判決の要旨. 裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を棄却した。
判決の要旨. 裁判所は、次のように判示し、Xの請求を認容した。
判決の要旨. 裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を全て認容した。 (違約金免除の合意の有無) Yは、①Yの違約金支払いの定めのない本 RETIO. NO.118 2020 年夏号 合意書案をXから受領していたこと、②Xと Yの間で本協定書が締結されたこと、からYの違約金支払い免除についての合意があったと主張する。 たしかに、XからYに本合意書案が送付されたことは認められる。しかしながら、これはあくまでも手付金返還の交渉段階でのXからYへの提案に過ぎないもので、X内部の承認手続も行われていないものであり、Yも認めるとおり、両者で最終合意に至ったものではない。事実、その後、XはYに対して違約金の支払いを求めるに至っている。そうすると、本合意書案の送付があったことをもって、 XとYの間で本契約の違約金支払い免除の合意があったと推認することはできない。 また、本件土地の引渡しが困難になった局面において、本件代替地についての交渉が行われていたことは窺われるが、本協定書に署名のあるBは、Xの親会社の取締役でしかなく、Xの代表権や本協定書の締結権限を有していたと認めることはできない。むしろ、本協定書の作成日である平成29年5月25日の直後である同月31日に、XはYに対して違約金の支払いを求めたことからすれば、本協定書の締結がXの意志によるものであったかも疑問である。なお、仮に本協定書が有効に締結されていたものであったとしても、本協定書締結後にX内部の承認を経て、Yとの正式な売買契約を締結することが予定されていたこと、本件代替地の売買契約締結には至っていないことからすれば、本協定書の締結によって直ちに本件代替地の売買契約の効果が認められるものでもないし、ましてや本契約の違約金の支払い免除について合意されたとみることもできない。
判決の要旨. 裁判所は、次のように判示し、Xの請求を認容し、Y1及びY2の反訴を棄却した。
判決の要旨. 裁判所は、以下のように判示し、Xの請求を一部認容した。 盧 礼金条項の消費者契約性について 消費者契約とは、消費者と事業者との間で締結される契約(消費者契約法2条3項)であり、事業者とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう(同条2項)。 Xは個人であり、Yは株式会社なので、本件賃貸借契約は消費者契約である。 盪 礼金の性質についてア 広義の賃料 通常、建物賃貸借契約締結時に賃借人が賃貸人に支払う一時金には①礼金、権利金、敷引金(名目上の敷金の内で無条件に賃貸人に支払われ返還されない部分)等と、②敷金、保証金等がある(顕著な事実)。この内、①は返還が予定されない金員で、②は賃借人の債務を担保するもので、賃借人の債務不履行等がなければ返還される預り金である。 礼金は、賃借人にとっては①の他の一時金と同様に、建物を使用収益するために必要とされる経済的負担である。一方、賃貸人は、賃借人から受け取る建物使用収益の対価を毎月の賃料だけではなく礼金等の一時金をも含めた総額をもって算定し、それを建物賃貸借経営の必要経費に充てているのが通常であり、そして、①の一時金は、賃貸人の初年度の所得として扱われている(顕著な事実)。礼金のこうした経済的機能に鑑みると、礼金は実質的には賃借人に建物を使用収益させる対価(広義の賃料)であるといえる。 民法上は建物の使用収益の対価は「賃料」であるとされている(民法601条)が、賃料以外の名目で実質的な建物使用の対価を受領することも許されると解されている。また、賃料は月毎の後払い(民法614条)が原則であるが、前払いも認められており、多くの場合、特約で前払いとされている(顕著な事実) このように、礼金の主たる性質は、広義の賃料の前払であるということができるが、その他にもその程度は希薄ではあるものの賃借権設定の対価や契約締結の謝礼という性質をも有している。 このように礼金は一定の合理性を有する金銭給付であり、礼金特約を締結すること自体が「民法1条2項に反して消費者の利益を一方的に害するもの」であるとはいえないというべきである。 イ 期間対応性 礼金を広義の賃料として扱う考え方に対しては、民法上の本来の賃料と比較すると、中途解約の場合に一部返還がなされないなど賃料としての重要な要素である賃料額と賃貸借期間との対応性(以下、「期間対応性」という)に欠けるので賃料とみなすことはできないという指摘がなされている。