プロジェクトの背景 のサンプル条項

プロジェクトの背景. 首都リマの人口は949万人(2017年、国家統計情報機関)を超え、隣接するカヤオ憲法特別市を含むリマ首都圏では更に人口拡大が続いていく見込みである。人口拡大とともに無秩序な市街地の拡大が進み、都市圏の移動距離が伸びる傾向にあ る。これに伴い自動車が年々増え続け、交通渋滞の慢性化やそれに伴う大気汚染の悪化が生じており、市民の足として利用しやすい公共交通輸送手段の整備が近年の課題であった。 この状況に対してリマ首都圏の公共交通路線が計6路線計画されることとなり、このうち都市交通1号線 (2012年開業。高架鉄道。バヨバル‐ビジャ・エル・サルバドール間延長34.5km。アンデス開発公社が支援)が営業している。また、都市交通 2号線 (地下鉄)の建設が進んでいるほか、3号線及び4号線(ともに地下鉄)の建設のための調査が進んでおり、5号線及び6号線はコンセプトレベルでの検討が進んでいる。 運輸通信省(以下、「MTC」という。)はリマ首都圏の都市交通課題に統合的に対応するため、リマ・カヤオ鉄道公社、リマ市役所公共交通部門を統合し、リマ・カヤオ都市交通公社(以下、「ATU」という。)を2019年4月に設立した。また、 2021年7月には、新しい「持続的都市開発法(Sustainable Urban Development Law No. 31313)」が制定され、公共交通の推進による、包摂的で環境負荷が低い都市開発を推進するビジョンが打ち出され、同ビジョンを実現するために都市計画制度の改訂作業が行われている。さらに、リマ市においては、2020年8月からリマ首都圏都市開発マスタープランの改定を行っており、カヤオ憲法特別市においても、2020年7月よりカヤオ都市開発マスタープランの改定を行っている。これらの都市開発マスタープラン(目標年次2040年)では、多極分散型かつマルチモーダル(複合的交通モード)による都市の創造を柱の一つにしており、その実施手法として公共交通指向型開発(Transit Oriented Development:TOD)が位置付けられている。 上記のとおり、都市交通インフラ整備及びビジョン策定に関しては一定の成果を挙げているものの、現状では都市の核となる公共交通の駅周辺の高度利用が行われておらず開発ポテンシャルを生かせていない。また、公共交通とまちづくりが連動していないことから、公共交通の利便性が上がらず、期待されたように公共交通利用が進んでいない。 TODの考え方のもと、公共交通を中心とした街づくりの必要性が認識されるよう になってきたが、実現には課題が多い。規制や事業手法(再開発や区画整理等)等の都市開発管理制度が不十分、都市計画を担当する住宅建設衛生省(以下、 「MVCS」という)と都市交通整備を担当するATU等の間で役割分担が整理されていない、土地利用・建築規制の許認可と都市開発マスタープランとの整合性が担保されていない等の問題が明らかにされている。 都市開発・都市交通の関係者間で、TODを推進し、都市の利便性を向上させていくためには、都市計画や都市交通計画と整合した土地利用・建築規制やTODの実施手順、関係機関の役割分担や利害調整方法を規定したTODガイドライン等の政策ツールの整備、沿線再開発手法の整備や交通結節点の改善等が必要である。このような課題認識のもと、ペルー政府はリマ首都圏を対象にTODを推進するための協力を我が国に要請した。
プロジェクトの背景. ケニア共和国(以下、「ケニア」)の国民総生産(GDP)成長率は2013年以降安定して5~6%の成長が続いており、サブサハラアフリカの非資源国の中でも平均を上回っている。高い経済成長を背景に、2019年のピーク電力需要は1,912MWであり、年率約6%で増加している。これに対し総発電設備容量は2019年時点で3,097MWである。このうち、主要電源の設備容量は2019年に水力29%、地熱27%、火力24%、風力11%、太陽光9%となっている。なお年間発電量では、2019年に地熱46%、水力28%、風力 14%、火力12%、太陽光含むその他電源は1%未満となっている1。一方で、同国の電化率は75%であり、年々改善傾向にあるものの、依然として250万世帯の電力へのアクセスがないのが現状である。 