調査の背景・経緯 のサンプル条項

調査の背景・経緯. エジプトでは、近年においても堅実な人口増加(10 年間平均 2.04%、2008 年~2017年)を続けており、大カイロ都市圏の人口も 2000 万人を上回るなど、首都カイロへ の人口の一極集中が続いている。エジプト政府は 2015 年に策定した長期開発戦略 「エジプトビジョン 2030」の中で、新都市開発計画を示し、人口増加の対策としてカイロ外周部におけるニューカイロ市や 10 月 6 日市といった大規模な新都市開発に加え、カイロの東部における新首都の開発も進めている。また、シシ大統領は、 2014 年 6 月の就任直後から、スエズの発展をエジプトの発展の要と捉え、「エジプトビジョン 2030」の中では、スエズ運河軸開発計画、経済特区開発計画を示し、運河の拡張、シナイ半島との接続強化のための運河下を通るトンネルの建設、運河周辺の港湾及び経済特区の開発を進めてきた。運輸交通分野については、都市内交通においては、道路整備を中心に着実に交通インフラが整備されてきた一方で、公共交通の整備が進んでおらず、交通渋滞や大気汚染、交通事故の問題が残されている。また、アレキサンドリアやカイロなど既存の大都市と新たな開発が進められているスエズ運河周辺を結ぶ都市間交通においては、道路整備が進められているが、新たな開発が進められている地域の発展と共に鉄道と大量輸送機関の整備が必要となることが予想される。持続的な経済成長の促進、増え続ける人口の受け皿を整備、新たな経済開発地域における需要に対応していくため、適切に交通インフラを整備し、人の移動や物流の効率化を進めることが重要な課題となっている。 過去 JICA は、運輸交通セクターにおける課題解決支援のため、「大カイロ都市圏総合交通計画調査(CREATS)」(2002 年)、「大カイロ都市圏持続型都市開発整備計画調査(SDMP)」(2008 年)、「全国総合運輸計画策定調査(MINTS)」(2012 年)を実施した。それに基づきエジプト政府は、策定された開発戦略や優先度の高い案件から、道路整備を中心に交通インフラが整備してきたが、都市部での交通渋滞、交通事故の増加、大気汚染の問題、公共交通サービスの低下、不適切な予算配分など、引き続き課題・問題を抱えている状況である。また、新首都を含むカイロ外周部における新都市開発、スエズ運河経済特区開発など計画策定当時の想定と異なる開発も進められている。2018 年、当時の運輸大臣は JICA に対し、2013 年以降実施されている燃料補助金の削減や土地利用の変化を含む経済改革に伴う状況の変化に応じるべく MINTS の更新を依頼した。その後も運輸省運輸計画庁や住宅省国土開発計画庁からは継続的に CREATS や MINTS などの既往計画の更新支援が要望されている。他方、CREATS と MINTS では調査対象範囲が異なるため、計画の更新支援をする際には開発課題や緊急性を考慮し、優先度等を踏まえて調査対象範囲を選定する必要があり、これらの分野における情報収集と分析し、協力方針を検討する必要がある。
調査の背景・経緯. 日本は、冷戦終結後にアフリカ支援に対する先進国の関心が低下する中、アフリカを戦略的に重要なパートナーと位置づけ、アフリカの開発をテーマに 1993 年以降、 TICAD (Tokyo International Conference on African Development:アフリカ開発会議)を 5 年毎(2016 年より 3 年毎)に開催してきた。TICAD はアフリカ諸国だけでなく、日本政府主導の下、国連やアフリカ連合委員会(AUC)、世界銀行と共同で開催しており、民間企業や市民社会も参加するマルチの枠組みでもある。2016 年には、ケニア・ナイロビにて XXXXX XX が初めてアフリカで開催された。 また、2019 年に横浜で開催された TICAD7 では、「イノベーションと民間セクターの関与を通じた経済構造転換の促進及びビジネス環境の改善」「持続可能で強靭な社会の深化」「平和と安定の強化」の3つを柱とする「横浜宣言」が採択された。