しかし、礼金が民法の定める形式的意義の賃料でないことは明らかなのであって、実質的・経済的に見て建物の使用収益の対価として授受されているということにすぎないのであるから、礼金を広義の賃料として扱うのなら期間対応性を持たせるように礼金に関する契約を解釈していけばよいのである。形式的意義の賃料でないから賃料ではないという批判はあたらないというべきである。 礼金に前払賃料としての期間対応性を持たせなければ実質賃料の支払としての合理性がなくなるのであるから、予定した期間が経過する前に退去した場合は、建物未使用期間に対応する前払賃料を返還するべきであるという結論になるのは当然のことである。本件賃貸借契約締結の際の当事者間の合意としては、礼金として支払われた金員は返還を予定していないということであると推認される。しかし、そのような合意は、契約期間経過前退去の場合に前払分賃料相当額が返還されな いとする部分について消費者の利益を一方的に害するものとして一部無効である(消費者契約法10条)というべきである。 Xは、契約期間1年の賃貸借契約で、1か月と8日間しか本件建物を使用せずに退去している。したがって、8日間分を1か月と換算したとしても、前払賃料として礼金12万円から控除できるのは1万円×2か月分=2万円ということになる。そして、礼金の授受については、一次的な性質は実質賃料の前払であるが、副次的には賃借権設定の対価や契約締結の謝礼という趣旨も含まれていること等の事情をも合わせて総合考慮すると、本件の場合、Yが礼金から控除することのできる金額は3万円とするのが相当であり、差額の9万円はXに返還すべきである
判決の要旨. 裁判所は、次のように判示して、Xの請求を一部認容した。 (原状回復義務の範囲) 本件貸室は、元々、事務所仕様の内装等が施され、事務所として賃貸されていたが、Xが賃借する前の賃借人が本件貸室で漫画喫茶を営むためにYから本件貸室を賃借した際、その返還時にはこれを事務所仕様の内装等に復することを条件に、個室を設置するなどの内装設備を施し、当該店舗を営んでいたものと認められる。 また、その後、Xが、個室付きのリラクゼーションクラブを営むため、前賃借人から上記店舗の内装設備を引き継いで本件貸室の賃借権を譲り受けた際、Yは、新賃借人のXにおいて本件貸室の返還時には当該店舗の内装 RETIO. NO.116 2020 年冬号 設備を撤去した上で事務所仕様の内装等に復することを条件として、居抜きによる賃借権の譲渡を承諾した上で、改めてXとの間で本件賃貸借を締結したものと認められる。
判決の要旨. 裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を一部認容した。 (Yらの説明義務違反の有無) 原契約においては、本物件を転貸すること及び「業務委託等の方法により使用させ」ることが禁止されていたことからすると、本委託契約の法的性質について、転貸借契約(Xの主張)と業務委託(Yらの主張)のいずれを採用したとしても、Yらは、Y1とXとの間の委託契約締結に当たり、上記の各禁止事項をXに説明する義務を負っていたというべきであるが、これについて説明がなされなかったことに争いはない。したがって、契約当事者であるY1のみならず、仲介・立会の業者として関与したY2にもかかる説明義務違反について共同不法行為の成立が認められる。
(X の損害額及び因果関係の有無) Xは、委託契約に基づき既にY1に保証金 (180万円)を差入れていたにもかかわらず、原契約上、転貸及び業務委託が禁じられていたため、本物件における店舗の営業を継続すべく、Aに改めて保証金を差し入れて契約を締結せざるを得なくなったものであるから、当初Y1に差し入れた保証金については、Yらの共同不法行為による損害と認めるのが相当である。 一方、礼金については、Xが現に本物件での店舗の営業ができていたことからすれば、 Yらの共同不法行為(説明義務違反)により被った損害とは認め難い。 また、Aに差入れた保証金は、Aとの関係で本物件の占有権原を確保し、店舗の営業を継続するために支出されたものと考えられ、これもYらの共同不法行為(説明義務違反)により被った損害とは認め難い。 よって、Xの損害額は、Y1に差入れた保証金(180万円)に弁護士費用を加えた198万円と認められる。