このような経済成長を背景とした電力需要と供給の拡大、また電化率のさらなる向上への取組みを背景に、ケニアは急速に送電網を拡大している。現在2,328kmの送電網を保有しているところ、2,500kmの送電線を建設中であり、加えて、4,400kmの送電線を建設するためのフィージビリティスタディが実施された。また、国際連系線の拡大も進められており、エチオピア(500 kV HVDC、2020年11月完工予定)、タンザニア(500kV HVDC)、ウガンダ(既存132kV、新設400kV、ケニア国内分はJICAが支援)等との国際連系線の建設を進めている。 また、ケニアでは現在、変動型再生可能エネルギー(以下、「VRE (Variable Renewable Energy)」)の導入を急速に進めている。2019年より、大規模風力(Lake Turkana、310MW)や太陽光(Garissa、50MW)が運転開始し、発電容量に占めるVRE比率が約14%まで増加した。ケニア政府は、2030年までに太陽光発電設備容量800MWへの拡大を目指しており、VRE電源の急速な拡大に伴い、それに対応する系統運用能力の高度化が求められる状況となっている。また、VRE電源が拡大するケニアにおいて、送電網の拡大を計画するためには、より高度な系統解析を実施する必要がある。 そのような状況下、ケニアでは、2019年に施行されたエネルギー法(以下、「Energy Act 2019」)に基づき、新たに電力系統運用者(System Operator)制度が定められた。現在ケニア電力公社(以下、「KPLC」)が保有・運営している中央給電指令所は、2021年6月までにエネルギー省が新たな系統運用者への移管を決定することとなっており、移管先としてケニア送電公社(以下、「KETRACO」)が最有力視されている。また、同法に基づき、電気事業制度改革の一環として、送電線を所有する電力会社以外の第三者による送電線の利用(オープンアクセス)が可能となった。 以上のように、国際連系線の拡大やVRE大量導入、送電線へのオープンアクセスに伴い、送電系統システムの運用の高度化が求められるなか、系統システムの根幹である中央給電指令機能がKETRACO へ移管される見込みであることを踏まえ、 KETRACOは、これまで以上に高度な電力系統の運営維持管理を自社で実施する必要 1 Bloomberg NEF(2020年11月1日現在) が生じた。XXXXXXXは、今後5年間で、109名のエンジニアと102名のテクニシャンを新規に雇用する予定であり、加えて既に雇用している合計100名以上の技術者の能力向上を進める必要がある。特に、急速な送電網の拡大や国際連系にあわせた電力系統の制度設計、VRE系統連系、系統運用改善、中央給電指令所の高機能化、高信頼度化、送電系統設備の維持管理の能力強化が急務となっている。 以上の状況を踏まえ、ケニア政府は、我が国に対し、「送電系統技術能力向上プロジェクト(以下、本プロジェクト)」に関する技術協力を要請した。本事業では、 XXXXXXXによる自律的な系統運用、維持能力を向上させるため、KETRACOの系統関係職員の能力強化、及びKETRACO内部での人材育成プログラムの体制強化支援を実施する。また、国際連系線の拡大や、VRE大量導入に起因する、より高度な系統計画・運用能力の強化に向けて、機材導入及び技術指導を行い、もってケニア国における系統安定の向上を図る。なお、系統運用能力の向上に関しては、KPLC中央給電指令所が技術移転の実施に適していること、既にKETRACO職員がKPLC中給指令所へ出向してOJT訓練を受けていること、また中給機能が新系統運用者に移管した際には KPLC中給職員も配属される見込みが高いことから、KPLC中給スタッフもカウンターパートとして加えることとする。