TICAD7後、アフリカ投資促進ミッションがセネガル、モロッコに派遣され、7 か国でビジネス環境改善委員会が立ち上がる等、自由貿易協定の進展もみられ、特に民間セクターのアフリカ進出の足掛かりとして TICAD が果たす役割の重要性は増している。 一方、アフリカにおける中国の影響力は年々増大しており、2018 年 9 月に開催された FOCAC(Forum of China-Africa Cooperation:中国アフリカ協力フォーラム)北京 サミットでは、アフリカ諸国に 600 億ドルの経済協力を行うことを表明している。農 業分野では、アフリカ農業の近代化を支援するため、約 20 か所に上る農業技術普及センターの設立や、農業専門家の派遣、若手研究者の人材交流プログラム等を実施し、特に資源の豊富な国や有望な市場となる人口を抱える国との関係強化に努めているとみられる。 アフリカの人口は 2050 年に約 24 億人となり、世界人口の 4 分の 1 を占めるとの予測もあり、人口増に伴う食料の安全保障への対応は全世界的な課題である。JICA は、こうしたアフリカにおける食料の安全保障や貧困削減に資するために様々な取り組みを実施している。農業セクターに係る JICA の支援方針については、TICAD IV で「アフリカ稲作振興のための共同体(Coalition for African Rice Development:CARD)」、 TICAD V では「市場志向型農業振興(Smallholder Horticulture Empowerment & Promotion:SHEP)」、TICAD VI は「食と栄養のアフリカ・イニシアチブ(Initiative for Food and Nutrition Security in Africa:IFNA)」を打ち出し、TICAD7 においては右 3 イニシアティブの拡大を図る等、TICAD 開催を契機に援助方針を打ち出してきた経緯がある。例えば、JICA は CARD の運営機関の一つとして、CARD 参加のアフリカ 23 ヵ国の国家稲作振興戦略(National Rice Development Strategy:NRDS)の策定にコメの増産戦略を反映させること等を通じて支援してきた結果、サブサハラアフリカのコメの生産量を 10 年間で倍増(1,400 万トンから 2,800 万トン)する目標を 2018 年に達成するなど、具体的な成果も出ている3。 こうした中、2022 年に TICAD8 の開催が予定されているが、アフリカを含む全世界で感染拡大が収まらない新型コロナウイルス(以下、COVID-19)の猛威や、農作物に 3 JICA HP(xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/activities/issues/agricul/approach/card.html)より。 甚大な被害をもたらすサバクトビバッタの大発生といった新たな課題も出ている。また、上述の通り、開発分野における民間セクターの台頭を象徴づけるようなアフリカビジネス協議会の稼働といった動きも加速しており、ICT や DX を取り入れたイノベーションを活用した様々な官民連携の案件も始動し始めている。
調査の背景・経緯. 民間セクター開発の分野では、企業が雇用機会の提供、地域経済の安定・発展、多数の企業の競争・協調による経済効率性の向上、事業範囲の拡大、イノベーションによる高付加価値化への展開などにおいて重要な役割を担っており、先進国のみならず途上国においてもその育成と発展が重要視されている。そしてその育成と発展や競争力の強化には、例えば製造業であれば土地・労働力・資本の他に技術の要素が関係しており、土地が確保されて工場や設備や工場労働者が存在して、生産技術の向上によって生産や利益も増加し、発展していくことが想定されている。しかし資本・資金が調達できずに起業できなかったり、設備投資による生産増強や技術革新への投資などが行えなくて更なる発展が望めなかったりするケースが多く見られる。 