判決の要旨. 裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を 棄却した。 認定事実によれば、平成30年4月9日に発生した漏水については、本件排水管のひび割れが原因であることが強く推認され、ひび割れの原因としては、本件建物の建築時期やほかに原因となる要因も見当たらないことからすれば、経年劣化によるものであることが推認される。 もっとも、平成29年3月8日及び平成30年 2月22日頃の時点においては、通水検査の結果、本件排水管からの漏水が確認されなかったのであるから、同日の時点において、本件排水管に経年劣化によるひび割れが生じていたとは認められない。 そうすると、本件賃貸借契約が締結された同年1月11日時点において、本件排水管に何らかの経年劣化が生じていたものとしても、それによるひび割れ等が顕在化していたわけではなく、その潜在的な危険があるにとどまる状態であったというべきである。 宅地建物取引業者が建物の賃貸借契約の媒介を行う場合において、宅地建物取引業法に基づき、建物状況調査自体を行うべき義務を有しているものではない。このような同法の規定や、賃借人等の利益の保護と建物の流通の円滑化とを図るとの同法の目的(同法1条)に照らすと、宅地建物取引業者において、建物の賃貸借契約の媒介を行うに当たり、当該建物の躯体内排水管の経年劣化によるひび割れ等の潜在的な危険といった建物の外観から直ちに認識し得ない瑕疵を自ら調査すべき善管注意義務を負うと認めることはできないというべきである。 これを本件について見ると、前記のとおり、本件排水管に経年劣化によるひび割れ等の潜在的な危険があったにとどまる本件において、Yが、そのような建物の外観からは直ちに認識し得ない隠れた瑕疵を調査すべき善管 注意義務を有していたとは認められない。 また、本件賃貸借契約の当時、Yが上記瑕 疵の存在やその可能性を示唆する情報を認識していたと認めるに足りる証拠もないから、 Yが、Xに対し、当該瑕疵を告知すべき義務を有していたとも認められない。 なお、Xは、媒介業者に注意義務違反、告知義務違反等を認めた裁判例が多数存在する旨主張するが、Xが指摘する裁判例は、媒介業者が建物の物理的瑕疵によってその目的が実現できない可能性を示唆する情報を認識していた場合や、建物の外観から物理的瑕疵の存在を認識し得た場合等に関するものであり、いずれも本件とは事案を異にするものである。 したがって、Xの請求には理由がないことから、これを棄却する。
判決の要旨. 裁判所は次のように判示して、Xの請求を棄却し、訴訟費用は全額Xの負担とした。
判決の要旨. 裁判所は以下のように判示し、本件契約における借地借家法32条1項の適用を肯定し、適正賃料を示した。 盧 本件契約書は「建物賃貸借契約書」と題する契約書である上、その内容はXがYから本件建物を賃借し、賃料を支払うほか、賃貸借期間、転貸借、保証金、敷金などの規定が置かれている。このことから、本件契約は賃借人が目的物を使用収益し、賃貸人に対してその対価を支払うという建物賃貸借契約としての性質を有することは明らかである。この点についてYは不動産変換ローン事業の種々の事情を主張するが、それらをもって本件契約が賃貸借契約としての性質を有しないものとはいえず、借地借家法32条1項の適用を排除しなければならない事情があるとはいえない。 盪 Yは本件契約の賃料増額特約を根拠とし、Xは3年ごとに12パーセントずつ増額された賃料を支払う法的義務を負う旨主張するが、本件契約の条文をもって自動的に賃料が12パーセント増額されるという趣旨は読み取れない。本件契約が不動産変換ローン事業の一環であり、賃料が増額することによって収支が均衡することをYが見込んでいたとしても、それをもってXとYの間で賃料増額特約が合意されたと認めることはできない。 蘯 したがって、借地借家法32条1項の規定は、本件契約について適用されるものであるから、これを前提として適正賃料を検討する。 当裁判所が選任した不動産鑑定士の鑑定結果によれば、「通常の賃貸借の場合における適正月額賃料」として1ヶ月10 億 1,673万円、「本件特有の事情を考慮した場 合の適正月額賃料」として1ヶ月10 億 8,728万円の2つが出ており、後者は実質賃料から保証金の運用益を控除していないものである。保証金の運用益の控除の当否について検討すると、不動産鑑定評価基準によれば「一時金が授受される場合の支払賃料は、実質賃料から、賃料の前払的性格を有する一時金の運用益及び償却額ならびに預り金的性格を有する一時金の運用益を控除して求めるものとする」とされている。当該保証金は無利息の一時的な預託金であり、XY双方とも保証金の運用益について敷金の運用益と同様に実質賃料に含まれることを前提に交渉していたことが認められる。したがって本件契約における保証金の運用益は、実質賃料に含まれるものと解するのが相当である。 盻 以上によれば、Xの請求する賃料減額については、上記の「通常の賃貸借の場合における適正月額賃料」に当裁判所が修正を加えたところの1ヶ月10億1,880万円を限度として理由があり、Yの請求はいずれも理由がなくこれを棄却することとする。