プロジェクトの背景. ウズベキスタン共和国(人口約 3,239 万人、一人当たり GNI2,020 米ドル、世界銀行、2018 年)の電源構成は、豊富な化石燃料を利用した火主水従となっており(火力約 80%、水力約 20%)、特に天然ガス焚きの火力発電所は当国における電力総供給の 75%を担う主力電源である。また、当国における電力需要は安定した経済成長(2004 年から 2017 年まで 5%以上の実質 GDP 成長率を維持)に伴いこれまで増加を続けており、2017 年の最大電力需要は 10,014MW に達しているが、全般に発電施設の老朽化が進んでおり、供給能力は約 8,700MW に留まっている。今後も電力需要は着実に伸びていくと見られ、2027 年には最大電力需要は 17,000MW に達する見込みであり、電源開発が喫緊の課題であ る。 ナボイ州では、当国の経済を支える鉱物資源が多く産出されており、これら資源を加工する冶金コンビナートが多く整備されている。2018 年 1 月 9 日に発表された大統領令(PP-3465)において、これら設備の増強が決定している一方、同施設の安定的な稼働のためには、十分な電力供給が不可欠であり、同州の電力供給を担うナボイ火力発電所の更なる増強が必要である。また、ナボイ火力発電所からの電力の一部は周辺のブハラ州、カシカダリヤ州に対しても供給されているが、これらの州においても電力需要は増加傾向にある。 加えて、火力発電容量の約 90%は 10 基の既設天然ガス焚き火力発電所で発電されたものであり、設備の大半がソ連時代から稼働している旧型であることから、総合熱効率は約 30%と低水準で、燃料消費が多くなることが高環境負荷の一因となっている。国際エネルギー機関の報告によれば当国は、老朽化した発電及び熱供給施設の非効率的な稼働によって、温室効果ガスの排出量は世界で最も高いレベルにあり、当国の GDP1 ドルあたりの CO2 排出量は世界 6 位(2016 年)である。再生可能エネルギーの導入や省エネルギー政策の推進と共に、ベースロード電源である天然ガス焚き火力発電所の発電効率の向上が求められている。 当国政府の「ウズベキスタン開発戦略 2017-2021」においては、既存発電所の近代化および発電所の新設を通じた、電力アクセスの改善に取り組むことが優先課題の一つとして挙げられている。加えて、同戦略では発電効率の向上による、天然ガス等の燃料消費量の削減を目指している。また、 2018 年 10 月に発表された電力セクターロードマップにかかる大統領令(PP-3981)においては、発電設備の改修・新設を通じて、計 1,984MW の電源開発を行うことが示されている。更に、2019 年 4月 23 日にアリポフ首相名で発表された「電力セクターにおける大規模投資案件実施プログラム 2019-2030」においては、全土における電源開発構想が示されており、ナボイ火力発電所においては現在円借款にて支援中のガスタービン・コンバインドサイクル第 2 号機に加え、第 3・4 号機を建設する旨が記載、うち第 3 号機も円借款による支援が進んでいる(2019 年 12 月借款契約(L/A)締 結)。 事業の概要 事業名 ナボイ火力発電所近代化事業(フェーズ 3) 事業目的 本事業は、既設のナボイ火力発電所にて発電効率の高いガス火力発電設備(4 号機)を整備することにより、電力供給の増強及び燃料消費量の削減を図り、もって当国の持続的な経済発展に寄与するもの。
プロジェクトの背景. パプアニューギニア独立国(以下、「PNG」)は約35百万haの森林を有する世界有数の熱帯林保有国である。商業伐採により年間400万m3近い丸太を輸出し、丸太輸出が貴重な外貨獲得手段のひとつとなっており、また農村地域住民への雇用を提供している。しかしながら、2015年における2000年比での地球温暖化ガス排出量は、約29百万 CO2トンの排出増となっており、そのうち約8割となる約23百万CO2トンは商業伐採や農地開発などの森林由来によるものとされている( PNG’s Enhanced Nationally Determined Contribution 2020)。そのため、森林減少・劣化対策が気候変動及び持続可能な森林経営の両方において重要な役割を担うものと考えられる。 PNG政府は2005年の気候変動枠組条約締約国会議(COP11)において、途上国における森林減少・劣化による温室効果ガス排出削減(REDD)をコスタリカ国と共に提案し、 2008年には気候変動関連政策立案などを担う気候変動室を設置するなど、気候変動対策を重要な政策課題の一つとして推し進めている。 PNGの憲法(1975)では森林を含む天然資源の持続的な保全・活用が謳われるなど森林セクターは同国の重要な開発政策に位置付けられている。 