株式や社債市場(新たな手法であるクラウドファンディングや新たな金融デジタル技術であるフィンテックを活用した手法等を含む)を介した直接金融が発展していない途上国では、企業は間接金融に依存せざるを得ない。しかしその間接金融を担う金融機関は、情報の非対称性やリスク判断能力の不足等によって、リスク回避のために高い金利が設定されて借入のハードルが高かったり、高リスクであるにも関わらずに 1 件当たりの融資額が少額なため、収益に比して融資サービスを提供するコストが高く利益率が低減したりする状況がある。また、政府の意向やコーポレートガバナンスの欠如により貸出を増加させたことで不良債権の増加につながった金融機関もあり、結果的に保有ポートフォリオが悪化し、通常の貸し出しが行えない状態に陥るなどしている。このように企業が間接金融に依存する中、金融機関による融資を巡る課題、資金調達/金融アクセスの課題は多い。 金融アクセスに関しては、世銀レポート1によれば、途上国に 4 億社ある企業のうち、およそ半数の 1.8~2.2 億社は金融アクセスに課題があり、2.1~2.6 兆ドルの金融ニーズが満たされていないと見込まれている。上述のような情報の非対称性やリスク判断に関わる能力不足等の問題を抱える金融機関側だけでなく、企業側として融資を受ける際に必要な財務資料の作成、不動産担保の提供等が課題となっている。こうした状況下、個人に対しては各種手続きを簡素化して個人の信用力をベースとしたマイクロファイナンスによる小口融資が提供されているが、1 万ドルを超える資金ニーズがある途上国の中小企業に対する金融アクセス改善は限定的で、金融の空白地(ミッシング・ミドル)とも呼ばれている。JICA はこれまでに円借款による現地金融機関を介したツーステップローンにより、供与国の民間企業の更なる発展に資するような設備投資資金等の信用供与を行っているが、既存顧客への信用供与が中心であり、融資先の新規開拓や融資額の拡大等を含む企業金融におけるミッシング・ミドル層に対しての金融アクセス改善は引き続き課題となっている。
調査の背景・経緯. 司法アクセスは、紛争を適正に解決するための手段(例えば専門家による情報提供や裁判手続にかかる支援等)を人々が実質的に利用できるようにするための取り組み又はそのための制度である。SDG16.3 に「国家及び国際的なレベルでの法の支配を促進し、すべての人々に司法への平等なアクセスを提供する。」とあるように、 SDGs の重要なゴールの一つに位置づけられている。 アフリカを含む多くの開発途上国では、国民の法的知識の不足、司法サービスを受けるための資金面での課題、司法サービスへの物理的なアクセスなど、司法アクセスの障害となる事由が多く存在し、適切に紛争が解決されず、権利の保障や実現から取り残されている人びとが多数存在する。 こうした中、JICA は、2016 年、コートジボワールの司法・人権・公的自由省に派遣した個別専門家「司法アドバイザー」の活動の一環として、日本司法支援センター(法テラス)が実施している法テラス・サポートダイヤルを参考に、同国に法情報提供機関である「コールセンター」を設置した。同センターは、地理的、経済 的、心理的に司法サービスへのアクセスが困難な一般市民が必要とする法律情報を電話で正確かつ容易に入手できるようにすることで、コートジボワールにおける一般市民の司法アクセス向上に貢献してきている。 また、司法アクセス向上のための施策としては、コールセンターの設置のほかにも、法律相談サービスや法律扶助制度の導入等、その他の手段及びその組み合わせの実施が考えられるが、法・司法分野の人材が不足し、また、同分野における予算やインフラが限られているアフリカ各国において、フィージブルかつ市民が利用しやすい施策の検討が必要とされている。 以上を背景として、本調査ではアフリカ各地域における司法アクセスの現状を分析し、アフリカ各地域においてコートジボワールのコールセンター・モデルの展開を含む司法アクセス向上に資する協力可能分野を特定するとともに、地域内・地域間での課題解決手法にかかる知見・経験を共有するためのネットワークの構築に必要な方策を特定するために必要な情報収集・分析を行う。
