まとめ. 平成 23 年7月 15 日最高裁判決(RETIO83 号 119 頁)により、更新料特約を賃借人が負う金銭的対価に見合う合理的根拠は見出せないとして、消費者契約法 10 条に反するとした事例(平成 21 年8月 27 日 大阪高裁判決 RETIO77 号 114 頁) などが、覆された。本事例の原審は更新料特約そのものは否定せず、高額に過ぎる部分を無効としたものであった。今後、賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料特約が有効であるかの判断材料は、「更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特別の事情」があるか否かという点になろう。実務の面からは賃料の何ヶ月分まで等の明確な基準を求める指摘もあるが、本事例においても、「特段の事情」の判断は、賃料額や更新期間に照らした判断の他に、実質賃料・礼金についての物件や立地条件に照らした判断が含まれており、形式的に一律の基準を設けることは困難ではないかと考えられる。 更新料特約付きの賃貸借契約を媒介する場合には、後のトラブルを避けるためにも、賃借人に更新料について十分な説明を尽くしておくべきである。そうすることで、賃借人も、当該物件と他物件とを比較考量し、納得の上契約できるであろう。 賃貸ビルの賃借人が、賃貸人に対し、借地借家法32条1項に基づいて賃料の減額を求め、減額請求後の月額賃料額の確認を求めたところ、原審で棄却されたため控訴した事案において、控訴審においても契約更新時に協議で賃料の改定を行うことができ、契約期間中経済情勢の変動が著しい場合は改定することができる旨の約定を賃料減額事由の有無の考慮事情とすることは許されないものではなく、賃料相場が下落傾向にある状況下で新規契約の場合の相当賃料額を採用すべきともいえないとして、控訴を棄却した事例(東京高裁 平成24年7月19日判決原審 東京地裁 平成24年2月20日判決 ウエストロー・ジャパン)
まとめ. 本件の原告は、令和元年9月から12月に、いずれも東京地裁で、本件含め3件、同様の請求をし、その結果は棄却2件、認容1件といった状況である。また、同様の他の裁判例においても、ガス会社の請求が否定されているものが多く見られるが、認められた事例も見られ、一様でないようである。 LPガス設備に関する紛争は今後も頻繁に起こりうることから、宅建業者は、国交省が平成元年に「ガス設備の所有権がLPガス会社にある場合にはその旨を説明すること。」と要請し、現在は「宅建業法の解釈・運用の考え方第35条1項4号関係」にその旨も記載されていることから、LPガス設備の所有権に関する記載・説明は必須の業務と言えよう。 (東京地判 平31・1・11 ウエストロー・ジャパン) 鎌田 晶夫 LPガス会社とガス供給契約を締結した賃貸共同住宅の所有者が、契約期間中に供給契約を他のLPガス会社へ変更したことにつき、 LPガス会社が供給契約に基づき、ガス設備の買取を求めた事案において、LPガス会社の請求が認められた事例。(東京地判 平成31年1月11日判決 ウエストロー・ジャパン)
まとめ. 本件のように相手方が事業者であるときは、LPガス会社の請求が認められた事例(東京地判 平27・1・30ウエストロー・ジャパン、東京地判 平26・6・25 ウエストロー・ジャパンなど)が見られるが、相手方が一般消費者であるときは、LPガス会社の請求が棄却された事例(東京地判 平28・1・27 ウエストロー・ジャパン、東京地判 平27・9・28 ウエストロー・ジャパン、東京地判 平22・11・12 ウエストロー・ジャパンなど)が多く見られる。 (東京高判 令元・10・30 金融商事判例1587号22頁) 中戸 康文 代物弁済により温泉権を取得したとする原告が、温泉が湧出する土地の所有者に対して、温泉権を有することの確認及び使用料相当額の損害金を求めた事案において、現代の高度な掘削技術をもって新たに湧出させた温泉については、原則として、慣習法上の温泉権を掘削地の所有権とは別の物権として成立することはないとして棄却した事例(東京高裁 令和元年10月30日判決 金融商事判例1587-22)
まとめ. 以上のとおり、協定は、日本人駐在員のインドの社会保障制度への加入義務を緩和し、さら、これまで 支払った保険料の掛け捨ての問題を解消するものであり、日系企業及び日本人駐在員の経済的な負担を軽減し、インド進出・インドでのビジネス展開をより行いやすくするものといえます。
まとめ. 本判決では、買主の地位の譲渡契約を締結したものの引渡日までに契約条件である建物取壊し・更地引渡しができなかった事案について、その後、地位の譲渡人と譲受人が、代替物件の売買契約の協議を進める旨の協定書を締結するなどしたとしても、譲渡契約の違約金の免除の合意は推認できないとしたものである。 本件のような買主の地位の譲渡契約だけでなく、売買契約でも、契約の締結後、更地引渡し等の契約債務が履行できなくなり、その代替措置として、当該契約の処理が行われないまま、両当事者で別の売買契約等の検討を進めることもあり得るだろうが、トラブル防止の観点からは、既契約の処理方法を含め、両当事者で誤解の生じないように話し合いを進めることが重要と言えよう。 また、賃借人の立退き以外にも隣地との境界確定のように、売主が第三者と何らかの合意等をすることが売買契約上の売主の義務とされることはあろうが、第三者との合意については、相手がある話であり、売主が真摯に努力しても、必ずしも合意取得ができるとは限らず、これらを売主の義務とする約定で契約する場合、売主はそのリスクを十分認識した上で契約する必要があろう。 (調査研究部主任研究員)
まとめ. 以上をまとめますと、2項2号・3号の規定からすると、対第三者責任に係る損失(1項2号イ・ロの損失)について補償を行うことができる範囲は相当に限定されると思われます。また、1項1号の防御費用も含めて法律上許容される範囲内の補償かどうかの判断も法令違反リスクを伴ったものとなりますので、D&O 保険による保険保護なしに純粋に会社の資金でもって補償を実行するというのは現実には相当難しくなるのではないかと思われます。せっかく苦労してつくった法律の規定ですから、何とかうまく機能できればよいと思いますが、現実には、補償を行うハードルはかなり高いのではないかと思われます。
まとめ. ユーザ企業の経営目線(アウトカム)から、システムにおける KPI を決定し、そこからシステム価格が算出されるのが本来あるべき姿だという意見と、人月価格そのものではなく人月価格にエンジニアの業務知識や開発経験が反映されていない現状が問題だという意見があった。
まとめ. ユーザのメリットは、ベンダの能力を最大限引き出すことにより、システムの QCDを向上できる点である。ただし、ユーザ側に IT を活用する能力がある程度備わっていることや、改善効果を可視化することが前提となる。また、現時点で経営層や投資家に対してパフォーマンスベース契約の説明をするのは困難との声もある。
まとめ. 情報化戦略を策定しているか、強力な情報システム部門が存在する一部のユーザでは、開発工程における情報システムの価格設定により品質をコントロールしようとする試みがみられている。一方でシステム企画や保守・運用工程においては、ユーザ・ベンダ間の役割分担が不明確であり、価格設定も不明瞭になりやすい。
まとめ. ユーザ側の IT の理解度や、見積を適用する業務範囲(ex.設計工程のコンサル等)によっては、人月ベースの見積や価格交渉をしても問題は生じないのでは。ただし、人月をかけるほど売上・利益につながる産業構造が優秀な人材を集まりにくくさせていると考えられる IT 業界の現状は問題である。