また、PNG政府の開発戦略計画2010-2030(2010)では、持続可能で高収益な森林セクターの構築を目指すとしており、その戦略として森林資源インベントリ整備、持続可能な森林管理の促進などが示されている。また、気候変動対策では、気候変動への適応と温室効果ガス排出削減への貢献を目標として掲げている。 このような背景を踏まえ、同国においては、REDD+(開発途上国における森林の減少・劣化に由来する排出の削減等)を重要な政策課題に据え、その政策・制度面の策定に取り組んでおり、JICAを含め、FAOやUNDPなどのドナーが連携して、森林セクターの協力が行われてきた。 我が国としては、大洋州地域における気候変動対策支援の一環として、森林資源情 ✲を把握・解析するための機材を供与する「環境プログラム無償資金協力」が2010年より実施され、これと連携して、2011年3月からの3年間で技術協力プロジェクト「気候変動対策のための森林資源モニタリングに関する能力向上プロジェクト」、2014年 8月からの5年間で技術協力プロジェクト「気候変動対策のためのPNG森林資源情✲管理システムの活用に関する能力向上プロジェクト」が実施され、全国レベルの森林被覆図の整備、PNG森林資源情✲管理システム(以下、「PNG-FRIMS」)の構築及びその活用による森林計画関連業務、森林モニタリング改善、REDD+関連の情✲整備などに より、気候変動対策に資する持続可能な森林管理に向けた環境整備を行ってきた。これまでの協力で、森林資源情✲については基礎的なデータが整備され、またモニ タリング体制に関しても一定の能力向上が図られてきた。一方、持続可能な森林管理や気候変動対策を進める上で、木材生産・輸出が財政的に重要な位置を占めている1PNGにおいては、森林局職員が伐採業者に対し、伐採活動が持続可能な方法で行われる✎チェックするための指導監督業務が効率的に行われておらず、課題となっている。 このような背景を踏まえ、PNGにおける温室効果ガス排出の最大要因である森林劣化・減少の改善に直接的に貢献する、関係者による伐採活動に関する規則や手順の順守、天然更新、環境負荷の低い伐採などに関する技術移転などについて関係者の能力向上を図り、あわせてREDD+の実施能力向上に向けた森林✎ら排出される温室効果ガスの測定に関する能力の向上を図ることにより、森林の減少や劣化の改善を図り、同国の持続可能な森林管理の促進及び森林由来の温室効果ガスの排出の削減に寄与する本プロジェクトについて、PNG政府✎らの要請があり、JICAは本プロジェクトの実施を決定した。
プロジェクトの背景. ガーナは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage。以下、「UHC」)の達成に向けて、医療サービスへのアクセス改善に取り組み、熟練出産介助者による分娩、産前産後ケア受診率、予防接種率の向上など、保健医療サービスへのアクセスが向上した。その結果、母親と子どもの死亡率が 1990 年から半減するなど健康状況に改善がみられたものの、5 歳未満児死亡率は 52(出生 1000 対)、妊産婦死亡率は 310(出生 10 万対)(Ghana Maternal Health Survey、 2017)にとどまっており、持続可能な開発目標(SDGs)で定められた目標値(出生 10 万対 70)の達成に向けては依然として厳しい状況にあり、2017 年 4 月にガーナで開催されたガーナ保健省主催のヘルスサミットでは、さらなる健康改善に向 け、保健医療サービスの質の改善が喫緊の課題として提唱された。 ガーナでは 2016 年頃から保健医療サービスの質改善にむけた国レベルでの取組が本格的に始まり、2016 年 12 月にヘルスケアの質に関する国家戦略(National Healthcare Quality Strategy 2017-2021。以下、「NHQS」)と年間行動計画が作成され、質改善の機運が非常に高まっている。同戦略は、「患者とコミュニティを質の高いケアの中心におき、より良く調整された保健システムを通じ、国民の健康と福祉を継続的に改善すること」を目的としている。この戦略を具現化するため、 2017 年 10 月に、保健省の政策・計画・モニタリング・評価局に質管理部が設置され、部長が任命された。