調査の背景・経緯. ミャンマーでは登録企業約 13 万社のうち 99%超が中小企業であり、これに加えてインフォーマルセクターが 62 万社存在すると推定されている(2013 年ミャンマー政府推計)。ミャンマー政府は、2011 年以降、経済改革・対外開放の取り組みを積極的に進めており、中小企業の育成を優先度の高い政策課題として位置づけ 2016 年に発表された、包摂的で持続的な経済発展を目指す「12 項目の経済政策」では「雇用と成長の原動力としての中小企業の育成」を中心政策の一つに掲げている。更に 2018 年に発表された、平和で繁栄した民主的なミャンマーを目指す「ミャンマー持続可能開発計画(MSDP)2018-2030」では「雇用創出と民間セクター主導型成長」を 5つの目標の一つに設定し、中小企業の育成を経済成長と雇用機会創出に不可欠なものと位置づけ、金融アクセス、市場アクセス、土地所有権の確保、技術と情報へのアクセス等を中小企業の成長阻害要因として、改善していく方針を示している。
調査の背景・経緯. 新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19 と言う)のパンデミック発生後、感染拡大防止のための国境閉鎖、商業フライトの停止などにより、ヒト・モノの移動に世界規模で大きな影響が生じている。経済活動の維持もさることながら、内陸国も多いアフリカにおいては港湾及び陸路での物流の維持はライフラインの維持を意味しており、パンデミック発生下においてヒトとモノの移動を維持しつつ、感染の拡大を防ぐというこれまでにない課題に直面している。 各国が陸続きであるアフリカにおいて、陸上の国境通過点(Border Post、以下 BP)における検疫は防疫のフロントラインであるにも関わらず、検査体制は十分とは言い難い。これまで貨物に対する検査が中心であったこともあり、感染症に対する検疫体制は課題が多い状況に置かれている。また検査体制やチェック項目が国ごとに異なるため、国境を挟んだ両国間で対応が異なっており、COVID-19 に関しては陽性診断や予防措置について国家間の対応・見解が分かれ、国際問題化する事態も生じている。東アフリカ共同体(East African Community、以下 EAC)地域においても各国対策が異なることから、一時的に国家間の緊張が高まった。域内流通の円滑化及び物流の維持において、BP における適切な検査能力、検査体制・基準の域内標準化は重要な課題となっている。COVID-19 のパンデミック発生を受け、地域協力枠組みである EAC や南部アフリカ開発共同体(Southern African Development Community、以下 SADC)はガイドラインや Response Plan を作成し、加盟各国に対しての対応の域内標準化を求めている。 また、BP 内には食堂や宿泊施設等がないため、周辺コミュニティの商店・食堂等にドライバー含めた旅行者が出入りせざるを得ない状況にあり、BP 周辺における感染リスクを高めていることも課題として指摘されている。感染症予防の観点からは感染リスクを下げるためには域外からくる BP 施設利用者と BP 及びコミュニティ内の人の行き来の流れを分離し、人の流れを遮断することを求められるが、BP 内ですべてのサービスを提供することは現実的に難しい。また BP 施設利用者を分離することは、周辺地域の経済活動に対してもネガティブな影響を与えかねないことから、現実的に BP 施設利用者をリスクゼロにすることは現実的に困難である。また、BP によっては水源が不足しており、衛生環境を保つことがそもそも難しい状況にあるものもある。各 BP の規模・設備等の状況に応じて、感染リスクを最小化するための対策(ソフト・ハード)を検討する必要がある。 EAC 域内ではエボラウイルスの発症事例が頻繁に確認されており、EAC 事務局は COVID-19 以前から、域内共通課題として感染症対策を重視してきた。COVID-19 パンデミックの発生後も、関係セクターの閣僚級会合の開催や EAC COVID-19 Response Plan の作成含め、域内取り組みの重要性を加盟各国に強調し、首脳レベルのコミットメントを引き出してきた。