義に反してまでXを排除してY2を媒介業者としたこと等の事実を総合すると、Y2は、XがY1と媒介契約を締結した立場と知りながら、Xの本件物件取引への関与を排除し、XのY1に対する報酬請求権の条件成就を故意に妨害してXの権利を侵害したと評価すべきであり、Xに対する不法行為といわざるを得ず、Xに対し、Y1から得べかりし媒介報酬額である1707万円余の損害を賠償すべき責任を免れない

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Samples: 土地建物売買契約