また、ガーナ保健サービスが作成したヘルスケアの質に関する国家戦略実施のためのガイドラインが 2019 年 9 月に発表された。加えて、州保健局、及び郡保健局にも、質管理チーム(Quality Improvement Team:QIT)が設置され、質管理者とともに保健医療サービスの質改善活動を推進している。また、医療施設には、質管理者が所属するQIT のほか、病棟やユニットに質改善チーム (Work Improvement Team:WIT)が設置され、質改善の体制が整いつつある。 JICA は 2018 年 2 月に「第 1 回アフリカ保健ケアの質と安全のフォーラム」(於南アフリカ)へ保健省質管理部長、ガーナ保健サービス臨床ケア局局長と共に参加し保健ケアの質改善分野の支援を開始した。その後、2019 年に政府関係者と保健施設スタッフ計 10 名が、タンザニア国で実施された 5S-KAIZEN-TQM に係るスタディーツアーに参加し、5S-KAIZEN-TQM アプローチによる保健医療サービスの質改善の概念と実施方法について学んだ。さらに、本邦での 5S-KAIZEN-TQM に係る課題別研修への参加など、保健医療サービスの質改善を目的とした支援を行った。同時に、ガーナ保健サービスも 5S-KAIZEN-TQM 講師訓練やカイゼンマネージャーフ ォーラムを実施するなど、講師の育成及び啓発を開始し、NHQS において母子保健医療サービスの質改善に係るガイドラインが整備されたが、本格的な導入・開始には知見、資金ともに不足している。また、2020 年初めからの新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大は、ガーナにおいても影響を及ぼしており、特に母子保健をはじめとする基本的保健医療サービス等の供給・需要に大きな影響を及ぼしたことから、健康危機下においても保健医療サービスを継続提供しうる医療施設の質の向上・マネジメント能力向上の必要性がこれまで以上に増している。 このため、5S-KAIZEN-TQM を含めた複合的な取組を通じ、医療施設での母子保健医療サービスの質改善を目指すため、ガーナ政府から本案件の要請があった。
プロジェクトの背景. 内陸国であるマラウイにおいて、航空運輸は人・物の交流・流通、貿易、観光、投資を促進していく上で極めて重要な役割を果たしている。マラウイの第二の都市で商業都市であり人口約80万人(2018年時点、2018 Malawi Population and Housing Census)を擁するブランタイヤ市に位置するチレカ国際空港には、南アフリカ、エチオピア、タンザニア、ケニア、ザンビア、モザンビークを結ぶ国際線及び首都リロングウェの空港(カムズ国際空港)との国内線が発着している(2019年冬スケジュール時点)。同空港への乗り入れ航空便数や旅客数は年々増加しており、2016年の年間旅客者は16.3万人、2018年は23.5万人と2年間で約1.5倍の増加を記録している。 しかしながら、チレカ国際空港は1940年代後半に建設されて以降、大規模な改修や拡張は行われておらず、空港施設及び保安機材の老朽化が著しく、航空機の離発着、旅客・貨物サービス、セキュリティ等の様々な面で課題を抱えている。 2019年1月には安全性の懸念から南アフリカ航空が一時、就航を停止した。また、 2019年3月にマラウイ南部で発生した洪水被害の際には、被災地に近い空港であるにもかかわらず、施設が不十分であったため各国からの緊急支援物資を受け入れられず、首都リロングウェのカムズ国際空港からの陸路輸送を行うことになるなど非効率なオペレーションとなった。 マラウイ政府は、今後、チレカ国際空港の拡張整備をドナーの協力を得て進める意向であるが、そのためには将来の航空需要やカムズ国際空港との機能分担などを踏まえた同空港の中長期的な整備計画を示したマスタープランの策定が必要であることから、これを日本政府に対し要請したものである。 これを受け、JICAは、本件の必要性、要請の妥当性を確認するために2021年5月に詳細計画策定調査を行い、要請内容の確認及び必要な協力内容を検討・整理し、協議を行った上で、2021年6月28日、「ブランタイヤ市チレカ国際空港開発マスタープラン策定プロジェクト」の枠組について、合意文書( R/D: Record of Discussions)を締結し、本プロジェクトの実施が決定された。 なお、対マラウイ共和国国別開発協力方針(平成30年1月)の重点分野(中目標)の「(3)気候変動や都市化を念頭においた成長の基盤整備」において、経済活動に寄与する都市基幹等の質の高いインフラ整備への支援が含まれており、本案件はこの方針に合致するものである。