対策を具体化させていくのは各国担当省庁の役割では あるものの、EAC 事務局としては具体的なモデルを加盟各国に対して事例として提示し、各国での政策の地域内標準化が図られるよう調整していく必要がある。 EAC 事務局と JICA は技術協力プロジェクト、個別専門家派遣等通して協力関係を築いてきたが、今回の COVID-19 感染拡大を受け、EAC 事務局は JICA に対し国境周辺地域における感染症対策の強化と標準化のための協力検討を依頼した。JICA は EAC域内の状況を踏まえ、BP 及びその周辺地域における感染症対策強化のニーズを整理するとともに、応用性の高い活動モデルの整理のための情報収集・確認調査を行う事とした。
調査の背景・経緯. 新型コロナウイルス(以下「COVID-19」という)の感染拡大は全世界に及び、2020年 8 月 7 日現在、全世界で約 1861 万人の感染者が確認されている(WHO、2020)。ア フリカにおける感染者数も約 84 万人に上っており、今後も同地域における更なる感染拡大が予想されている(WHO、2020)。このような状況に対し、サブサハラアフリカ各国は国内の移動制限や国境閉鎖等感染拡大防止のための様々な措置を講じている。しかし、これらの措置は農業投入財(種子・肥料等)や農産物の物流停滞や価格高騰を引き起こし、フードバリューチェーン(以下「FVC」という)の各工程 に影響を与え、付加価値の喪失やVC の分断を引き起こす可能性が指摘されている(IFPRI、2020)。サブサハラアフリカ地域において、農業分野は GDP の 15%を占め、全労働人口の半数以上に上る 52.7%が従事する主要産業であり(世銀、2019)、COVID-19 感染拡大による農業分野への負の影響は、社会全体に対する経済的な打撃となりうる。特に、影響を受けるのは小規模農家を含む貧困層であり、COVID-19 により生計悪化や食料不足が深刻化する懸念が高まっている。 係る状況下、各ドナーは様々な調査及び支援策を講じている。COVID-19 が FVC に与 えた影響に関しては、FAO と WFP が主に世界及び地域単位での、農業生産や食料価格の動向、生計や食料の安全保障への影響調査を行っている。また、JICA は、サブサハラアフリカ地域における COVID-19 の農業分野への影響の調査として、「アフリカにおける農業デジタル化基盤構築に係る情報収集・確認調査」や「アフリカ地域 IFNA(食と栄養のアフリカ・イニシアティブ)」全アフリカ展開に向けた情報収集・確認調査」等でのデジタル化や栄養との関連での概況調査や、実施中プロジェクトの中でプロジェクト対象作物の VC への影響調査を検討している。しかし、これらの調査は、上流から下流に至る FVC 全体はカバーしていないため、COVID-19 が生産や消費以外の各工程や工程間の関係に与えた影響の詳細は十分に把握できていない。また、地域や国、作物の品目による影響の違いを分析するまでは踏み込んでいない。複数国間で取引がされている農業投入財や作物があるにも関わらず、各国の措置が国境をまたぐ FVC に与えた影響については分析がなされていない現状がある。 そこで、本調査では複数の国、作物を対象として、その VC 全体に着目し、COVID- 19 が VC の各工程や工程間の関係に与えた影響を具体的に調査し、その理由・要因を探る。また、これらの影響の傾向や理由・要因が国、作物によってどのように異なるか、中西部地域全体で VC の在り方がどのように変化したかを比較分析し、各アクターが COVID-19 の影響を克服するため、With/Post COVID-19 社会に適応するために必要となる諸施策案、その実現に向けた JICA の支援策を提案する。