プロジェクトの背景. ボリビア国は、過去には南米最貧国と言われていたが、モラレス政権の13 年間(2006 ~2018)で平均 4.9%の成長を継続し、極貧率は 2005 年の 38%から 2018 年には 15%に削減、また、最低賃金も 55 ドル/月(2005 年)から 300 ドル/月(2018 年)と増加し、安定した成長を続けている。他方で、経済成長に伴う都市化も急激に進んでおりラパス、コチャバンバ、サンタクルスの 3 大都市圏に全人口の 72%が集中し、2035 年には都市人口は全体の 84%を超えると推測されている。サンタクルス都市圏は国内総生産の 30%強を占める国内随一の商業都市であり、年間 2.4%(2001 年~2012 年の平均)の人口増加と都市化が急激に進展している。そのような背景から無計画な宅地開発による市街地の拡大、低密度な市街地の拡散による公共インフラ整備事業費の負担が問題となっている。また、公共交通機関については、新規路線の開発許可取得に伴う用地取得のため不要な迂回路を設定していることや、天候の影響や混雑状況により運行頻度が不安定である等、利便性の改善が課題に挙げられる。JICA は 2015 年から 2017 年まで「サンタクルス都市圏交通マスタープラン(以下、「M/P」という。)策定プロジェクト」を実施し、公共交通機関の拡充、都市開発・再開発の能力開発、大容量バス輸送システム(Bus Rapid Transit、以下 BRT)の整備、公共交通の再構築、サンタクルス市内排水システムの改善など、優先すべき事業を提案した。他ドナー(世界銀行、米州開発銀行(IDB)、アンデス開発銀行(CAF)など)もサンタクルス都市圏の都市化に伴う様々な問題解決を喫緊の課題と認識しており、同 M/P 提案事業の実現に向けた支援を検討・開始している。 同 M/P において提案された BRT は、第 1 フェーズの環状線(1a)が 2021 年に本格運 行を開始し、4 フェーズ計 8 路線をサンタクルス市内で運行を計画している。一方で、 BRT を軸とした市街地整備計画や BRT 駅周辺の整備計画を含む総合的な都市計画が策 定されておらず、BRT 路線の整備が先行して実施されている現状にある。また、BRT 路 線に関しても、経路選定や収支計画は F/S 調査が実施されているものの、既存公共交 通機関との接続やネットワーク再構築は検討されていない。JICA では、日本の都市計 画、交通計画に係る経験のみでなく、これまでにコロンビア共和国 都市計画・土地 区画整理事業プロジェクトを始め、南米各国で都市計画に係るプロジェクトを実施し、課題別研修を通して南米各国の都市計画・交通計画専門家とのネットワークも有して いる。かかる状況をふまえ、サンタクルス市は、JICA に BRT 及び既存公共交通の運営 管理及び BRT 沿線開発に係る計画策定の能力強化を目的として本件技術協力プロジ ェクトを要請した。
プロジェクトの背景. ギニア共和国(以下「ギニア」という)では、気候の違いから各地方で異なる農産品が生産され、地方間の農産品の物流は国民の生活基盤として重要な役割を担っている。ギニア唯一の商業港は首都コナクリに位置するが、鉄道・航空輸送が存在しないため、コナクリから地方部への生活用品の供給は道路輸送に頼っており、首都-地方間を繋ぐ主要国道は人口の約 8 割を占める地方住民のライフラインとなっている。さらにギニアは西アフリカ経済共同体(Economic Community of West African States、以下「ECOWAS」という)の 6 ヵ国と国境を接しており、主要国道はECOWAS 地域を繋ぐ国際回廊となっている。 ギニアは、国家開発計画である「経済・社会開発国家計画(2016-2020)」(Plan National de Développement Economique et Social、以下「PNDES」という)の中で 「持続的・包括的な経済への構造転換」を柱の一つに掲げ、産業の多角化を目指しており、その一環として農業品の輸出促進に取り組んでいる。また、PNDES では 「地方間の連結強化」、「隣国との連結道路の舗装化」が優先事項として設定さ れ、農産品の輸送にも寄与する道路網整備が進められている。一方、全国の国道延長 7,576km の内良好な状態にあるのは 16%に留まっており(2018 年公共事業 省)、橋梁を含む道路網の改善は喫緊の課題となっている。 このような状況下、我が国は、無償資金協力「国道一号線橋梁改修計画」(2013年G/A)及び「国道三号線スンバ橋架け替え計画」(2019 年G/A)を実施し、首都と地方都市間のアクセス改善の取組みを支援している。農産品の輸送については、カシューナッツ、ゴム、コーヒー、カカオなどの輸出農産品の国内最大の生産地域である最南東部の森林ギニア地方と首都を結ぶ国道二号線が重要な役割を果たしており、これら農産品は国道二号線を使ってコナクリ港や隣国へ運ばれている。 国道二号線は、コートジボワール、リベリアへと繋がる重要な経済回廊でもあ り、現在、道路区間は全区間で二車線化され、一部の舗装状態の悪い区間において も、他ドナーの支援により 2021 年 11 月までの補修工事が進められている。しかしながら、地方都市のファラナ市にあるファラナ橋はギニア政府の予算措置ができていないため、一車線の状態であり、国道二号線における交通の最大のボトルネックとなっている。 このファラナ橋は、国道二号線上の首都から東部 450Km に位置するコナクリ―森林ギニア地方間の交通の要衝であるファラナ市内にあり、コナクリ―森林ギニア地方間を移動するほとんどの車両が通行している(約 2,600 台/日、うち 31%が重車両)。当橋梁は、1950 年代に建設された一車線橋梁であるため、対向車の通過待ちや、貨物車両の低速走行で橋梁前での待ち時間が発生している。また、ギニアでは通行車両の重量規制が行われておらず、老朽化した当橋梁は落橋の危険性にも晒されている。ギニアは、2016 年以降毎年 GDP 成長率 6.0%以上(世界銀行)という高い経済成長の推移から今後も交通量の増加が見込まれ、待ち時間がさらに深刻化する恐れがあり、当橋梁の架け替えは喫緊の課題である。 「国道二号線ファラナ橋架け替え計画」(以下「本事業」という。)は、ファラナ橋を重車両の相互交通に耐えうる二車線の橋梁に架け替えることにより、交通の安全性を確保し、地域間の連結性の強化を図り、農産品・生活用品を始めとした国内物流の安定化を図るものである。加えて本事業は、国際回廊である国道二号線の機能強化を図り、隣国との経済活動を促進するものと位置付けられ、上述の PNDESを具現化する事業である。 本業務はファラナ橋の架け替えにつき、無償資金協力としての妥当性を検討し、最適な事業内容、規模等を検討した上で、概略設計を行うことを目的とする。
プロジェクトの背景. 2014年に経済重視政策を掲げるモディ政権が発足して以降、インド経済は6~ 7%台の高い GDP 成長率を示しており2020年度は COVID-19の影響を受けてマイナス成長に落ち込むものの、翌2021年度には8.0%台までの回復を見せると予想されている。同国の経済成長を支える鍵とされているのが科学技術であり、中長期的な国の将来目標を定めた「ビジョン2020」においても、科学技術は目標達成のための最重要手段と位置付けられている。また、最新の政策目標文書である Strategy for New India@75 では、世界知的所有権機関等によるグローバル・イノベーション・インデックスのトップ50に入ることを標榜するとともに、GDP の2%を研究開発に投資することを謳っている。 科学技術分野の人材需要にこたえるべく、インドでは1951年に国内初の工科大学(Indian Institute of Technology: IIT)が設立されて以来、2014年までに全国23校の IIT が設立されており、国内トップクラスの理工系大学として人材を輩出している。しかし、国の科学技術力を測るベンチマークの1つである Top10%補正論文数世界ランキング(3年移動平均) を見ると、インドは2006年の16位から2016年の14位に鑑みると、質量ともに科学技術分野の人材が十分輩出されているとは言いがたい。 