調査の背景・経緯. ウガンダでは2010年から2019年の間に名目GDPが倍増し、今後も6%から7%の高水準の経済成長が続くと予想されている。その一方で、かかる成長は人口増による効果が大きいと言われており、農業と観光業に依存する同国経済の成長を力強くけん引する産業の育成が課題となっている。また増加する人口に対する雇用の確保は喫緊の課題であり、特に若年層の高失業率が社会問題化している。 こうした背景から、2020年6月に制定された第三次国家開発計画(NDP3)では、各産業の高付加価値化や、雇用創出が政策目標として掲げられており、それらを実現するための戦略としてICT産業振興と各産業におけるデジタル・トランスフォーメンション(DX)化が重視されている。 2014年に実施されたグローバル・アントレプレナーシップ・モニター(Global Entrepreneurship Monitor:GEM)の報告書によると、ウガンダはインフォーマルセクターを含めると、スタートアップの起業人口の割合が3割弱であり、これはサブサハラ・アフリカで最も高い。また、JICAが新型コロナウイルス対策を念頭にしたスタートアップ支援の一環としてアフリカ19カ国を対象に実施中のビジネスコンペティションでもウガンダからは参加国中2番目に多い460社の応募があり、旺盛な起業家精神が培われていることが伺える。これらのスタートアップ企業は、ICT分野の中小企業と併せて産業の土台を成す重要なアクターとして、各産業のDX化を推進することが期待されている。 他方、そのスタートアップの多くが起業後2年以内に廃業に追い込まれると言われ、スタートアップを取り巻くエコシステムの強化は喫緊の課題となっている。この様に、同国では農業と観光産業への依存からの産業構造の転換期を迎える中、Post/With COVID-19の経済・社会の在り方も見据え、ICT産業がスタートアップ・エコシステムの 強化及び中小企業育成等を通じて成長することで、経済基盤や社会基盤の強靭性の向 上にも寄与すると考えられる。 またウガンダでは、国内で高い教育を受け、流暢な英語を話すICT技術者であっても、深刻な雇用不足に直面している事情もあり、彼らのスキルの向上や雇用機会を増やすことも課題となっている。我が国とウガンダの間でICT人材交流や日本企業からウガンダ企業へのオフショア開発を促進することにより、日本の地方や中小企業の抱えるICT人材の不足などの課題解決にも貢献できる可能性がある。 またアフリカスタートアップへの我が国からの投資や事業連携等の促進により、スタートアップの資金需要や事業拡大のニーズに応えながら、本邦企業とウガンダ企業の結びつきを強め、両国経済の活性化に貢献することも求められる。
調査の背景・経緯. セネガル共和国(人口約1,585万人、1人当たりGNI1,410ドル(2018年、世界銀行))は、国家開発計画「セネガル新興計画」(2014年)(Plan Sénégal Emergent。以下、「PSE」という。)の下、2015年以降、年率6%台の高成長を記録し、2017年には年率7%の経済成長を達成した(2018年、IMF)。 PSEは開発の3本柱として「経済と成長の構造改革」、「人的資源、社会的保護と持続的開発」及び「ガバナンス、行政、平和と安全」を掲げ、「経済と成長の構造改革」のなかで は、食料安全保障の強化と貿易赤字の是正を目標として、農業を経済成長の原動力として位置付けている。 さらにセネガル政府はPSEの基幹プロジェクトの1つとして、農産物の付加価値を高め、農産物の輸入への依存を減らすことを目的に、農産物加工拠点(アグロポール)を北部・中部・南部の全国3か所に整備する計画を進めている。3拠点のうち、Kolda州、Sédhiou州、 Ziguinchor州を対象とする南部拠点についてはUNIDOの資金でF/Sが行われ、2019年12月にアフリカ開発銀行(AfDB)による4,300万ユーロ(約54億円)の本体事業に対する融資が決定した。またDiourbel州、Fatick州、Kaffrine州、Kaolack州拠点を対象とする中部拠点のF/Sに関しては既にベルギー(Enabel)が協力を開始し、2022年の完成に向けて現在策定中である。