こうした中、2007年8月の日印首脳間では新設 IIT への協力を検討する旨、協議され、2008年10月の日印首脳会談では IIT ハイデラバード校( Indian Institute of Technology Hyderabad:IITH)が協力対象校となることが合意された。また、重点協力分野として5分野(環境・エネルギー、デジタル・コミュニケーション、デザイン&マニュファクチャリング、ナノテク・ナノサイエンス、都市工学)が選定され、施設建設、機材調達、研究・教育機能の強化等の支援が行われることとなり、現在までに円借款附帯技プロによるデザイン支援を含む円借款による施設建設 (国際交流会館、学生会館等)、地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)による日印共同研究の支援等が行われている。加えて2012年1月からは本邦大学及び産業界との研究ネットワーク構築及び人材育成支援を目的に、本プロジェクトの先行プロジェクトとなる「インド工科大学ハイデラバード校日印産学研究ネットワーク構築支援プロジェクト」(以下、「フェーズ1」)が開始された。フェーズ1では、2 020年2月の終了時評価において、本邦大学との間の学術連携分野を中心に一定の成果が確認されている一方、本邦産業界との共同研究は特定の分野に留まる等限定的 であるほか、日印産学連携を自立的・持続的なものとするための体制整備が課題となっている。 上記状況のもと、本プロジェクトはインド政府からの要請を受け、フェーズ1にて形成された本邦学術機関とのネットワークの更なる強化に加え、産業界との共同研究等の連携を進め、IITH に日印間の学術及び産学連携のための自律的・持続的なプラットフォームを整備する事により、日印の学術・産業界への持続的な人材輩出に寄与することを目的に実施されるものである。また、日本企業によるインド進出が増加する一方、日本国内においても主に STEM 分野においてインド高度人材への期待が高まっており、フェーズ1で組織された本邦産官学関係者による支援コンソーシアムのメンバーからも、本プロジェクトを通じた日印連携の一層の強化に対する期待が示されている。
プロジェクトの背景. スリランカでは、自然災害の90%以上が天候や気候に関連しており、毎年国土のさまざまな場所で、洪水、落雷、強風、干ばつによる災害が発生している。さらに、大規模な事象(サイクロンや熱帯収束帯)による大きな気象災害も頻繁に発生している。例えば、2015年以降、豪雨・地滑り・洪水・サイクロン等により400人以上の命が失われ、被災者は200万人を超えている。 このような状況に対し、スリランカ国家政策“National policy framework vistas of prosperity and splendor”では、災害警報システムの強化を挙げ、スリランカ気象局 (Department of Meteorology: DOM)の機器、技術、知識の更新を進めている。具体的には、DOMは頻繁な気象災害の影響を最小限に抑えるために、気象局の予報機能と公共気象サービスを改善し、タイムリーで正確な気象予警報の発令、気象情報の提供を目指している。その一環として、我が国の無償資金協力「気象ドップラーレーダーシステム整備計画」にて二重偏波の最新鋭の気象レーダーを導入し、スリランカ全土及び周辺海域における面的且つ時間連続的な気象観測を可能にするための設備が整備される予定であるが、気象局の予報官・技術者の殆どが気象レーダーを利用した予報業務を実施するための理論的・技術的なバックグラウンドを有していないことが課題となっている。このため、DOMが気象レーダー等の設備を適切に運用し、より高度な気象サービスを提供出来るようにするために、補完的な機材の導入および人材及び組織の能力強化を図っていくことが急務である。 本事業は、新たに導入される気象レーダーによる気象観測の確実な実施、解析能力の向上、大雨警報の適切な発令、情報発信能力の向上により、スリランカ気象局の気象観測・予測・気象情報の発信に係る能力強化を図り、もって、気象情報及び予警報が気象災害による被害の軽減の為に広く活用されることに寄与するものである。