調査の背景・経緯. ブータン王国(以下、ブータン)は、急峻な山に囲まれた内陸国であり、九州と同 程度の面積の国土(38,400km2)に人口は約70万人と小規模で、日本で「市」の人口 規模の目安となる5万人を超える人口を持つ都市は、首都ティンプー(約10万人)し かなく、6都市を除き、都市の人口は1万人未満である。人口が少ないため市場規模は 小さく、さらに小規模な人口が国土に広く点在しており、民間企業からみると販売網 を作るのにコストがかかる一方、売り上げ規模は大きくなく、海外から投資を誘致す ることが困難な国である。また公共投資についても、国土は標高差が非常に大きく、南部の標高100mから北部の7,550mにわたり、急峻な地形から都市間のアクセスが悪 く、インフラネットワークを構築するコストが高い一方、裨益人口が少なく、財政資 金規模に限りがある中で、戦略性を持ち効率的に投資を行っていくことが求められる。 ブータンにおける主要な産業は、農業、鉱工業及び水力発電(インドへの売電)等 であり、水力発電による売電や関連する建設分野等が経済成長をけん引してきている。しかし、国内市場が小さく水力発電以外の産業の発展は限られており、多くの消費財 や資本財をインド及び他国からの輸入に依存しているため、慢性的な貿易赤字を抱え ている。 また、2018年の国全体の失業率は3.4%である一方、若年層(15歳~24歳)の失業率は15.7%となっており、そのおよそ6割が都市の若者であり、大卒の若者も多数含まれ、そうした若者たちの中にドラッグや飲酒に溺れる者も出てきている等、若年失業者については社会問題化してきている。ブータン政府は雇用創出の観点から産業多様化を図ることとしているが、社会に出る若者と産業界の求める人材との間に知識・技術のギャップがあるとされている。 こうした状況を憂慮し、ブータン国王は、2019年12月に演説を行い、次世代に魅力ある経済機会を創造していく必要性を訴え、とりわけ変化の大きい世界の中で、隣国の中国やインドのように、技術革新を基軸として経済成長をしていかなければならないと訴えた。本演説を基に、ブータン政府は、「21世紀経済ロードマップ」の策定に着手し、国の経済モデルのあり方(国主導の経済か、市場主導経済か)、平等のあり方(機会の平等か、結果の平等か)、地方から都市への人口流入をどう考えるか(必ずしも悪いことではないのではないか)、国民の気質のあり方(失敗を恐れた事なかれ思考から、より失敗を恐れない起業家精神に変わっていく必要性)など、ブータン経済の今後の動向を規定する根本的な要素について再考し、21世紀のブータン経済の向かうべき道筋を明瞭に示し、自律的に成長し魅力ある機会に溢れるブータン経済を創造しようとしている。またブータン政府は、現在の第12次5か年計画(2018~23)においても、技術革新を基軸とした経済社会発展を重視しており、8つの重点プログラムの一つとして、Digital DRUKYUL(デジタル・ブータン)プログラムを認定し、 デジタル技術を活用した雇用機会の創出、遠隔地におけるサービス普及等を含む保健、教育等のサービス改善、政府サービスの効率化等に着手するなど、ビジョン策定、政 策策定、そして試行的な政策実施など、様々なレベルで試行錯誤を重ねながら、技術 革新等が突き動かす変化の大きい世界の中での、ブータン経済や社会のあり方を模索 している。 当機構では、2020年2月より「デジタル振興政策支援に係る情報収集・確認調査」を実施し、ブータンにおいて若者等にとっての魅力ある就業機会創造を効果的に支援する方策を検討するため、Digital DRUKYUL(デジタル・ブータン)政策の全体像、通信等のインフラ状況、ブータンにおいて産業を育成することのポテンシャルとボトルネックなどについて把握すべく、デジタル政策に関わる関係省庁、大学、企業支援家、財団、民間企業、留学生、海外出稼ぎ者等に幅広くヒアリングを行うなど調査を実施している。そして同調査では、デジタル技術などの技術革新により世界が大きく変化している中で、ブータン固有の条件を活かしながら、どういった分野あれば競争優位を確立し、国際競争力を有するブータン企業の育成策や外国の企業や研究機関の関心を喚起する投資等誘致の活路を見出す潜在性があるのかについて提言することとしている。